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1-11 ヴァンパイアの国の戦い

ヴァンパイアにしては背の低い、年をとった秘書は地下に向かう通路を歩いていた。


その顔には笑顔が浮かんでいる。


だが、その笑顔は欲にまみれていた。


『やっと俺の番だ』


セイヴェスは、今の王から2つ前の王の時代から秘書を務め、王になることを願っていた。


しかし今まで王になることはかなわなかった。


そのまま老人に近づいて7年前新たに王が変わったときはもうあきらめていた。


新たな王は、情報は与えてくれたものの、警戒されていて何も出来なかった。


そんなセイヴェスに、今の王が人間になって人間たちに背負っていかれるという状況は願ってもないチャンスだった。


あの時、魔術師と別々に探そうと提案したのが、実を結んだようだ。


セイヴェスは、意識することもなく早歩きで、坂を下っていった。







「そういうわけだ」


元ヴァンパイアの話は青葉高校の校長並みに長かった、が、あの頃のように体育館で立ちながら寝ることはなかった。


それは、内容が校長の話とは比べ物にならないほど密度が濃かったからだ。(校長は、口内炎ができたことだけで30分は語り続けれる特技を持っていた)


グラスクさんはヴァンパイアに噛まれた事でなった、変異型ヴァンパイアで、


噛まれてからだいぶ経ってからヴァンパイアになって、


その間に双子が生まれて、


ヴァンパイアの国にいって、王になって、


この村を襲われないよう新たにレイシーさんのむらの近くに通路を作って、


そのことをとてもすまなく思っていて、


人を襲うことを止めさせようと思っていたけど、


反対意見が多いことはわかっていたので、


内乱を起こされては国が危ないので、


力がある人を求めていたところに、


俺が来た。(目的はソウ)


という話だった。


強大な力を見せ付けて、反対する者を抑えるということだ。

その後話はさらに進んでいる。


「では、明日はその手順でよいの」


俺にはいまだに発言権がなかった。










宿屋のベットはなかなか良かった。


木の箱に植物を編んだ物がひかれており、背中は痛くない。


他の家と同じく木造だが、快適な温度だ。


この世界には季節があるのか。


ソウに聞く。


『ない。いつも同じ温度じゃ。まあ南にいけば暑いし、北に行けば寒い』


つまりもとの世界とあまり変わらないようだ。


行くところもないが、旅をするのも面白そうだ。


ところで、グラスクさんとは知り合いなのか。


『知り合いというか、まあ以前にあったのは1度だけじゃ。森で自己加速(事故加速)を、主人が始めて使ったとき。主人は気を失っていたときじゃ。あの黒いモンスターを退治して、さらに我と主人を襲おうとしてきたが、我が止めてやった。かなり油断してたようでな、衝撃の魔法で吹き飛ばして、白い岩にぶつけてやった。どうやらあちらも気を失ったようだったな。』


そうか。(ソウは強いな)・・・明日は忙しそうだしもう寝るわ。


快適なベッドと、なかなか良かった夕飯のおかげですぐに寝付けた。









次の日の朝と昼の間、ヴァンパイアの国では休日のこの日、ヴァンパイアの国の住人が国の中央大広場に集められた。


この広場は、国民が全員集まっても少しぐらい隙間の出来るぐらいの広さで、ヴァンパイアの国の3割にも及ぶ。


その広場のステージの上にヴァンパイアの王が上った。


その瞬間ヴァンパイアたちからざわめきが起こった。


それもそのはずだ。王の名において命令する、と話し始めたのが見たことのない人間だったのだから。


静かなままなのは、土の床に何か書いている少女くらいだった。




さすがに無理だと思う。昨日までヴァンパイアだった王様が、人間になってるんだもんなぁ。


秘書のセイヴェスさんはいけると言っていたけれど。


「そこで、我らヴァンパイアは人間と共に生きようと思う」


王の演説は続いている。


周りからの罵声が凄いんですけど、だいじょぶなんすか?


下がれ偽者とか、王を返せとか、おい、お前足踏んでるんだよ、など色々と。


「ここに人間から代表が一人来てくれた。ここに友愛の証としての握手を」


魔法で大きくなった声は、広場の隅まで響き渡る。


そのステージの上で、俺と王様がお互いの手首を握り合う独特の(こっちでは普通なのかもしれないが)握手をした。


あまり意味があるとは思えない。


なんか色々下から投げてきてるんですけど~!


その時


パチン!


手を叩いた音が、このステージとは対に作られているステージから響いた。


罵声、暴言、叫び、呪文、その他もろもろがやみ、ヴァンパイアたちはそちらを振り返った。


そのステージの上には背の低いヴァンパイア、セイヴェスが欲にまみれた、汚い笑顔を浮かべて立っていた。


「ヴァンパイア諸君」


やはり魔法で拡声された声で話し始めた。


「そこにいるのは王を誘拐して殺した殺人鬼たちだ」


吸血鬼に殺人鬼と呼ばれるとは、てか、殺人鬼っておかしくないか。


ヴァンパイアを殺したら殺ヴァンパイア鬼だろ。


「我々で王の敵を討とうではないか」


そうだそうだと、あちこちで声が上がる。


凄いな、いや、やばいな。


何でこう仕組まれたように声が上がるんだ。


さっき一気に声が止んだのもおかしかったぞ。


そんなことを考えてる間に下から人が上ってくる。


そして、吹き飛んだ?


「おいソウ、いつの間に抜け出した」


斜め前に現れたソウに聞くがそれどころじゃない様だ。


空中にたくさんの火の玉が現れた。


ああ、ありがたい。


今まで暗くてよく見えなかったからな。


白い岩で出来た天井までしっかり見渡せるようになった。


「クロンニャイスドーラんグ、ラリャイタイアェイギャンム」


ソウがそう言い放った途端、ヴァンパイアたちの動きが止まった。


この火の玉で焼くぞとでも言ったんだろう。


ヴァンパイアたちは後ずさり始めた。


しかしどうすることも出来ない。


この王様を信じてもらえないことには、どうしようもない。


何でこんなことすることになったんだ。


俺は今日の朝、


止めたぞ。


そういえばあの秘書が、絶対だいじょぶとか言ってたような。


「ハイオコミウテブュンェオゴウサヂーラ」


なんて言ったかは知らんが、秘書の言葉でヴァンパイアたちが再び襲い掛かってきた。


ソウの火の玉が暴れ始める。

その玉はヴァンパイアたちを焼き殺しながら秘書のほうへ向かっていった。


ステージの上には、もうヴァンパイアたちが上ってきている。


しかたない、死なないためだ。


「ソラフ!」


上ってきた数人を、炎を纏った右手を上下に振って焼き切る。


いつか暇になったとき、森の中で練習した動きだ。


このくらいは容易い。


ソラフを使った途端回りがスローに見えるし、炎のチョップは、振るだけでヴァンパイアは焼けてしまって右手には何も当たらない。


本当に振っているだけなんだ。


しかし上ってくるヴァンパイアの数は減らない。


仕方ない。


殺すというのはゲームで散々慣れているはずだが、いい気はしない。


無性に怖くなる。


何が怖いのかは分からない。


だけど怖い。


だから殺したくない。


だけど仕方ない。


死にたくない。


殺されないために殺す。自然の摂理だ。


だが、そんなに殺さずにすんだ。


遠くの方から規則正しい足音がやってきた。


人間だ。


「王国の兵士だ」


グラスクさんがつぶやいた。


そうだとしたら、この前町に出した血液取引の証明書だったっけかが届いたんだろうか。


ずいぶん速いな。


熱心な兵士たちなんだろう。


だが、かなり大変なことになった。


兵士側の人間も、ヴァンパイアもかなりの被害を出しながら、受けながら戦い始めた。


特に王様が今にも泣きそうな、険しい顔をしてるのが大変だ。


「主人、ヴァンパイアと人間が戦わなくて済む方法を考えたんじゃが」

前触れも、「拝啓」も、時候の挨拶もなしに、ソウが言った。


ソウが放った火の玉は、辺りを暴れまわっている。


「OK、とっととやってくれ。俺は自分主義の次に平和主義だ」


「そうか。では天井を爆破するぞ」


「おい、どういうことだ。全滅して戦わなくて済んだ、なんて結末は要らないぞ」


「まあ落ち着け。ここの天井はサームラディスで出来ておるようじゃ。爆破してその粉を吸えば、ヴァンパイアが人間に戻る」


「そう言うことか。分かった、で、どうすればいいんだ」


「あの塔を登れ」


ソウが、指差した方には、天井近くまで伸びる塔があった。









土で出来た道を走る。


あちらこちらで、ヴァンパイアと兵士が戦っている。


足元には死体が転がっている。


さすがに踏んでは不味いので、自己加速を、緩めて(結構調節が難しい)走った。


左右の石で出来た建物の間から出てくるヴァンパイアをかわし、兵士とヴァンパイアが戦ってるすぐ脇を通り塔へ向かった。


塔のふもとに付いたとき、あちこちで火が上がり始めていた。(ソウの火の玉が、大きな原因だろう)


何かが焼ける音、剣と爪がぶつかる音、ヴァンパイアの雄たけびに、兵士の断末魔の叫び声など色々な音が交差する中を、塔の扉を焼いて、上へと向かった。


塔は、半径7,8mはある大きな塔で、螺旋階段が上に上にと、果てしなく伸びていた。


そして、階段の側壁には、等間隔に部屋があり、上は細くなっていた。


その塔を上りきったとき。


天井はすぐ上まで来ていた。

明日部活の練習試合なんで、更新きついです。

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