第4話:予備調査
第4話:予備調査
翌朝、朝食後、俺たちは出発した。
あの山が歩いた跡とみられる白い筋は、延々と北に続いていた。
その跡をたどり、北にむかった。それは北方の山脈に続いているように見えた北方には多数の山脈が尾根のように重なっていた、そのうちの一つの山脈に向かっているようにみえた。
「おい、あれはアイゼン山脈だな」
「そうです。あの白い筋は真っ直ぐアイゼン山脈に向かっているようにみえます」
アイゼン山脈は北方に連なる多数の山脈群の中では、低く、小さい山脈だったが、悪魔や魔物がいたという伝説が数多く有る不吉な山だった。そのアイゼン山脈に跡は向かっていた。なんだか嫌な予感がするが、仕方ない、とにかく先の先までいってみることだ。
その白い筋はアイゼン山脈のふもとまで続いていた。
「なんだこれは」
「穴ですな」
アイゼン山脈のふもとには巨大な穴が生じていた。白い筋は、その穴に続いていた。
「ここから出てきたのか」
「そのようです」
「中を調査しよう」
「それはとりあえず止した方が良いと思います。地盤が弱そうです、ほら、あのように岩が崩れています」
パウルのいうとおり、穴のそこここから石が崩れ落ちていた、底部には崩れた石が山となっていた。
「走査できるものを同行させています。まず、彼に見てもらった方がよいと考えます」
流石パウルだ、走査できるものを連れてきていたんだな。素晴らしい。
「カール、君の技をみせてみろ」
「期待を裏切りません」
この世界には魔法がある、いろいろな魔法があるが、今回は周囲の状況を把握する走査が役立つ。
カールが、その巨大な穴に向かい、精神を集中しているのが見えた。
「みえました、この洞窟は20メートル先で崩落しています。岩以外の物は感知できません。ここも遠からず崩落すると思います」
「長居は無用です。ここにはもう何も有りません。あいつはここから出てきましたが、それ以上の情報はありません」
「よし、岩山の所に帰還する」
岩山に帰還すると、夕方になっていた。
山の先端には速度を調べるための杭が打たれていた。
「本日はここまでだ、野営の準備をしろ」
「了解しました」
一夜明けた朝。俺たちは、焚火を前にコーヒーと、焼いたソーセージとチーズを挟んだライムギパンを朝食として取りながら、皆と情報を共有した。
「俺達のできる調査は、あとはこの山がどこに向かっているかを調べることだ。このやまが通って来た跡はまっすぐアイゼン山脈に向かっているんだな」
「はい、途中の、山や、川も全部乗り越えて、ここまで直進しています」
「ならば、どこか目的地があるはずだ」
「こいつがたどってきた跡に烽火をあげる。5キロ離れて五か所にあげるんだ。そいつが一つに重なって見えるところがあれば、その方向に目的地があるはずだ」
「今が天候の安定している季節で助かったぞ。現在ほぼ無風だ」
「天祐です」
パウルは分隊挙げて烽火をあげた。それはある地点からみると、全て重なって見えた。
「ようし、今度は、この先、南の方で、5キロ先に、烽火の重なる地点で烽火をあげろ。さらにその先5キロで烽火をあげろ、これを繰り返して、そうして、こいつの目的地を探るんだ」
烽火が重なる地点を、どんどん南に延長していると。その先にはあるものが見えてきた。
「隊長、この山の行きつく先が判明しました」
「どこだ」
「王都です」
「本当か」
「は、何度も確認しました。この方向に直進しますとまっすぐ王都に向かいます」
「こいつは、大変なことになったぞ。この事実を王都に知らせる。俺が直接行く。パウルと他に二名ついてこい。他はグランツに帰還せよ」
「こいつの監視はいらないですか」
「この山は逃げも隠れもしないだろう、放っておいて構わん」
「が、もう夜だ。夜行は危ない。明日の朝出発しよう」
「隊長、この岩山の速度が出ました。一日で約864メートルです」
「よくやったこれで、いつ王都に達するか計算できるな」
(この山は1秒で1センチ動くと想定しています。この時代では短い時間の計りようがないので、一日約864メートルと測定されていることにします」




