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追放されたおっさん陰陽師、人間社会では無能、妖怪社会では“本物”として無双する  作者: 遠野ゲン


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第二十四話 成功例

 数字は、嘘をつかなかった。


 妖怪反応値は、明確に低下。

 異常域に達していた数値は、すべて警戒ラインの内側に収まっている。


「……成功ですね」


 朝霧澪は、端末を見ながら静かに言った。


 会議室の壁には、最新の推移グラフが投影されている。

 赤は消え、黄色も薄れ、ほとんどが緑に変わっていた。


「被害ゼロ」

「行方不明者ゼロ」

「苦情件数も減少」


 誰かが、小さく拍手した。


「管理が機能した証拠だ」

「例外を入れず、制度通りに処理した結果だな」


 環城宗一は、腕を組んだまま黙っていた。

 だが、その表情に緩みはない。


「環城補佐官」

 朝霧が声をかける。

「想定より、収束が早いです」


「数値上は、な」

「……気になる点でも?」


 環城は、首を横に振った。


「いや。想定通りだ」

「抑制・分散・局所隔離」

「全て、設計通りに動いている」


 朝霧は、ほっと息を吐いた。


「これで、大規模被害は回避できます」

「そうだ」


 環城は、そこで一つ付け加える。


「少なくとも、“今は”」


---


 一方、その頃。


 玄十郎は、都市の外れを歩いていた。


 呼ばれていない。

 記録にも、予定にも、彼の名はない。


「……静かすぎる」


 街は、普段通りに動いている。

 人の流れも、妖怪の気配も、表面上は安定していた。


 だが――


「流れが、薄い」


 玄十郎は、足を止める。


 水で言えば、澱んだ状態だ。

 動いてはいるが、循環していない。


「抑え込まれているな」

「成功、というやつじゃ」


 葛葉が、路地の影から姿を現す。


「人の世は、今が一番気持ちいい」

「被害が出ず、数字も綺麗」

「誰も文句を言わぬ」


 玄十郎は、遠くを見る。


「……切ったな」

「何をじゃ」

「管理に邪魔な存在を」


 葛葉は、答えなかった。

 だが、その沈黙が答えだった。


「まだ、死人は出ていない」

「そうじゃ」

「だから、誰も間違っていない」


 玄十郎は、小さく息を吐く。


「成功例は、厄介だ」

「何故じゃ」

「失敗より、人を止めない」


---


 その夜。


 朝霧は、報告書をまとめながら、ふと手を止めた。


「……妙だな」


 成功している。

 それは事実だ。


 だが、心のどこかが落ち着かない。


「成功しているのに」

「……余白が、ない」


 数値は完璧だ。

 だが、“揺れ”がない。


 環城の言葉が、脳裏をよぎる。


『制度は、個人よりも安全だ』


 それは、正しい。

 だからこそ――


 朝霧は、画面を閉じた。


 都市は、今夜も静かだ。

 何も起きていない。


 誰も困っていない。

 誰も責任を問われていない。


 それが“成功”と呼ばれる間は、

 誰も、この歪みに気づかない。


 数字は、確かに正しかった。


 だが――

 正しいものほど、

 壊れる時は、音がしない。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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