第8話 王都を脱出して
「アレレヴァートモーフニホンセシゥオットティズィヴイムイリマフエモー。イデアーエトセスロー」
「ムー、エレゥスィエトネティルゥレドロ?」
リスリーが目の前で、この街の門番相手に何か変な言葉で話してる。
召喚された後、いきなり日本語で話しかけられたけど、公用語が日本語ってわけじゃないのか。
「イアリルゥエカトルーフイティリビスノプセール」
「……ドーツレドヌ」
……終わったみたいだ。
リスリーは
「馬を用意させます。ワタクシの実家に向かいましょう」
門番との会話の後。
リスリーは俺にそう言った。
そして俺たちは街……この国の王都を出た。
形式上俺の我儘を聞いた形になっているからか、馬車とかそういうものではなくて。
たった1頭の馬。
それにリスリーと一緒に乗っている。
馬の手綱を取るのはリスリーで。
彼女の髪から良い匂いがした。
俺はそれに少しドキドキした。
不謹慎だけど。
別にそれを誤魔化すつもりではないのだけど
「……公用語が日本語ってわけじゃないんだな」
「この国では王族と貴族しか日本語を使わないんです」
色々訊く。
この世界で変だと思ったことを。
リスリー曰く、この国では日本から異世界召喚をした際に王侯貴族が有利に立ち回れるように、王侯貴族は基本教養として日本語を習得するのが必須なんだそうだ。
そうなのか……
そしてこの国が異世界召喚者を重要視しているのは
この国……神聖ノーザリア王国の建国に、日本からの異世界召喚者……リスリー曰く『勇者』が大きな役割を果たしたからで。
当時、この国がある土地は魔王が支配していたのだけど、勇者が聖女と共に魔王を討った。
その後勇者は聖女ノーザリアを妻として娶り、この国の王家の始祖になり。
その後その子孫である王家が2000年、ずっとこの国に君臨してきたそう。
そして勇者と聖女ノーザリアは、この国の国教のノーザリア正教で神として祀られている……
だったら
「何で俺たちは」
あんな酷い目に遭わされたんだ!?
そう続けようとした。
だけど。
俺たちが森の近くを差し掛かったとき。
突然。
俺たちの乗っていた馬が矢で射貫かれた。
首筋に深々と、矢が命中して食い込んだんだ。
ヒヒーンと嘶き、横倒しになる馬。
地面に投げ出される俺たち。
俺は落下の瞬間、何とか受け身が間に合った。
リスリーも騎士の格好をしてるだけあるのか、特に大きなダメージを受けていない。
素早く身を起こし、周囲を警戒するように見回す。
今、何が起きたのか?
それはすぐに分かることになった。
「ソーグニリックエトエスローアエトソー?」
「トンドルォクエブデプレッハ。ティドルォウエヴァデパクセ」
下卑た笑みを浮かべた野蛮な男たちが、近場の森の木の影から出て来たんだ。
汚れた皮鎧を身に着け、手に槍や弓、剣や斧を握り、構えながら。
「クール、アナモウェルボン。ドゥナアエニフエノタタット」
「ルエフスレスロフアハイエスィルプ。ネットドナスォートドログ、タトサエル」
何か言ってるけど、日本語じゃ無いから俺には分からない。
リスリーを見た。
彼女は厳しい表情を見せながら
俺に教えてくれた。
それは
「彼らは人攫いです……まさかこんな場所に出るなんて」
人攫いって。
奴隷狩りだとか、そんな感じの奴らか?
……まじかよ。
日本じゃあり得ない話だ……
一体どうするんだ?
馬をやられたから逃げるのは難しいぞ……?
俺は切り抜ける方法を思案する。
せずにはいられない。
だけど
「安心して下さい」
リスリーはそんな俺にそう言って。
その腰に吊るした長剣を引き抜き、男たちに斬り掛かっていく。
こう続けながら
「あなたは私が守ります」




