第三十五話 後始末の代価
玄十郎は、河原で膝をついた。
倒れたわけではない。
ただ、立っていられなくなった。
息が浅い。
喉が痛い。
呼吸に、熱が混じる。
「……無茶をしすぎじゃ」
葛葉が、頭上から落ちてくるように言う。
「無茶じゃない」
「拾える分を拾っておると言ったのは、お前じゃ」
「……」
玄十郎は、答えなかった。
拾える分。
そう言いながら、拾わないことができなかった。
線の外に落ちたものは、
放っておけば腐る。
腐れば、別の場所が壊れる。
「全部拾うな」
葛葉は、はっきり言った。
「世界が甘える」
「知っている」
玄十郎は、かすれた声で返す。
「でも」
「でも、なんじゃ」
「今拾わなきゃ、今夜壊れる」
葛葉は、静かに降りてきた。
「玄十郎」
「……」
「お前が倒れれば、全部が壊れる」
「なら、どうしろ」
葛葉は、少しだけ目を細めた。
「責任の行き先を作れ」
「それは、俺の役じゃない」
「違う」
葛葉は言った。
「お前が全部拾っている限り」
「誰も作らん」
「作らなくて済むからじゃ」
玄十郎は、目を閉じた。
耳の奥で、今夜の声が響く。
間に合わなかった、あの教室の声。
「……俺は」
「何じゃ」
「拾い続けることで」
「先送りしてきたのかもしれない」
葛葉は、答えなかった。
否定しなかった。
それが、答えだった。
玄十郎は、ゆっくり立ち上がる。
「……全部は拾わない」
「おお」
「拾わない分を」
「誰かが拾える形にする」
それは、決意というより――
限界が教えた事実だった。
後始末には、代価がある。
支払いが一人に集中すれば、
いずれ破綻する。
玄十郎は、ようやくそれを
体の痛みで理解した。
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