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第23話:開花

第23話:開花


二日間は変化が出なかった。しかし三日目の朝。

「おい、葉っぱがしおれているぞ」

「本当だ。これは塩が効いているのか」


確かに、巨大な木の葉が、茶色に変色し、しわしわになり、先端が垂れていた。

「何だあれは」騎士の一人が、その植物の一番上を指さした。


何かがスルスルとその植物の先端から、さらに上に伸びていったのだ。

それは巨大なつぼみだった。


その植物は自分の最後を悟ったのか、最後の力を振り絞るように、つぼみを出してきたのだ。なんとか花を咲かせ、実をならせようというのだろう。


「大丈夫か」俺はマリーベルに尋ねた。

「時間との勝負ね。植物が枯れるのが早いか、実がなるのが早いか」

「やるべきことはやったわ、後は塩を増やすことくらいかしら」

「よし、ありったけの塩を木の根元に積み上げろ」


葉はいよいよ萎れてきていた。さらに一部は変色し枯れかけていた。塩が効果があることは明白だった。

しかし、つぼみは伸び切り、花が開こうとしていた。

そこに居た全員がなすすべもなく呆然とそれを見守っていた。


そして、ついに花が開いた。


花は開いた。

それは五つの巨大な花弁をもつ毒々しいまでに赤く美しい花だった。そして、その中央には巨大な花柱があり、大量の花粉を飛ばしていた。

「ついに花が開いた」

「まだよ、実がならなければいいのよ」

「これは手に汗を握るな」


その花の葉は、下方から萎れ、枯れだしていた。植物が最後を迎えるのは間違えなかった。問題は実がなるかどうかだった。


「止めを刺すわ、木の根元の塩に水を注いでください。塩をさらにしみ込ませます」

「マリーベル、大丈夫か」

「できることはするわ」


騎士と人夫が協力し、大量の水を塩の上に注ぎ込んだ。


「見ろ、花が枯れていくぞ」

その言葉通り、花弁が萎れ、先端がうなだれてきた。色も褪せてきて、赤から褐色に変化していた。

そして、ついに、花自体が下に傾いてきた。花柱も倒れ、花粉を出さなくなっていた。

「やったぞ、花は枯れた。これで実がなることはないだろう。マリーベル、やったな」

マリーベルが嬉しそうに微笑んでいた。

「ええ、これで王都は安泰ね」


その時、枯れた巨大な花が、根元から折れて、落下してきた。それは恨みを晴らすかのように真っ直ぐにマリーベルにむかって落ちてきた。


「危ない」

俺はマリーベルを突き飛ばした。その俺の上に花が落下してきた。

凄い衝撃が俺を襲った。花って、こんなに重いんだな。

俺はそう思った後、意識を失った。


「うーん、いったいどうなったんだ」

俺は意識が戻るとそうつぶやいた。まだ頭がずきずきと痛んだ。どうも頭をうったようだ、だが、どこにもしびれはなく、手足も普通に動いた。意識も戻り、記憶の欠落もなかった。

「おう、意識が戻った様じゃな。魔道スキャンでは、骨折も、出血も、なかったから、そのうち回復すると思ってはおったがな」

そばに居たカミーラが安心したように言った。


「心配かけてすいませんでした」

「それはよい、おかげで古代植物は枯れて死んだ。後は死骸の後始末が問題じゃ。このまま放置はできんからな。第一騎士団と宮廷魔導士に命令が下った。後始末の大変さが良く分かったぞ。今までは全くすまん事じゃった」

俺が気を失っているうちに、あの後始末が宮廷魔導士に下ったんだな。ざまあみやがれ、俺の苦労を少しでも分かればいいんだ。

「それから、マリーベルが泣いて大変だっだぞ。自分のせいだってな、大変だったんじゃぞ」

それは分かる、だが命を懸けてもあなたを守ろうとする人がいることは分かってほしい。


その時、ドアがバンとあき、マリーベルが部屋に入って来た。

「ハインツ、気が付いたのね。良かった、本当に良かったわ」

マリーベルは泣きながら俺に抱き着いてきた。

俺はそれを優しく抱き留めた。

「気を失っちゃカッコ悪いよな」

「バカ」

マリーベルは俺の腕の中でしばらく泣いていたが、泣き止むと毅然とした顔で言った。

「私は決断したわ。もうこれしかないわ。ハインツ。待っててね」

それから、マリーベルは風のように去っていった。

「一体、何のことだ」

「ふん、いくつか考えられるが。ハインツ、お前も決断を迫られるぞ」

カミーラは意味深に笑ってそういった。

「まあ、そう悪い事にはならないと思うがな。むしろ楽しみなことになりそうなんじゃが」

なんだか良く分からないが、俺はまだ頭が痛いので、今日はもう寝よう。



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