第24話:彷徨う湖
第24話:彷徨う湖
「あれ、あんなところに湖があったかなあ」
「どれ、確かになんか光っているなあ。湖なんかないと思ったぞ」
「そうだよな。何なんだろう」
「もっと近づいてみるか」
「うん」
ここは、キンバリー王国東北部の荒れ地だ。彼らは、ルーデンドルフ領と王国北部を行き来する商人のキャラバン隊だった。ルーデンドルフ領への主街道が落石で一時通行不能になったため、仕方なく東北部の何にもない荒れ地を通るわき道を通っていたのだ。
「うわっ」
その光るものに近づいていった一人が、悲鳴を残し、突然消えていった。
「なんだ、どうした」
もう一人が、どうしたらいいのか分からずに周囲をきょろきょろとみつめた。
「ああ」
と、突然その湖のようなものから、鞭のようなものが伸びてきて、悲鳴を残し、もう一人も連れ去られた。
後方で残っていたもの達が、驚いて叫んだ。
「あの光る湖みたいなものから、何か飛んでくるのが見えたぞ」
「ああ、その後あの二人が消えた」
「あれは一体なんだ」
「それより助けに行かないと」
その中の一人が、駆け出した。
「よせ、何か分からないんだ。危ないぞ」
「あいつは俺の弟なんだ、助けないと」
その一人が、光る物のそばまで行くと、あっという間に掻き消えてしまった」
「危ない、もう誰も近づくな。騎士団に報告しないといけない」
「皆、逃げろ」
そのキャラバンは逃げるようにグランツに向かって去っていった。
報告を受けた第三騎士団の一隊が、調査に向かった。
「何もないぞ、本当にここなのか」
そこは一面の荒野が広がっており、湖も、光る物も存在していなかった。
「あれー、おかしいなあ。馬車の轍からここでいいと思います。ここから見て、あの方向に湖のようなものが見えたんです。
そこは単なるくぼ地で、草一本はえていなかった。
「何にもないぞ。本当なのか」
「嘘は言いません、三人行方不明になっているんです。嘘なんかつけません」
「他の皆も同意見か」
「はい、ここ以外に考えらえないと思います」
キャラバンの人々が異口同音にいった。
皆、真剣で嘘でもないようだった。騎士団の隊長は考え込んだが、隊員に周囲の調査を命じた。
周囲を探ってみたが、遺物も、骨の一片もなく、まるでお手上げだった。
隊長は諦めた。
「これでは、らちがあかない。本格的な調査隊を編成することになろう。いったん解散する」
「あの三人が心配です。俺たちはもう少し探してみます」
「よかろう」
そして彼らも何も見つけられなかった。
隊長は報告書を提出した。
そして、全く同じ事件が、その後3件続けざまに起きたのだ。
全て光る湖に近づいたら、その者が消え、調査隊が出向くと、何もないことが続いたのだ。
その報告は、俺の所にも届いた。
「パウル、説明しろ」
「その通りです。4件のキャラバンで行方不明事件が起きています。全て王国北部地区、我々の担当地区の、北部東方の荒れ地で起こっています。全員が光る湖のような物をみておりますが、調査隊が赴くと、何もなくなっています」
「本格的な調査隊を出すべきだと思います。それからこれほど奇怪な事件を解決するには副団長殿、ルーデンドルフ嬢、カミーラ様の力が必要になると思います」
「彷徨う湖か。良かろう、俺が指揮を執る。二人には俺から連絡する。パウル、第一第二小隊に、出動準備を命じる」
「了解しました」
また、奇怪な事件がおきてしまった。それも王国北部とルーデンドルフ領の間あたりだ。ルーデンドルフ家にも連絡しないといけないなあ。頭の痛い事だ。




