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王子様に呪われ幼女になった公爵令嬢は、魔法使いに溺愛される  作者: もも


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3/17

3 魔法使い

「さあ食べよう」

アンジェリカが座ったテーブルの上には白くて柔らかそうな丸いパンがお皿の上に三個と野菜スープ、皮を剥かれて切り分けられた林檎が置かれていた。


アンジェリカは「はい」と返事をすると少年の前に座った。彼の前ににも同じ物が大盛りで置かれていた。不安だったがお腹は空いていたようで「いただきます」と挨拶をすると、同時にお腹が鳴った。


思えば丸一日何も食べていない。昨日は登城の支度の為忙しくてあまり食べていなかった。令嬢としてははしたないと顔が赤くなったが聞こえていなかったのか話が続いた。


「食べながらでいいから聞いて。君のことは黒い人から聞いた。多分全部知ってると思う。

だから君は嫌なことを話さなくていいよ。僕は魔法使いだ。だから君に掛けられている酷い呪いが厄介な物だとはっきり見える。

不出来すぎてどうして掛かったのか不思議なくらいだ。だけど不出来だから余計解くのが難しい。でも何とかしてあげたいとは思っている」


「あ、ありがとうございます。あの、黒い人は第一王子殿下の影ですよね。裏切ったら殺されませんか?何をするか分かりません」


「黒い人はもう直ぐいなくなるから心配要らないよ。あんなのに仕える気がしないから抜けるって言ってた」


「そんなに簡単に抜けられるものですか?」


「自分が大変なのに他人の心配をするんだね。ちゃんと上手く抜けて来るよ。

今朝も君の寝間着やら普段着を持ってきたよ。気に入るといいなって言ってた」


「あの人は山に捨てて来いと言われてたのにちゃんと家に連れてきてくださいました。えっ!そんな物まで持って来てくださったのですか?」


「そうだよ。結構いい奴なんだ。流石に下着は無かったからそれを食べて落ち着いたら買いに行こうか?公爵家からしたら小屋だと思うけど我慢してね」


「とんでもありません。山に捨てられるところでしたのでありがたいです。ベッドもふかふかでしたし、水が自動的に出るなんて初めて見ました。そんな仕組みは公爵家にもお城にもありません」


「水魔法を使っているんだ」

魔法使いだという少年は得意そうに笑った。緊張が少し解けた気がした。


「街に行って生きていることが知られると何をされるか分かりません」


「僕は魔法使いだと言っただろう。街に行っても一瞬で帰ってこられるし、姿を変えるのも得意なんだ」


「では連れて行ってもらって良いですか。あっ連れて行ってください。お願いします。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」


「クルークだ。君はアンジェリカ嬢だからアンジーにしようか。黒い人はクロでいいかな。本当の名は知らないんだ」


「クロさんが良い人だったからクルーク様の所に連れて来ていただけて、朝食もご馳走になりありがとうございました。あの、私は暫くこちらにいても良いのでしょうか?」


「もちろんだ、呪いを解いた方がいいからね。でないと一生この姿なんだろう?その時は奴に思い知らせてやろう」


「復讐が出来るのですか?あの、家のことで出来ることがあれば申し付けください。それと魔法を教えていただけないでしょうか。これでも適性はある様なのです」


「魔法の勉強をする時間がなかったってところか。全属性なのに勿体ない。いいよ教えてあげる。

ただし急には身に付かないからゆっくりだ。それと家のことで出来ることは無いかな。魔法で全て片付くからね。それにお嬢様で今は子供だ。危なっかしい。厨房にも行ったことがないよね?

がっかりすることはないよ。貴族の令嬢はそれが当たり前だ」


しゅんとなったアンジェリカに魔法使いは優しく笑いかけた。


「置いていただく以上お役に立てるよう頑張ります」


「気にしないでいいよ。今まで沢山頑張ったんだろう?もう肩の力を抜いていいんだよ。

子供だから魔法の練習には向いているかもしれないよ。さあご馳走様をしたら街に行ってみよう」

そう言うとクルークは一瞬で平民の服装になった。

顔もさっきまでのキラキラ感が無くなった。整った顔だったのが平凡に見える。アンジェリカは驚きすぎて目を瞬かせた。


「君はクロが買って来た普段着に着替えて来て」


「あの、後ろの紐を解いてもらっていいでしょうか」

恥ずかしかったが仕方がない。ここには侍女はいないのだ。


「良いよ、レディのドレスのままだったね。あの野郎ここにまで魔法を効かせやがって」


「身体だけ小さくならなくて良かったです。あっ屋敷では私が死んだと思っているそうです。カミラとザイルが罰を受けていないでしょうか?あの時付いてきてくれた侍女と護衛なんです」


「屋敷の様子はクロに探って貰おう。ご両親は君の味方だろうか?」


「王子妃になるのを喜んでいましたが、死体が私では無いと気づいてくれるのかは期待出来ません。顔が…」


「言わなくていいよ。それならずっといればいい。まあ事実確認が先だね。悪い様にはしないから安心して」


「どうして知らない人間に良くしてくださるのですか?」


「ああいう奴はいっぱい見てきたからね。罰を与えないと気が済まないからだよ。人間のクズじゃないか。

生かしておくと碌なことが起きないだろう。聞いただけで虫唾が走る。

さあそんなことよりこれからのことを考えよう。君の侍女と護衛はクロに助けて貰うから安心して良いよ。長く生きてると伝手は色々あるんだ」


それを聞いてこの少年に見える魔法使いは一体何歳なのだろうとアンジェリカは思った。

お読みいただきありがとうございます!

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