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2-6 迷子

ダイザナの町は、今日も暑い。


俺は今日一日、町をうろうろする事を決め、今に至る。


ちなみにウィーディーは防衛隊の宿舎で泊まったらしい。


町の道には、自転車もどきが走っている。

人々は、3つの車輪と繋がるペダルをこいで進んでいる。


ウィーディーとは会っておらず、ケイスさんは町に入ったとこで、どっかいってしまった。

それゆえに俺が1人で歩いていると、横の露店から声がかかった。


「そこの、お兄ちゃんちょっと見ていかないかい」


声をかけてきたのは男だった。


バンダナをして、商品の並べられた絨毯まではいかないが、少し洒落た布の上にあぐらをかいている。


布の上には、バンダナや手袋、スカーフのような物や何に使うのか分からない三角形の布にひもが付いたものなど、変な装飾品が並べられていた。


全て、体を隠す物で、泥棒ぐらいしか使わないような物まである。


「これは何ですか」


そう言って、三角形の布と紐とが合体した物を指差した。

幽霊がひたいの辺りにつけてるあれだろうか。


すると、店の人は熱心に話し始めた。


「これは、ルーフといって、こうやって口を隠すのさ」


そして、その布を口に当てた。


「秘密話をしゃべるとき、他の人に唇を読まれる心配がなくなるだろ」


俺はこんな物してたら逆に疑われるだろう、と的確かつ最適な判断で思ったが、30後半辺りであろうおっさんの茶色い目は、子供のように輝いている。


まあ、ルーフは要らないだろうが、その横のバンダナは使えそうだ。

この世界では、黒い髪は珍しいらしく、なんか目線を感じるからだ。


「おっ!お兄ちゃんはこのバンダナのほうが要るようだね。

確かに、君の髪は目立つから、隠れて何かするのには大変だよね。

これは、最近入ったポラムの毛で出来たバンダナで・・・・・」


その後もおっさんはバンダナをべた褒めし、結局紺色のバンダナを買う事になった。


付け心地は、良かった。









その日、セラは朝から魔方陣を描いていた。


魔方陣は特殊な軟らかい石で描かれる模様で、魔法の補助や発動に使われる。


円、線、文字が防衛隊ダイザナ支部の床に描かれた。


セラはあまり魔方陣を描いた事がないので、時間がかかった。


セラは本を見ながら、黙々と這いつくばるようにして描いた。


町の人々が昼ごはんを食べている頃、セラは魔方陣を描き終えた。


円形の魔方陣の中心には翼を広げた鳥が描かれた。


「レイサ~。セラだけど、魔方陣描き終わったから、ちゃんと描けてるか、確認してもらって。シンボルはカナムだから」


『分かったわ。ちょっと待ってて』


「うん、もうお腹すいたわ~」


『あんた、まだお昼食ってないの。仕事もほどほどにしときなさいよ』


「うん、でも誰にも見張られてないと、手を抜いちゃいそうで。あと、OKだったら転送してきていいよ」


それから、セラは昼飯へと、その部屋を離れた。










俺は今、笑顔で砂漠の町を歩いている。俺はあの後、髪が完全に隠れるバンダナを付けたまま、ショッピングを楽しんだ。


問題は、ヴァンパイア騒動で手に入れたお金が、もう半分ほどになっている事ぐらいだ。

まあ、かなりの大問題なんだが。


それにしても、今日の昼ごはんは最高だった。


ジョラパイフテルとかいったが、前の世界で食べた物全て合わせても届かないぐらい美味かった。

まあ、前の世界で金持ちだった訳じゃないが。


そんな幸せな俺の目の前に、不幸せそうな少女がいた。


「うえええええん。うええええええん」


道の真ん中で、大声で泣いている。


なんてひどい町なんだ、ここは。


困っている人を無視するなんて。


「大丈夫?どうしたの」


「ヒグッ、ヒグッ、お母さんが、お母さんがいなくなちゃったの」


まあ、予想どおりだ。

外で、雰囲気5歳以下の子が泣いていたら、大抵これだろう。


そうか、お兄ちゃん忙しいから、もう行くよ。


なんて、言えないよな~。


「名前は?」


「ティー」


「分かった。一緒に探そう」


はぁー。仕方ないな。


『主人もお人よしじゃのう』


ソウ、か、そんな事はない。

でも、ほっとけないだろ。


『そういうのをお人よしと言うんじゃないのか』










何だここは。


暗くて、怪しくて、変な臭いはするし、道幅は狭い。


「この辺歩いた」


ティーちゃんはいつの間にか泣き止んで、笑いながら俺を見上げている。


「で、この後あっちに行ったの」


俺の気持ちと正反対の明るい笑顔で指差した方は、さらに暗い。


ここは、町の中央辺りにある、町一番高い建物の影になる場所で、昼過ぎなのに暗いのだ。


その建物の周りにも、大きな建物がいくつか並んでいる。


しっかりとした赤い屋根の立派な建物と窓の少ない真っ白でシンプルな建物が1つ。


今、俺たちの居るところに影を作っているのは、ど派手で優雅な造りの建物だ。


俺の家が100個は入るだろう。


ティーちゃんに手を引かれて、暗い道を進んだ。


しっかりとした建物の横は、俺が取調べを受けた防衛隊の建物だ。


そういえば、この辺りは防衛隊の兵士が多い。

さっきすれ違ったところだ。


 先に進むほど、辺りは不気味になっていった。


俺とティーちゃんが二人で歩いても窮屈な道に、左右にはなにやら怪しい店が並んでいる。


「ここのお店に入ったの」


ティーちゃん・・・嬉しそうに言ってるけど中、真っ暗だよ。


店の看板には、文字と葉の絵が書かれている。

もちろん俺はこの世界の文字は読めない。


「で・・・あっちに行った」


ティーちゃんが指差した方へとまた向かう。


さっきからこれの繰り返しだが、ほんとに覚えているんだろうか。


かなり不安だが、こうするしか思いつかなかったので仕方ない。


「ティーちゃんのお母さんは、どんな仕事をしてるの?」


「お母さんはね、凄いんだよ。お医者さんやってるの。

怪我とか病気を何でも直しちゃうんだよ」


ティーちゃんは、笑顔でそう言った。


俺たちの進む道には、小さな曲がり角があった。


その曲がり角を通り過ぎるとき、小さな話し声が聞こえた。


「・・・なんで、俺たち防衛隊が逆に役所や、町長の家を襲わなきゃいけないんだよ」


「それに、研究所もだろ。最近、クレットってやつが連れてこられたらしいけど」


‘クレット’という言葉に、俺は立ち止まった。


「ああ、知ってる。街灯とか、自転車とか、銃を作ったらしいな」


「うん、そんなやつを捕まえてどうするのか。

防衛隊の上のほうは良く分からないな」


「そいつに、武器でも作らせるつもりじゃないか」


「天才も大変だな~」


その時、前のほうから高い声が聞こえた。


「おに~ちゃ~ん!何やってるの~!」


その言葉が合図だったように、現実に戻ってきたような感覚に襲われた。


俺は、ティーちゃんのところへ逃げるように走った。


 俺たちは、陰から出た。


太陽の日差しは思っていたよりも暑く、すぐにまた影があるのが嬉しかった。


次の影は、真っ白な建物の影だった。


その影に入ってすぐ、奥から声が聞こえた。


「ティー!」


その声の主は、一人の女性だった。


ティーちゃんは、その女性に抱きついた。


「ティーごめんね。母さん話に夢中になってて」


その時、後ろからさらにもう一人、少し太った男が出てきた。


「あら、ジョーカーさんじゃないですか!」


「ケイスさん?!」


その人はケイスさんだった。


窮屈そうに、こっちへと歩いてきた。


「えっ、あなた師匠とお知り合いなんですか」


そういって、驚くティー母。


って、ケイスさんに弟子がいたなんて。


「お兄ちゃん、ケイスおじさんの事知ってるの」


っと驚くティーちゃん。


驚いた顔が似ている。


「あの、ケイスさん、少し説明を」


俺は、今一番状況が分かっていそうなケイスさんを見た。


「ありゃ?何でジョーカーさんがティーちゃんと一緒に?」


ってケイスさんまでもか・・・


その後、俺たちは、ティーちゃんの家へ行く事になった。

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