第6話 逃げてくれ!
4人が出て行った後。
その場に満ちたのは沈黙で。
レフィカルは
「時間は差し上げますから、召喚騎士になる覚悟が決まった方から名乗り出て下さい」
そんなことを平然とした口調で言っていた。
さっき、ソウジをゴミでも焼くようにして殺したくせに。
(何の罪悪感も抱いていないってことかよ)
悔しい。
許せない。
……だけど。
(俺には何も出来ない)
俺にはこの男をぶちのめすのは不可能だ。
人間をいきなり焼き殺すことが可能なとんでもない魔法使い……
襲い掛かってもソウジと同じ結果になるだけだ。
死ぬだけ……
俺の脳裏にソウジとの思い出が蘇る。
拳法道場で一緒に組技の稽古をした思い出。
突きと蹴りの打ち込みを一緒にやった思い出……。
ソウジ……
もう二度と動かない黒焦げの死体。
抑えきれないものがあった。
俺は立ち上がろうとする。
このまま、命惜しさでソウジを殺した奴の下で生きるなんて御免だ。
敵わぬまでも一矢報いて……
そう思ったとき。
(マサヤ。聞こえているか?)
突然。
俺の頭の中に声が聞こえた。
トオルの声だった。
「え」
突然だ。
思わず声が洩れる。
見回すと、傍にトオルはいたが
(聞こえてるか?)
口が動いていなかった。
俺は頷く。
(頷くのはやめてくれ。気づかれたら困る)
トオルの言葉。
(じゃあどうすれば良いんだ?)
俺がそう頭の中で考えると
続いて声が聞こえてくる。
(返事は俺にテレパシーを送る感じで考えてくれ)
テレパシー……
流石に分かった。
これが「スキル」ってやつなんだな……
トオルのやつ、もう目覚めたのか……
(分かった)
(うん。それでいい)
トオルとのテレパシーでの会話。
声を出さずに、視線も合わせずに。
トオルは
(マサヤ、逃げてくれ)
俺のために。
ここから逃げるための手を用意してくれていたんだ。
それはこういうものだった。
トオルだけでなく、トオルの彼女の岩戸さんもスキルに目覚めていて。
岩戸さんのスキルは自分の味方になり得る人を見抜くというもので。
それで見つけたんだそうだ。
……俺の逃亡を助けてくれる人を。
それは
(あのハゲ野郎の後ろにいる、金髪縦ロールの貴族然とした美人さん)
トオルのテレパシーに従って視線を向けると。
確かに居た。
真面目そうな、女性貴族らしい容貌の美しい女性が。
髪が長く目付きが鋭く凛々しくて。
銀色の胸当てと小手と具足。
そして腰に長剣を吊るしている。
見たところ、女騎士って感じだ。
その女性は少し落ち着きがないように見えた。
トオルのテレパシーは続く。
(彼女の名前はリスリー。テレパシーで話しかけたら、こんなやり方は絶対に間違っているから、お前の逃亡に手を貸してくれるって言ってくれた)
そうなのか……
彼女は何を思って、この国に逆らう気持ちになったんだろうか?
そこが気になった。
でも、今はそんなことを訊いている時間はない。
トオルはさらに続ける。
(だからマサヤ……逃げてくれ……そして)
必死の気持ちが込められた、こんな念話を。
それは……
(可能なら、この国を何とかする方法を見つけて俺たちを救ってくれ。それ以外、俺たちが助かる道はない気がする)




