3-5 大会最終日(前半)
「今日で、神誕祭も最終日!
優勝は、誰の手に~~~~!」
え~っと、今俺は中央闘技場というところに来ている。
広さは、俺の家を見たくなくなるぐらい。
中央にはいつも通り半径10mぐらいの、円形のステージがあるわけだが。
「ここから先は、場外に落ちても地獄行き!
選手の皆さんは、地獄の闘技塔で試合を行っていただきます!」
ステージが、学校の屋上ぐらいの高さはある。
ここから先の試合は、他の人の試合を見れるそうだ。(俺は、あまり気が進まない。人が殺されるところなんか、絶対に)
ステージの周りの空いたところに、選手たちは1列に座らされている。
ざっと見たところ2クラス分ぐらいの人数だ。
「抽選の結果。本日の第一試合は、328番、水使いのシャーワと654番、短剣のザンヌ。
選手は前に出てきてください」
2人の選手が立ち上がって、ステージの前まで行った。
そこで、軽い身体チェックを受け(とは言っても、戦うときには何を使ってもいい)横のはしごから上っていった。
あれ、俺たち見えなくね?
『フワアアア~。
おっ、主人、試合かの』
俺の魔力を解放して寝てろ。
『つ、冷たいのぅ。あと、昨日使う前に開放したぞ』
そりゃそうだろ。
お前のおかげで、右の手の平の感覚が薄れてるし、全身筋肉痛だし、それに、観客みんなこっち見てるんだけど。
どういうことすか?
何したんですか?
俺のメリットは何ですか?
『まあ落ち着け。
主人のメリットは、魔力がさらに体に馴染んだ。
だから、今朝は魔法の事についてやったんじゃが。
無系統だけ出来るってどういうことじゃ?
魔力はあるが、属性魔法が使えない。
まさか、主人はゼロ魔法使い。』
え、使い魔ではなく?
なんか凄いの?
『ああ、ゼロ魔法使いは100年に1人という、奇跡の人材じゃ・・・・研究者にとって。
例えるとじゃな、この前のタンクと蛇口の話を覚えておるか?』
忘れた。
『タンクが魔力、蛇口が術者じゃ。
蛇口は、それぞれ系統がある。
火、水、風、土、これは覚えておるな』
え、ああFFね、オッケー。
『ゼロ魔法使いとは、その蛇口がない魔法使いじゃ。
魔力をそのまま使う無系統は使えるが、属性魔法は全く使えん。
いいとこは、ない』
駄目ジャン。
『専門の研究所に行けば、月、紫1本の給料が出る』
それって凄いの?
俺、1月で紫10本以上なんだけど。
それに、後で紫50本入ってくるし。(この件については納得済み)
『そんな事が出来るのは東の大富豪ぐらいじゃ』
誰それ?
『奇跡の錬金術師と呼ばれておる。
我は顔も見たくないが』
鋼の、ではなく?
「はじめ~~~~~~~!」
戦いは想像を絶するスピードを伴い、剣撃の音が高らかに木霊する。
な~んてね。
戦いは、俺より20mほど上で行われ、俺にはみえましぇ~ん。
うざったるいのはご愛嬌ってことでお願い。
・・・・・。・・・・・・はい。えっと。
俺は今、子供の頃にやったゲームボーイがやりたくなる位に暇だ。
あ、久々にゲームしたい。
さっきから、5試合ぐらいが行われた。
したがって、人数も5人減っている。
これから先のことも考えないと。
あまりに暇で、俺はそんな事を考える事にした。
1、この大会で勝つ。
2、あれ、俺何しにこの国へ?
3、そうだ。潰しに来たんだ。こんな世界に連れて来た仕返し。
4、王として君臨。
5、美人な女王様と、優雅な日々を送る。
これで決まりだな。
その時、本日5回目のゴムなしバンジーが行われた。
思わず目をつぶる。
勝ったほうははしごを降りて、次のアナウンスが行われる。
降りてる間にはしごから落ちるやつも居て、うん可哀想。
「次は、875番風舞う剣、セスキューと481番、でたらめで色々と訳の分からん意味不明なふざけたバンダナ、ジョーカーだ~~~!」
どんだけ変な事やってんだ、ソウ!!
『ん?これっくらい』
分からん、お前自体が分からん。
はしごは面倒なのでフーマスクで飛んだ。
少し待って上がってきたのは銀髪を足首辺りまで伸ばし、細身の剣を持った男だった。
男は、すぐに剣を構えた。
特にしゃべることはないようだ。
こっちもなかったのでそのまま時間が過ぎた。
「はじめ~~~~~~~~~!!」
魔法で拡大された声は、上まで良く聞こえた。
で、ソウ、今回はどうするんだ。
『ビスタを唱えてみろ、相手に集中しないと、自分の動きが止まるぞ』
「ビスタ!」
俺の目の前30センチ目線よりチョイ下から、野球ボールぐらいの白い薄い光が飛んで行った。
それを、セスキューとやらはあっさりとかわした。
『次はダックじゃ』
俺は走り始めたセスキューに意識を集中させ、ダックと唱えた。
今度は、透明な何かが飛んで行った。
セスキューは剣をとっさに斜めに構え、右手を剣の先の裏に当てた。(左で剣を持っている)
キンッ!
高い音が響き、セスキューは後ろに少し動いた。
まるで、剣が剣にぶつかったかのように。
『1発目でこれだけ威力があるとは。
次はギュマンダじゃ』
出来れば、説明が欲しい。
「ギュマンダ!」
敵が上げた剣が下がった。
「うっ!ぐ、ぐふふふふははははは。
相当の魔力だな。
基礎無系統魔法でここまでの威力とは。
どうせ、中級、上級、最上級も使えるんだろ。
これほどの力で、無名とは、謎だな」
ソウ、何でこんな変な魔法を使わせたんだ。
理性を破壊するとかか?
『いや、重圧じゃ。基礎の』
セスキューは笑いながら呪文を唱え始めた。
「フルスライン・ファイス!」
なにあれ?
『上級風系統の加速じゃな。
主人のとは違って、風の加護の形じゃから、早いだけじゃ』
早いだけ?
気がつくと、セスキューは目の前にいた。
迎撃するため、炎を出す。
ん?
炎が左肩までを包んだ。
―――この前より大きい!
『魔力が馴染んできてるからの』
セスキューは下がって避けた。
『主人、次はモールサイスじゃ。
真上を意識しろ』
「モールサイス!」
途端に周りから、押さえつけられるような感覚に襲われた。
抵抗しようともがくが、何も出来ない。
押さえつける強さが、あるところを越えた瞬間に、俺の意識は無限の彼方に吹っ飛んだ。
次に目を覚ました時、俺は、闘技場の椅子に座っていた。
他の選手も座っている。
しかし、人数は少し減っているようだ。
『ありゃ、主人、戻ってたのか。
いや~、あれはミスじゃ、ちょっとした』
ちょっとしたって、俺、死ぬかと思ったぞ。
『いや、移転の魔法じゃったんじゃが、主人の魔力を一気に移動させるのはさすがに無理があった。』
それより、全体的に説明をしてくれ。
『ビスタが、静止の魔法。
ダックが衝撃。
ギュマンダはもう言ったが、重圧。
モールサイスは移転。
全部基礎の無系統じゃ。
あと、無系統は物を触れずに動かす、というのが起源じゃ』
で、あの後どうなったんだ。
『ん、ああ、あっさり突き落としたぞ、ビスタで止めて。
いや~主人の魔力は大きすぎて爽快じゃ。
その次のやつは、地上に移転してやったわ。
面白かったの、銃を構えた瞬間に地上にいたときのあいつの顔が』
2回もやったんかい。
『これで、ベスト16じゃ』
やべえ、話が進まねえ。
ソウに短縮してもらってるんだが。
このままじゃ、3-30ぐらいまで行きそうだ。