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第9話:作戦終了

第9話:作戦終了


俺とカミ―ラとマリーベルは、王都に着いてすぐ、騎士団総長室にかけこんだ。

「どうしたんだ、そんなに急いで」

総長が驚いて言った。


「あの山の正体と、目的が分かったんじゃよ」

カミーラでさえ喘いでいた。それほど急いで帰還したのだ。


「何だと、それは早く教えてくれ」


「それより王宮で何か異変が起きていませんか。例えば宝物庫で何か異常な事態が起きていないでしょうか」

マリーベルが総長の目をまっすぐ見てそう質した。


「どうして知っている。これは厳重に秘匿されているのだが。今その原因を今調査しているところだ。全く手がかりさえつかめないんだが」


「そいつは、アイゼン山脈から献上されたオパールじゃろう」

それを聞いた総長が目を見開いた。


「なぜわかった。そのとおりなんだ。約3週間前より、脈動するように光りだし、今では眩しいくらい輝いている。あのオパールが今回の事件と関係しているのか」


「あのオパールは宝石ではなく、あの歩く山の卵なのです。あの山は今まで知られていない巨大な生き物で、今回奪われた卵が孵ろうとしているのを察知し、迎えに来ているものと考えられます」

「私たちは卵が孵ろうとするときに、何らかのシグナルが出て、親を呼び寄せていると考えています」

マリーベルが自信をもってそう断言した。


騎士団総長は考え込んだ。

「その歩く山は、まだ王都に向かって進んでいるのか」


「はい。一直線に王都に向かっております。でも動きは遅いので、あと一月くらいは時間の余裕があります。しかし早急に対策を講じるべきです。あの歩く山にとっては王都の城壁など全く問題になりません。全て破壊して、卵の所に向かうと思います」

「あの卵を早急に王都外の安全なところに運び出し、親に帰すべきです。でなければ王都は破壊されます」

俺は必死に総長に進言した。あの歩く山を止めることはできない。それは津波を止めようとするようなものだ。


「カミ―ラ様も、ルーデンドルフ嬢と同意見なのだな」

「勿論じゃ、私らだけでなく、同行した魔導士全ての一致した意見じゃ。早急にオパールを王都外に移動するべきじゃ」

「私も、博物学者としての名誉にかけて進言します」


総長が全員の眼をゆっくりと見まわした。三人ともその視線を受け止めいっさい外さなかった。

「分かった。しかし、ことは重大だ。これから宰相に君たちの意見を添えて事実を報告する。そして閣議を行い、そのあとに、王に報告し、その承諾を得なければならない。場合によっては、君らに閣議に出てもらうことになるかもしれない。その覚悟は良いか」


「全く問題ありません」

「むしろ呼んで欲しいんじゃが」

「同意見ですわ」


三者の意見は全くの一致をみた。


こんな破天荒な事件だすぐには結論なんか出ないだろう、しかし丸一昼夜かけた閣議のあと、結論が出て、王の承諾も得て、そのオパールは、城外の安全なところに倉庫を作りそこに安置されることに決まった。

これは誰が見ても絶対おかしい事態だもんな、常識があれば宝物蔵にしまい込んでいるオパールなんかどうでもいいから安全策を取るべきだろう。


王都から20キロメートル離れた西の荒野に1週間かけて倉庫を作り、オパールはそこに安置された。周囲は第一騎士団により厳重に警護されていた。隊長は調査に同行したあの生真面目な騎士だった。あいつなら大丈夫だろう。

それから3週間たつと、王都からも歩く山が見えてきた。その時のオパールの光は、倉庫から漏れ出すほど強烈になっていた。

歩く山は王都の方向からずれ、まっすぐ倉庫の方に向かっていった。その時には王都からの見物人が鈴なりになっており、その警護に騎士団がだいぶ苦労していた。

「ルーデンドルフ嬢の考えは正解だったようだな」

俺は呟いた。

「このまま子供を連れて、まっすぐアイゼン山脈に帰ってくれればいいんだけど」

マリーベルが心配そうに言った。

「大丈夫だと思う。あいつは子供を迎えに行くこと以外、余計なことを一切していない。俺たちがちょっかいをかけた時も、何の反応も示さなかった。このまま帰るさ」


そして、ついに歩く山が卵の倉庫の位置に達した。そこで歩く山は歩くことをやめ、停止した。


数日後、パリンというと音がして、卵がわれ、子供が出てきた。

それは3メートルほどの親にそっくりの山だった、色だけは灰色ではなく真っ白だったが。そして子供が親に近づくと、山の横腹が開いた。そこに子供が入っていくと、横腹は閉じた。

「育児嚢のようなものがあるのね。これで帰ってくれるといいんだけど」

マリーベルが、まだ心配そうに言った。

「大丈夫さ、目的を果たした今、あいつは何もしないで帰っていくよ」


俺の言葉通り、歩く山は長大なUターンをした後。ゆっくりとアイゼン山脈に向かって帰っていった。


その3か月後、歩く山を追跡していた部隊から、歩く山は無事アイゼン山脈に達し、以前に出てきた穴の中に潜り込み、そのまま山の中に消えたと報告があった。


事件は解決した。


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