第25話:ルーデンドルフ公爵
第25話:ルーデンドルフ公爵
「ルーデンドルフ公爵が到着しました。副団長に面会を求めております」
パウルが報告した。
「今、なんと言った」
「ルーデンドルフ公爵が到着したと申し上げました」
「本当か、なぜグランツくんだりに」
「分かりません、しかし早くお会いした方が良いとは思います」
「そうだな、応接室にお通しせよ」
「了解です」
俺は、応接室に急いだ、どんな用事かは大体わかっているが、ここで悪感情をもたらすわけにはいかない。
「ハインツ・ギースラー入ります」
そういって、俺は応接室の中に入った。そして直立不動になった。
そこには、銀髪でやせぎすの、しかし眼光は煌々と輝く人物が座っていた。一目でただ者ではないと分かった。この人がマリーベルの父親か。
「ふむ。少し楽にしてくれ。といいってもそうもいかんか」
公爵が渋く笑った。
「君も分かっていると思うが、私の愛する娘、マリーの事だ、ああ家ではそう呼んでいるのでね、一般的にはマリーベルのことだ。」
「あれも、大変苦労してな、二度離婚されている、これは貴族にとっては大変不名誉なこととされているのでな」
そう言って、公爵は紅茶を一口飲んだ。
「少し私の家の話をさせてくれ。マリーベルは三女であり、実は家のことなんかは考えず自由に生きていいのだよ、それを無理させてしまったみたいだ。上の娘二人は名門に嫁いで、特に問題もなく過ごしている。息子も二人おり、長男は私から見ても優秀で、跡継ぎには全く心配ない。次男は少しやんちゃだが、現在は第一騎士団に入団し活動している。そうそう、そびえたつ花事件では、あいつも動員されてね、君のことを絶賛していたぞ。姉君を守りながら悪漢5人を瞬く間に制圧したと言っていた、目にも止まらぬ早業だったと。自分は一人しか倒せず、情けなかったともな」
俺はどう反応していいのか分からず、ただ直立していた。
「マリーベルのことだったな。彼女も二回目の離婚後は流石にこたえていたようだ。健気に振舞っていたが、時として沈み込むことも多くあった。私としても心を痛めていたのだよ」
公爵が俺を真正面から見つめた。
「それが、ある時からそれがなくなった。昔の明るいマリーベルが戻ったのだ。そう、泳ぐ島事件あたりからかな。私はうれしく思う反面不思議にも思った」
「それで調べたのだよ。そうしたら君がいたのだ」
「君の経歴は調べさせてもらった。素晴らしいと思った。討伐した盗賊団の数は数えきれないほどだ。記録されていない小さい盗賊団をふくめれば百を超えるのではないか。そして戦う時は必ず先頭にたって敵を倒している。それでいて貧困による小悪には、見逃すべきは見逃している。騎士としての模範となる男だと思った。そして女性問題はどんなに探っても一切でてこなかった」
「マリーベルは平民になると言っている。この意味は分かるな」
「はい」
俺はそれしか言えなかった。それほどの決意があったのか。
「なら、あれを貰ってくれるな」
その眼光は輝くほどだった。
「身分的な問題がないのなら勿論です。私もマリーベル嬢を愛しています」
それを聞き、公爵はまた渋く笑った。
「これで私の最後の問題が片付いたことになる。そうそう、ベルゲンでは世話になった。税収がとんでもない額になってね。当家の財務官が狂喜しているよ。これも相応の対応を考えないといかんな」
「これで、何の問題も無くなったと思う。が、もし新たな問題が起きたなら、私の権威、地位、財力、武力、外交力その全てをかけて叩き潰すつもりだ。愛するマリーのためには私は全力を尽く。君もそう思ってくれ」
このときの公爵の眼光は眩しいほどだった。これが高位貴族の威厳なのか。貴族は子供を道具としかみていないという話を聞いたことがあったが、ルーデンドルフ家は違うのだな。俺はうれしいぞ。
「はい、受けたまりました。私も全力を尽くします。しかし、この話は、彷徨う湖事件が解決したらでよいでしょうか」
「そうか、また怪事件が起きているんだったな。もちろんそれでよろしい」
そう言って、公爵は去っていった。なんか凄くいい方向に言っている、早くこの事件を解決するぞ。




