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追放されたおっさん陰陽師、人間社会では無能、妖怪社会では“本物”として無双する  作者: 遠野ゲン


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第二十話 辺境に立つ者

 町は、いつも通りの朝を迎えていた。


 炊事の煙が上がり、子供の声が通りを走る。

 妖怪の気配も、人の気配も、混じり合ったままだ。


 何かが劇的に変わったわけではない。

 それでいい。


 玄十郎は、宿の縁側で靴を履いていた。

 荷は少ない。いつもと同じだ。


「……行かれるのですか」


 源蔵が、少し寂しそうに声をかける。


「少し、な」

「戻っては……」

「来る」


 即答だった。


「ここは、もう大丈夫だ」

「……そうですな」


 源蔵は、深く頭を下げた。


「名は、残していかれぬのですか」

「必要ない」

「ですが……」

「噂で十分だ」


 それが、この町には一番合っている。


 町の外れ。

 神代恒一が、立っていた。


「見送り、です」

「そうか」


 二人は、並んで歩く。


「……第一部が終わった、という感じですね」

 神代が、ふとそんなことを言う。

「何の話だ」

「いえ、独り言です」


 神代は、真面目な顔に戻る。


「あなたは、結局、何者なんですか」

「厄介な質問だな」

「立場、です」


 玄十郎は、少し考えた。


「組織には属さない」

「はい」

「妖怪の味方でもない」

「はい」


 神代は、続きを待つ。


「だから――」

 玄十郎は、歩みを止めた。

「どちらにも都合の悪い存在だ」


 神代は、苦笑した。


「一番、面倒な位置ですね」

「逃げ場がない」

「それを、自分で選んだ」


 玄十郎は、空を見上げる。


「世界はな」

 ゆっくりと言った。

「正しい判断だけで、回っているわけじゃない」

「……」

「間違いも、後悔も、管理できないものも」

「全部、溜まっていく」


 神代は、静かに聞いている。


「誰かが中に入れば、楽にはなる」

「でも、それは先送りだ」

「だから俺は――」


 玄十郎は、神代を見る。


「溜まった歪みの、出口になる」

「……後始末係、ですか」

「そんなところだ」


 町の境に来た。


「俺は、組織を変えない」

「はい」

「世界も、救わない」

「……はい」


 それでも。


「壊れきる前に、手を入れる」

「……」

「それだけだ」


 神代は、深く頭を下げた。


「……ありがとうございました」

「何の礼だ」

「立つ場所を、選ぶ理由を」


 玄十郎は、何も言わなかった。

 代わりに、軽く手を上げる。


 背を向け、歩き出す。


 町を離れ、

 組織からも距離を取り、

 それでも世界の外には出ない。


 辺境。


 どこにも属さず、

 どこからも逃げず、

 壊れそうな現実の、すぐ隣に立つ場所。


 鷹宮玄十郎は、そこを選んだ。


 さて――


「……次は、どこの歪みだ」


 呟き一つ。


 それだけで、

 物語は、また静かに動き始めていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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