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第3話:調査隊到着

第3話:調査隊到着


調査隊は、俺と、パウル、軍医1名、騎馬10騎、さらに補給物資を積んだ馬車2台で出発した。

騎馬にとって10キロちょっとなど、あっという間だった。


「あれがそうか」

かなり遠くからその山はみえた。確かに300メートくらいのなんの変哲もない岩山があった。

「はい、あれだと思います」

「見たところ、ただの山だが」

「そうですが、ここにあんな山はありませんでした。そしてあの山は動いています」


「ここからでは分からんが、いったん小休止する、全員休め」

俺は全員をいったん休めさせた後、軍医に聞いてみた。

「ホフマン、なにか幻覚作用のある毒物の可能性はあるか」


ホフマンと呼ばれた軍医は、白髪のやせた男であったが、体は鍛えているようで、汗一つかいていなかった。


「こんな遠くから幻覚を見える毒など私は知りません。だいたい毒による幻覚では皆同じ幻覚を見ません。毒が精神に作用した場合、その者の心の奥にある恐れを視覚化することが多いようです。あれは私にも見えますがとても幻覚とは思えません」

「ただ、念のため、ここで全員の診察をしてみます」

「お願いする」


ホフマンは全員を診察しだした。全身の聴診、視診、触診を行った。そのご精神的な問診を行い、また、皆が今見えている物が違うかを比較していた。


「隊長に申し上げます。全員、身体的、精神的に全く健康です。また、全員が他の者と違ったものが見える者も一人もいませんでした。毒による幻覚は否定してよいものと思います。しかし、あの山に到着した時にもう一度診察し、周囲に毒草があるか調べたいと思います」

「ご苦労だった」俺もだんだん毒じゃないような気がしてきた。しかしあの山は厳然として存在する。


「全員乗馬、あの山に向かう」


あの山に着いた。ホフマンがもう一度診察したが、全く異常がなかった。

「周囲を調べましたが、毒草どころか草一本はえていませんでした。他に怪しいものも見当たりませんでした」

「ご苦労だった」


俺達は問題の、岩山の先端部分に集まった。

「確かに動いているな」

みな呆然となった。高さ100メートル、長さ300メートルの岩山が動いているのだ。

それは僅かずつだが、確かに移動していた。

「こんな巨大なものが動くのか」

「信じられん」

「魔法なのか」


「これが幻覚とは思えん、巨大な山が動いていると認め調査する。とりあえず、我々ができる調査をしよう」

「まず正確な大きさだ、前後と幅は測定できる、高さは測量機械がないため目測で良い。前後、幅に杭を打ち、縄を張って、その縄の長さを測定する」

「それから移動速度を測定する。もうすぐ夕暮れだ、太陽の下端があの山の上にかかった時点で先端に杭を打つ。明日の同時刻にまた杭を打ち、一日でどのくらい移動するのかを測定する」

「みな作業にかかれ」

全員が作業するため散開した。


「隊長」

その時後端を調査にいったパウルが戻って来た。

「隊長、大変です、こっちに来てください」

「どうした、何があった」

「見てもらえば分かります。山の後端にきてください」

「よし、二騎付いてこい、後方に向かう」


「あれです」

俺はあきれた。岩山の後方に、白い溝があった。それはどこまでも北方に続いていた。

「何だ、これは」

「この岩山が通って来た跡だと思います」

「では、この跡をたどれば、こいつがどこから来たのか分かるわけだな」

「そう思います」

「よし、今日はもう遅い。明日俺、パウル、他二騎でその調査を行う。そのため、本日は野営する」

「了解しました。皆にそう伝えます」



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