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2-3 モンスター行進

店の入り口で、ウィーディーは巨大なイノシシを巨大スプーンで殴っているところだった。


すくう部分で片方の目を叩き、額をスプーンを半回転させ柄の部分で切りつけた。


あたりに鮮血が飛ぶ。


そんなんで良く切れるなー、と感心していると、外の大通りを町の中央に向けて走るモンスターたちの姿が見えた。


イノシシに熊に象にライオン、それにキツネ?


最後のは、どこかの遊び人兼防衛隊だ。


まあ、一応、防衛隊だから仕事であろう。


目の前では、巨大イノシシがウィーディーに牙を振るったが、楽々避けられ、前足を易々と切られた。


「ギュオオオオン」


叫び声をあげ、倒れたイノシシに、しっかりととどめを刺したウィーディーがこちらを向いた。


全身血だらけだが、本人の血は一滴も無いだろう。


「追いますか?」


とても簡単な質問だ。

追うか、追わぬかの二択。

しかし、俺には追う意味が無い。

ここに来た理由にそんな物は無いからだ。


ここに来た理由は、

1、王国までの道にあったから。

2、砂漠での野宿は明らかに危険だから。

3、食料調達。


町を救って勇者の気分になったところでだ。

つまり俺の答えは、


『主人、あの防衛隊のオーラも気になるところがある、と言うことで』


「追おう」


おい待てや。

ソウ、勝手に人の口を使うな。

乗っ取るな、第一あんだけのモンスターをどうしろと・・・


「分かりました」


それだけ言って駆け出すウィーディー。


仕方ないな・・。


この世界の人はどうも自分勝手だ。












セラは前を進む魔物を攻撃範囲内に捉えながら、砂漠の町を走った。


「レイサ、この後どうすればいい」


『その道を真っ直ぐに進んだ町の中央あたりに、広場があるわ。

そこでやってしまって。

そこの町の防衛隊には町民の避難をしてもらってるから。

それにしても、あなたのフォースも困った物ね、近くの人まで巻き込んじゃうんだから』


「一言どころか、一文よけいだよ」


第一、欲しくてもらった物じゃない、とセラは思ったが口にはしなかった。


『こうやって話しが出来るのも、私のフォースのおかげなのに、よけいだなんて失礼ね』


「レイサのフォースは便利でいいね」


彼女も欲しくてもらった訳じゃないが、なんとも思っていないようだ。


『ありがとう、ああ、そこよ、広場』


「見たら分かるよ、魔物だらけだからね」


セラが今いる広場には魔物が20ほどいる。

魔物たちは町の中央に向かって広場を横断している。


「早いとこ終わらそうかな」


そう言ってセラは手のひらを上に向けた。


彼のフォースは電気を発生させ、操るものだ。


手のひらの上に電気の球をつくる。


髪の毛が逆立つのは、魔法を使ったときの魔力の漏れではなく、セラが発生させた電気のせいだ。


ある程度大きくしたそれを、魔物の群れに向かって投げた。


「セラ・スペシャル3!」


雷球は魔物の群れに追いつくと同時に、中に溜められた電気を一気に放出した。


目がくらむほどの光が魔物たちを包み込み、光が消えたとき立っていた魔物はいなかった。












走るウィーディー。

その、かなり前を走るモンスターたちと遊び人。


俺はというと、自己加速を使ってモンスターと並んで走っている。


モンスターたちは、きっちりとした統制の取れた動きで、道を真っ直ぐに走っている。


時々道の左右に並ぶ店に突っ込むやつがいるが、すぐに戻ってきて、固まって走る。


モンスターのくせに賢いな、などと考えながら群れの先頭の方へ向かうと、そこに一人の男がいた。


巨大イノシシの上にまたがっている。


歳は30位だろうか。


おそらく、こいつがこの群れを指揮しているんだろう。


目の前には広場が見えてきた。


なぜか人がいないが、そのほうが安全だ。


モンスターの群れの前へ出た。


その男は、さすがに驚いた顔をして、手に持った杖を振って叫んだ。


「な、なんだ、あいつは。殺せ!殺せ~!」


今にも、イノシシの上で立ち上がりそうだ。


杖には、テニスボール級の濃い青の水晶がはめ込まれている。


男の指示で、男のすぐ脇のトラのようなモンスターが、走ってきた。


そのトラをひきつけて、後ろを向いた。


いま俺は後ろ走りの体勢だ。


イノシシの上の男と目が合う。


そして、地面を思いっきり蹴った。


自己加速の影響で地面を蹴る速さが上がり、上に2mほど飛び上がった。


そこに、イノシシが男を乗せて突っ込んできた。


ドスッ、と、イノシシに狙いどうり着地して、とりあえず男を蹴り落とす。


俺の蹴りが頭に当たり、座って杖を振り回していた男は杖と共にゴロゴロと転がっていった。


そして、俺が安全に地面に降り、モンスターの群れから少し離れたところで、それは起こった。


雷が落ちたような音と、周りのものが何も見えなくなるほどの光が、モンスターの方から放たれた。


俺は腕で目を覆いながら振り向いた。


その腕を下ろし、目を開くとそこには、真っ黒なおそらくモンスターだったと思われる物体が転がっていた。











「ちょっと、やりすぎちゃったわ~」


いまだに、このキツネがこんなことをやったのか疑問だ。


「おっ、その顔!疑ってるね、そうでしょ?違う?」


あと、この甘ったるいしゃべり方も少し何とかして欲しい。


「一人でやったのか?」


そう聞くと、細い目が、笑ってさらに細くなった。


「やっぱり疑ってるね。ところで、この人は?」


あ、ああイノシシにまたがってたこいつか。


「そいつはあのモンスターたちの先頭にいた」


「ふ~ん。じゃあ、君、何やってたの?」


その質問は俺に対してではなく、地面転がって、ぐったりしてる目の前の男にだ。


「わ、わたしは、・・・違う、理由がある」


「どんな?」


「もう、我慢ならないんだ。ここの町長だ。俺たちからやたらと税を取るんだ。

その金であいつは、贅沢やってるんだ。

逆らおうにも、あいつ、見た事もない武器を出してきて、逆らったやつは、みんな、みんな殺された」


「ふんふん」


キツネ男は男の言うことをしっかりとメモを取っている。


胸には見たことない(まあ、世界が違うからそれも当然だが)金色の金属の板を着けている。


「だから、俺たちは、協力してあいつを殺してやろうと考えたんだ」


「それで今回のことを起こしたと。分かった。詳しい話は後で良いや」


そう言って、キツネ男はこっちを向いた。


「ところで、あ、う~ん。お嬢ちゃん、そのスプーンはなあに?」


それ、俺も気になっていた。


「これは、私の祖父が作った武器です。この武器の名前はフーモアガッシャーです。

祖父の名前はクレットですが、知ってますよね」


キツネ男はクレットと言う名前に聞き覚えがあったらしく、


「・・・そうか、まさか、あのおじいさんの孫がお嬢ちゃんな訳か」


相当驚いた顔をした。


細い目が、珍しく見開かれた。


今まで全く気づかなかった(気づけなかった)が黄色と灰色の面白い瞳をしている。


「それに、祖父がこの町に連れてこられたという事も、分かってますよね、特大将さん」


キツネ男はさらに目を見開いた。


眼球が飛び出すんじゃなかろうか。


「知らなかったな、この町の恐ろしいまでの発展はそのせいだったか」


だめだ、話についていけない。


置き去り感MAXだ。


「まあその話も後ってことで」


キツネ男は気を取り直して続けた。


「君たち、二人とも防衛隊に暴行したってことで、指名手配されてる訳だけど、知ってた?知らない?」


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