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2-7 適当なパレード

俺は今、ティーちゃんの家にお邪魔している。


ティー母や、弟子、師匠うんぬんかんぬんの話は解決して、話題はこの変な町の事に移った。


「では、この町は新しい町長の悪政に困らされているんですね」


「はい、税金がいきなり上がって、生活が大変です」


「私もその話は聞きました」


会議に参加しているのは俺、ケイスさん、ティー母の三人だ。

ティーちゃんはもう寝てしまった。


「でも、私たちにはどうする事も出来ないんです。

逆らえば処刑されますし、あっちには防衛隊も付いているんです。

集団で対抗しようとしている集団もあるんですが、作戦もことごとく失敗していて」


おそらく、モンスターたちの行進のことだろう。


「防衛隊ですか・・・」


前の町ではヒーロー扱いだったのに、場所によって人気もあったりなかったりするようだ。


「はい、防衛隊は国で管理されていますから、国には逆らえないんです。防衛隊は人々の平和を守る存在だったはずなのに」


「大変ですね」


特にこの町に関係がある訳でもない俺にそんな事を言われても困る。

もうかなり遅い時間だったので、俺はティーちゃんの家に泊めてもらう事になった。











次の日、俺は外から聞こえる騒がしい音で目を覚ました。


ちなみに俺はまだこの世界の時間に慣れていない。


仕方なく起き上がって窓から外を見ると、馬車やら人やらが大勢道を歩いていた。

足が6本ある馬もいた。


そういえば、今日は神誕祭というお祭りがあるそうだ。

年に一回しかないそうなので、出来れば行っておきたい。


そんな事を思いながら、俺は部屋を出た。










正午ごろ、広場でショーがあった。


この前モンスターが灰になってしまった広場だ。


なにやら魔法使いな服装の男が出てきた。


「みなさん、今日はお越しいただいてありがとうございます。

ホルライアによります、ステリウス教、魔法パレードです」


っと、魔法で拡声された声が響いた。


広場の真ん中に作られたステージで始まるそうだが、ステージの周りは人だらけで見れそうにない。


あきらめて、屋台めぐりを再開しようとしたとき、首を冷たい風がなでた。


振り向くと、そこには大きな氷の結晶が現れていた。


氷の結晶は女性の形をしている。


俺は、ソウに呼びかけた。


ソウ何だあれ。


『あれは女神サナイじゃと思うが、なんか似ておらん。

第一、サナイは炎の女神で、魔王に対抗する・・・』


ソウ、詳しく教えてくれるのは良いんだが、俺が聞きたいのはあの女神の話じゃなくて、どうやってあんなモン作ってるのか、ってことなんだけど。


『・・・そうか、あれは氷系統の魔法じゃな。

で、おそらく魔力はあいつの物じゃない』


それってどういうことだ。


『他人の魔力を使ってるってことじゃ。

たとえると、あいつは蛇口で、タンクの役割がある、という事じゃ。

タンクには、大勢人を使っておるのじゃろう。

主人の魔力だったら1人で足りるじゃろうがな』


そうか、と思っても目の前の氷はやっぱり凄いと思う。


しかし、俺なら一人で足りるって・・・


ほんとは何人いるんだか・・・


『30人はいるのぅ。ちなみに主人は100人分は』


って、お前に聞いてない、俺の嘆きに参加するな。


しかも30人でこんなの造ってんのに、俺ってまさかこれ以上の物を作れたりするんじゃないか。


『主人魔力はあっても、魔法習ってないからのう。10年ほど修行すればあれぐらい出来るんじゃないかの』


ステージの上では人形劇ならぬ氷像劇が繰り広げられていた。


女性の像が男の像を押し倒した。


文字どおり押して倒したのだ、適当この上ない。


そんな劇に、広場は拍手喝采となった。










「町のものは楽しそうだな、防衛隊隊長?」


目の前の新町長はそう言った。


新町長は、いつもタバコを吸っている。


それは、この世界では恐ろしい事だ。


なにせタバコ1本買うお金で、普通の生活が1週間はゆうに送れる。


そのタバコを1日数十本(十数本ではなく)すうのだ。


しかも、その財源は町人からの、必要以上の税だからなお性質たちが悪い。


「あんなに楽しんでるんだから、税を増やさなきゃならんな」


町長はタバコを足元に捨てて、ニタっと笑った。


「もう戻っていいぞ、防衛隊ダイザナ支部長」


町長はそういい残して次のタバコを取りに行った。


防衛隊支部に戻るときに町長のわがままに連れてこられた研究者とすれ違った。

天才も大変だな、と防衛隊長は思った。










劇を見た後、俺は広場を囲むように並んでいる屋台を回った。


しかし、文字が読めない事にはどうも困る。


値段すら分からない。


それを考えるとあの蒼いタヌキのコンニャクは恐ろしく便利だ。


文字が読めない事に、金が減る一方だという事実がのしかかり結局何も買わぬまま、夕方になった。


早い事、財源を確保しなくてはならない。


なにか、字が読めなくても出来る仕事を。


そういえば、字を書くことも出来ない、といまさら気づく俺のような者をおそらくバカと呼ぶのであろう。


そういえば何かを忘れているような気がする。


こういうときは決まって弁当を忘れていて、友達にめぐんでもらっていたのがもう大昔のようだ。


少しさびしい。


こういうときは、何か甘い物を食べるのが一番だ。


・・・ん、甘い物。


といえば、今日はウィーディーに会っていない。


2日前にあったのが最後だ。


まだお別れを言っていないけど、また会えるのかどうかは分からない。


おじいさんを助けるとか考えてて・・・


「あっ。忘れてた」










その少女は二日前からあっていない少年に噂されていたが、くしゃみは起こらなかった。


そもそもこの少女にはくしゃみをするという機能がない。


この少女は、自分の体をいじる機械だろうと思い、機械の体に意思を埋め込んでしまった機械だからである。


体に機械を、から、機械に体を。


最悪な発想の転換だ。


それは、不適合者は現れないが、機械に体を埋め込む物である。


言い方を変えれば、人間を材料に、ロボットを作るような物だ。


機械を材料に人間を強化する物とは話が違う。


今そのロボットは一応残った意思により脱獄を企てている最中だ。


フーモアガッシャーと祖父が名づけたスプーンで石の壁を砕いている。


やはりロボットなだけあって、力は人間よりも強い。


持久力も二日前、糖分をあれだけ取ったので当分は切れないだろう。


二日前の糖分はまだ、3等分した内の1つ分も使っていない。


彼女自身も、当分は糖分は切れないだろうと、目の前の石を2等分しながら思った。


思ったというより、体の状態を確かめたに近い。


彼女は、自分自身の状態が数字でわかるからだ。


彼女のいる牢獄には石と鉄がぶつかる規則正しい音が続く。


しかし、その音がふいに途切れた。


彼女の体に明るい太陽の光が当たった。


彼女は脱獄に成功した。

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