表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/19

第7話:正体判明

第7話:正体判明


翌朝は、朝食をとってから、再度観測を始めた。

マリーベルは、心なしか以前よりよりキビキビ働いているように見えた。


「ほう、マリーベルの顔つきが変わったな。ギースラーお前何をしたんじゃ」

「特になにも。少し人生談義をしただけかな」

俺はすましてそう答えた。


カミーラは、疑わしそうに俺の顔を見ていたが、つと視線を外した。

「まあ良い。良い変化があった様じゃからな」


「そこ、なんとか検査資料を削り取れ。高硬度の新式の鏨を使ってみろ」

「新式ドリルを使ってみろ」

マリーベルが生き生きと命じていた。


うーん、なんか埒があかなそうだな。何か新しいことをしないといけないか。


「今、よろしくありますか」

あの生真面目な第一騎士団の隊長が話しかけてきた。

「私たちは周辺警備しかしておりません。現在余力があります。私たちが出来ることをしたいと思うのですが、許可を頂けませんでしょうか」

「何をしたい」

「我々は民を守るために存在しています。ここで手をこまねいているのは存在意義が問われます。あれを倒すために攻撃してみたいと思います。騎兵突撃と弓矢による攻撃を行います。さらに魔法兵もここにはいますので、魔法攻撃も要請します」

「さらに、別の一隊でこの山の進行方向にバリケードを築きたいと思います」

十中八九無駄だと思うが、この局面を打開するには、行ってもいいかもしれない。何か変化がおこるかもしれないしな。


「分かった。あの山の動きは遅いので、よっぽどことがない限りこちらに損傷は出ないだろう。どちらの作戦も許可する。が、何が起こるか分からないため、十分気を付けて行うように。俺の権限により、作戦を許可する」


「了解であります」

非常にいい笑顔で敬礼してきた。本当に真面目で、仕事熱心で、いい奴なんだろうな。俺は気に入ったぞ。

この攻撃は、無駄かもしれないが、あるいはこの局面を変化させるかもしれない。危険性は少ないのだ、やるべきだろう。


第一隊は山の進行方向の先にバリケードを築きだした。丸太を地面に深く打ち込み何段も柵を作った。そしてその柵の間に穴を掘り石の土台を作りそのうえに石を積み上げていった。通常の野戦築城なら百点満点だ。この壁を破るのは、ほぼ不可能だろう。が、あの山に対してどうだろうか。


第二隊は、山に向かって攻撃しだした。通常通りに矢戦から始まった。大量の矢が天に放たれた。それが全部山にあたったが、全部あっさり跳ね返された。

次に、火矢が放たれた。全天を覆うかと思わせるような火矢が放たれたが、これまた何の被害も与えられず、全て跳ね返された。

その後は重装騎馬隊が突撃に移った。騎兵が騎馬の力と、自分の重量を味方にし、全て金属でできている槍を、山に突き刺した。

それが全て跳ね返された、馬も、騎兵も反動で跳ね返され、宙をまい、地に叩き伏せられた。岩山は傷ひとつついていなかった。


俺は慌てた。

「衛生兵、騎士と騎馬の損傷を確認せよ。治療が必要なものは即刻治癒師にみてもらうように」

衛生兵と治療師が治療のため走り出した。

「報告します。騎士に軽症12名、騎馬に骨折8頭ありました。しかし、騎士騎馬とも治療師が難なく治癒させたとのことです」

よかったよ。流石に重装騎士の突撃はやりすぎだったか。騎馬の損害が多かったな。治癒師がいてよかったよ。


今度は、魔法兵が攻撃していた。かなり大きい火炎弾が連発して山に直撃していた。しかし、なんの被害も与えているように見えなかった。その後も氷魔法、雷魔法を加えたが、全く効果がなかった。


岩山は、やっぱり、ゆっくりと動いていた。


そして、バリケードに接触した。

これも全く効果がなかった。山は歩みを全く緩めず、ゆっくりとバリケードが壊されていった。


だが、そこで変化があった。

「何だこの音は」

山の先端部より、バリバリという音が聞こえてきたのだ。

皆いぶかしんだ。


その時、騎士団に配属されたばかりの新人が叫んだ。

「山が、バリケードの石の土台を食っている」


「何ですって」マリーベルがそれを聞いて叫んだ。

俺とマリーベルとカミ―ラが、山の先端に集まった。

「確かに、何か硬いものを砕いているような音だな」


「岩を食べている。もしかして」

マリーベルが、突然馬に乗り、山の後方に向かって駆け出した。

「まて、一人で行くな」俺は、急いでその後を馬で追った。


俺が馬で追いつくと、マリーベルは馬をおり、山が来た後の白い筋の所にうずくまっていた。

「これは土じゃないわ。これは砂よ。この山が通った跡は、白い筋となっていたけど、それは土が圧縮されてできたものだと思っていたわ。だけど違うわ。これは砂だわ」


マリーベルの眼は強く光っていた。


「土を食べて、砂を排泄する。そして動いている」

「間違いないわ。これは生き物よ」


「そんな馬鹿な。こんな大きい生き物がどこにいる」


「ここにいるわ」

マリーベルが自信を持って言った。


「そしてこれが生き物なら、やりようはあるわ」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ