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3-3 闘技会

部屋の中の人数は少しずつ減り始めた。


「641番の人!」


人が、一人ずつ連れられていく。

全員は帰って来ない。


勝った者だけが、笑いながら入って来て、後の人は負。


「691番の人!」


「がんばってくるぜ、ぼうず。

親父のために」


「がんばって下さい」


「浮かない顔だな、勝ったくせに。じゃあな」


はぁ。


ほんとに良かったんだろうか。

俺は力を使って紫50本を強奪したことになる。


なぁ、ソウ?


・・・・・ソウ?


その時、何かが俺の中に入ってきた。


『主人、ちょっと試合を見てきた。なんかテンション低いのう?』


いや、あんな事して良かったのかって・・・


『ああ、あれはさすがに観客も納得いってなかった様じゃの。

みんな、あのバカ貴族とやらが、丸焼けにされる事を望んでいたようじゃ』


いや、そこじゃなく。


『ああ、あのバカ貴族、金だけはあるからのぅ。

紫500本でも少なかったの』


でも、あんな方法で金を取るなんて・・・


『はぁ。

主人はどんなとこで育ったのじゃ』


日本。


『殺す代わりに紫50。

あり得んの。

それが良かったか、とは。

それじゃあ、甘すぎるの。

本当は、財産を全て譲れ、というのが普通じゃ』


でも、俺、恐喝とか言うものに手を出したんだぞ。

それも、楽しいとか思いながら。


まるで、狂人じゃないか。


『はぁ。

この町じゃ、あいつを殺さない方が狂人と捉えられておるぞ。

この場では、殺す事こそが名誉。

それを覚悟したものが来るとこじゃ。

ウィーディーが魔法使いの首を飛ばして、大喝采じゃったぞ』


え、首を飛ばす・・・って?


『スプーンの柄で、魔法使いの、首を、切ったってことじゃ』


よし!


ソウ、次の試合、降参して逃げるぞ。

かくまってもらえる所を探さなきゃ。


てか、大喝采ってどういうことだ?


あと、ウィーディーも出てるのか。


『ここは、平和な王都。

今日しか、人の血を見れないぐらいな所じゃ』


いいとこジャン。


『まあ、平和なとこで生きてると、退屈になるのじゃ』


じゃあ、俺は?

まあ、血の出るゲームぐらいなら。


『そういうものじゃ』











2回戦の始まりが告げられてから、さらにちょっと経って。


『主人!呼ばれておるぞ』


あ、マジで。


「はい」

いやあ、この世界の睡眠時間じゃ、ちょっと足らなくて。


 次の相手はばかデカイ剣を背負った、ガッチリした男だった。


「こんなガキが生き残っているとは、俺様の相手になれんのか?」


「はじめーーーーーーーー!」


男はいきなり走ってきた。

剣を振り上げ、振り下ろす。


俺はその一撃を難なく避け、後ろから蹴ってやった。


無防備な男は、そのまま前に倒れ、台から落ちた。


「勝負あったーーーーーーー!

勝者は、ぼろ布の黒バンダナだ~~~~~~~!!」


ん~ん、酷いな。

ぼろ布の辺りが。











 次の相手は魔法使いの女だった。


炎が前後左右から迫る。

俺はぎりぎりで避け、勝利を確信し微笑んでいる女を場外にフッ飛ばしてやった。


まあ、微笑むのも無理がない。


俺の体に、すでに2つの火の玉が当たっている。

そんな状態で、4つの方向から同時に来た炎を避けるのは凡人には無理だ。


はぁ~。

おれ、もう凡人じゃないのかもしれない。


『絶対にそうじゃ』


酷いな。

まあ、戦い方を言ってくれるのは良いんだけど。


『主人は戦い方がまるでなっとらん。

今日は、みっちり教えてやる』


止めよ。

もう、帰ろ!

俺の足だったら、元のままでも逃げ切れると思うし、さらに自己加速まであるし。


『それは、優勝して、王に会ってからで十分じゃ』











 3試合目は普通の剣に普通の鎧、普通に盾も持った普通の剣士だった。


『よ~~~し、かわす練習じゃ。

自己加速はなしで』


いや、死にます。


『ニャオン!よし、主人、魔法は封じたぞ』


俺、逃げるよ。あの世に。


『何じゃ、その脅し?

我は主人の母親じゃないぞ』


自分を焼くよ。


『我は、主人に憑依しておるが、主人がどうなろうと無傷じゃ』


俺、死んだ。

この試合で負ける。


『大丈夫じゃ、相手の剣ははさみ位の切れ味にしてある』


じゅうぶん切れるし。


「はじめ!」


うわっ!

相手が早い!


『自己加速がないからじゃ。さあよけろ』


剣士は、剣を構え、俺の出方を見ている。


そして、俺のどこかに隙を見つけたのか、切りかかってきた。(実際は隙だらけなのだが)


ウオ!


俺は後ろに下がってぎりぎりかわした。


しかし、剣はさらに襲い掛かってくる。

これは!


「トウ!」


俺は、手に炎を纏い、剣を止めた。


というか、その先が溶けて短くなった。


勢いは止まらない。


危な!


顔をかすめた。


『ンンンングルニィイヤアアアアァーーーーーーーア!!!』


ソウ?


何を?


『はあ、あれだけの魔力を封印するのはさすがにきつかった』


ん?封印?


何を?


右手の炎が消えてる事に気づく。


な!てめ、俺死ぬって。


剣士さんは短い剣でさらに攻撃を仕掛けてくる。


無理、無理、かわせない!


『まあ、3発に1回ぐらいはかわしておるぞ。

10発連続でかわせたら・・・』


かわせたら?


『体術の練習に入る』


いやだ。

自己加速で何とかするから、術とかいらない。


『いや、要るじゃろ。

祖術、闘術、対人術、対獣専門、暗殺、気術、滅術、極術、斧鍬術ふくわじゅつとか』


わかんねえよ!!












 かわす、かわす、避けて、いた!、避けて、いた!


ところどころ血が出てるんですけど。


はさみ位の切れ味って言われても、痛い。


『かわせ!かわせ!』


楽しむな!


大会の人、困った顔してるぞ。


日が傾き始めてるぞ、腹減ったぞ!


『もうチョイじゃな』


 まあ、いろいろ、ドンパチ、バンバカあって時は経ち。


ぜい、ぜい、ぜい、ぜい


ひーふーひーふー。


無理っす。


相手も息、上がりまくってます。


『そうじゃな、これ以上やっても練習にならんじゃろう。

開っ放!

・・・・・・・・・ありゃ。

・・・・・・・日が傾いたから無理じゃ』


はぁ?


『我は、まあ、色々あって、太陽が近くにあるほど強いのじゃ。

主人の魔力の封印には、相当の封印術を使ってしまって、解除も一苦労なのじゃ』


どうすりゃいいんだ?


『真剣に勝て』


いや、相手、体を鍛えてる人だよね。

今、生きてるだけで相当な奇跡だよね。

勝てる気しないよね。


すると、剣士は先が溶けた武器を捨てた。


そして近寄ってきた。


「あなた、強いですね。

私はもう戦えません。

私をあの炎で焼いてください」


「いや、人殺しは嫌いだから、場外に下りてくれ。

その方が大変かもしれんが」


「分かりました。

ありがとうございました。

私は、実家に身を潜めようと思います。

デンオルンの村です。

よろしければ、たずねてきてください」


それだけ言うと、剣士は台の端まで歩き、そこで気を失った。


「はぁ」


俺はその体を、場外に落とした。


ソウ、この後の試合はどうするんだ。


そう、心の中で聞いたときに、魔法で拡大された声が響いた。


「勝負あった~~~~~~~~~!

そして、お知らせです。

今日は、王様がお帰りになっちゃったので、おしまいです。

よほど、退屈だったんでしょう。

選手の皆さんは解散です。

明日の朝、自分の部屋に戻って来て下さい」


闘技会1日目は、何とか済んだ。











『・・・それが、祖術じゃ。

基本にして、原点。

だから祖術』


あ、もう無理。

体力ゼロ。

朝まで死にま~す。


『待て。

武術は、理論も大切なのじゃ。

次は闘術じゃ。

これは、かなり力押しな術であって、祖術のように、技で戦う事はあまりない。

練習するのは、力を上げる事と、力が加わりやすい攻撃方法で、聞いておるのか?』


もう飽きたから、闘技会の話して。


『はぁ、仕方ないの。

我が見たところ、炎を使う主人と戦えるのは20人ほど。

自己加速を使う主人と戦えるのは10人いないじゃろう。

両方使った場合は・・・1人。

それもウィーディーだけじゃな』


う~ん。


やっぱり小さい大会なのか。


死人続出って言うから、もっとすごいやつが大勢いるもんだと。


『主人、おぬし自分の強さが分かってないのか?

主人に勝てる者などそうそう居らんぞ。

この大会は国中から強豪が集まっておるし

・・・あ、寝ておる』


俺は一番の部屋の石の床でも寝れるぐらい疲れていた。


やっぱ異世界トリップにはこういうのがないと。

あれ、王国の名前なんだっけ?

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