第1話 不吉の前兆
「おいマサヤ、大丈夫か?」
学校校門の前で。
俺のスニーカーの靴紐が全部同時に切れたので。
一緒に登校していた俺の親友のソウジがさすがに困惑というか
不安げな顔でそう言って来た。
俺、村田正也は高校2年の男子で。
隣で屈み込んだ俺を覗き込むガクラン姿の眼鏡男子……正井宗司は小学校時代からの親友。
元々、通ってる拳法の道場で同年代だったから仲良くなった仲だ。
俺は現在彼女ナシ……というか、年齢=彼女いない歴という、あるあるなんだが。
最近、もう1人いる親友に彼女が出来たので、少し焦ってはいる。
このままで俺大丈夫か? っていう。
そのせいか?
大丈夫じゃ無いから靴紐が切れたとか……?
ほら、靴紐切れるって不運の前兆のあるあるだし。
お前このままじゃやばいぞ、って。
だけどさ
そんな俺と違って
ソウジは
「何で靴紐が全部同時に切れたんだ? まさか嫌がらせか?」
そういう可能性を見出して。
その顔が少し曇る。
俺は少し慌てて
「いや、アイツらにそんな高度な知能無いだろ」
そう、否定した。
お前は悪くないんだから。
そういう考え方はやめてくれ。
……実は俺のこの親友は、クラスで酷いいじめに遭っていた弱い子を助けてさ。
いじめをしていたグループの奴らに目をつけられて。
自分がそのターゲットになったことがあるんだ。
だけどコイツはそれで潰れることにならなくて。
逆にその後、そのいじめのグループ……不良グループたちを、証拠を押さえて法的に叩き伏せたことがあるんだよな。
なので
自分に攻撃が出来ないから、代わりに俺に攻撃したのでは?
そういうことを想像したんだよ。
だから顔が曇ったんだ。
まさか俺のせいなのか? って。
不良グループの連中を法的に叩き潰す。
そんなことができたのは……
コイツの親父さん、腕利きの弁護士なんだわ。
そのせいで、コイツは法律に詳しい。
俺はコイツは本当にすごい奴だと思う。
その容貌通り頭がいいし、優しくて正義感が強くて。
道場でも俺より強い。
俺はさ、2番目なんだよ。
道場の稽古で、俺はコイツに……ソウジに勝ったことがない。
俺はコイツの一番の友達だけど……
正直、俺なんかがコイツの友達で良いのかと思うところがある。
「マサヤ、靴箱までいけそうか?」
「ああ、うん。それは大丈夫」
ちょっと靴が脱げそうな気がするが。
気をつければなんとか。
俺はソウジに
「購買部に靴紐って売ってたっけ?」
そう訊ね。
ソウジは少し思案して
「どうかな? 分からん。スマン」
そう言って詫びて来た。
……しかしついてないな。
その後、無事に靴箱まで辿り着き。
そこでスニーカーを上履きのバレーシューズに履き替えて。
2人で教室に行く前に、もよおしたので俺1人だけでトイレに行き
用を足して洗面台で手を洗いつつ鏡を見ていたら……
鏡の像……格闘家を意識して短く髪を刈りこんでるヘアスタイル、そして目付きが怖いとよく陰口を言われる俺の顔……
それが急にパキーンと割れた。
さすがに困惑を通り越して苛立ちを覚えて来た。
……ちょっと待てよ。
何で鏡まで割れるんだよ……?
まさか心霊現象か?
一体、どうなっているんだよ?
こういう事ってあり得るのか?




