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王子様に呪われ、幼女になった公爵令嬢は魔法使いに溺愛される  作者: もも


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2 見知らぬ少年

 アンジェリカは魔力持ちだったが今まで妃教育が忙しすぎてきちんと取り組んだことが無かった。十歳で婚約をし自由が無くなった為だ。

自分に火、水、土、風、癒しの属性があるのは小さな時から知ってはいたがちゃんと勉強する機会が無かった。だから魔法を使うのが下手だった。王家に目を付けられなければ魔法学院に通っていたはずだ。使えれば対抗出来ていたはずだったのに何も出来なかった。悔しさが込み上げた。





 ヒューヒューゴーと吹き荒れる風の音しか聞こえない山小屋で、心細くなったアンジェリカは幼子の身体に引きずられ床に座り込んだ。まるで風の神様が怒っているように感じ恐ろしくなった。


それに伴いこれまでの理不尽な仕打ちを思い出し悲しくなって、最初は小さかった泣き声も段々大きくなり我慢が出来なくなり思いきり泣いた。

いつの間にか泣き疲れてそのまま眠ってしまっていた。




 夜も更けた頃一人の男が帰ってきた。この家の持ち主だった。




「おやおや泣き疲れて眠ってしまったんだね。風邪をひいては可哀想だ」

その人物はアンジェリカを抱き上げ寝室に運び、山小屋には似つかわしくない上等なベッドに寝かせそっと布団を掛けた。ぐっすり眠っているのを見届けてほうっと息を吐いた。

台所へ行くとゆっくりと珈琲を淹れて飲み始めた。香りが心を落ち着かせた。


見ると床にお菓子が散らばっていた。「あの子のか、でも粉々だね。一応元の形に戻してやるか」それらは直ぐに一箇所に集まり籠の中に入れられた。


「何とも厄介な呪いを掛けられたものだね、可哀想に。僻みと妬みで魔法がぐちゃぐちゃにこんがらがっているじゃないか。よくこれで闇魔法が掛かったものだ。出来がよくないから解くのが大変そうだ。中々難しいが何とかしてあげたいものだ」


 男は魔法使いだった。昔は王宮魔法使いだったが、扱いの酷さがほとほと嫌になったので辞めた。良いように使われる生活に嫌気がさしたのだ。

戦いに駆り出されたり魔獣を倒せと言われたり、ハニートラップの様なことまでさせられそうになった。考えただけで腹が立つ。親に捨てられた昔の自分は誰かに認めて貰いたかったので頑張ったが、ある日全てにうんざりした。

もっと楽に生きようと思い山を一つ買った。そこに強固な結界を張り山小屋を建てて暮らしている。

知っているのは僅かな者だけだ。そのうちの一人があの第一王子の影だ。






「あのクソガキ酷えことをしやがった。何の罪もない可哀想な子供を助けてやってくれ」

あれが怒ったのを見たのは初めてだった。影は感情を出さないよう訓練されていたが元々が静かな人間だった。戦争に行った時に知り合いになった。

戦地へ伝言係としてよく来ていた。背後にすっと立って耳の近くでぼそっと話すので死ぬほど驚いたものだ。あんまり続くので

「今度それをやったら消すぞ」と脅すと


「違う刺激があった方が良いかと思ったんだが」と理由のわからない答えが帰ってきた。


「刺激はこれ以上要らない、平穏が欲しい」と返すと


「それもそうか」と納得して帰って行く変な奴だった。


その男が連れてきた子供は第一王子にくだらない理由で疎まれ呪われた憐れな元令嬢だった。



 魔法使いは珈琲を飲み終えると浄化魔法で綺麗にしてからカップをしまい、明日の朝のパンを確認してから寝室に向った。朝、子供が目を覚ましたら食べさせてやろうと思いながら。





 窓から朝陽が差し込み夜が明けたのに気づいたアンジェリカはもう一度自分の手を見た。残念だけど昨夜見たままだった。呪いは解けておらず子供のままだ。着ていたドレスは皺だらけ、確か床で泣いていたと思ったがベッドまで移動したのだろうか。覚えがない。何やら良い匂いがしてきた。ベッドからそろそろと降りドアを少しだけ開けて様子を見た。



台所にいたのは面識のない少年だった。銀色の髪で緑色の瞳をしていた。整った美しい顔だなと思った。

「やあ目が覚めた?おはよう。随分酷い目にあったね。こっちに来てごらん。パンとジュースがあるし、食べれたら林檎も剥いてあげるよ」

優しそうなその少年は人懐っこそうな笑顔で話しかけてくれた。


「あの……ここはあなたの家だったのですか?すみません。私黒い人に連れてこられて…」


「ああ、あれは君に何も話さなかったの?ここは僕の家だ。安心して、僕は君の味方だ。ああ見えて黒い人も悪い奴ではないよ。お腹すいただろう、まずは食べようか。話はそれからにしよう」

少年は安心させるようににっこり笑った。


「顔を洗って来ます。何処にいけば水が使えますか?」

おずおずとアンジェリカが尋ねた。


「そのドアを開けて右に扉がある。そこがトイレと洗面所とお風呂だから遠慮なく使って。踏み台は置いといたから要ればどうぞ」



何と手をかざすだけで水が出て来た。お湯も出るようだ。鏡には目を腫らした五歳くらいの女の子が映っていた。これから私はどうなるのだろう。不安が押し寄せてきて涙が零れそうになったが他人(ひと)の家だ。ぐっと堪えた。






読んでいただきありがとうございます!面白いと思っていただけたら下の☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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