第18話:ジャン・バル
第18話:ジャン・バル
そいつはメガネをかけた小柄で貧相な男だった。灰色のもじゃもじゃの髪をしていて、そばかすが目立っていた。服装にも頓着しないようだったようで、しわしわの適当な服を着ていた。
「なるほど、その街を復興したいんですね」
「どうでしょう、できますか。できるなら費用はルーデンドルフ家より出させます」
ジャンはニッコリ笑って断言した。
「できますよ。非常に良好な海産物がほぼ無限にある。住民は協力的かつ積極的だ。周辺にはお客になってくれそうな都市がいくつもある。しかも有力な貴族が後ろだてにいる。資金も出してくれるという。さらに宮廷魔導士と騎士団も協力してくれるという」
「これだけの良好な手札があって失敗したら、私は商人も博物学者もやめます」
「そうか、まず何をするんじゃ」
「まずこの海産物の宣伝です。それと同時に交通機関の整備、具体的には馬車による交通網の構築です。さらにベルゲンでの料理店の仮店舗の作成、それができるまの屋台街の整備です」
「準備に一月下さい。絶対に成功させてみます」
ジャンは物凄く不器用なウインクをして、そう言った。
約1か月後、俺はベルゲンに再度訪れた。
そこは非常に繫栄していた。通りに人が充満していた。
港に面した通りは、数多の屋台が並んでおり、カニ、エビを焼いたり、蒸したりしてそれを売っていた。他にもイカや魚を焼く屋台もあり、人々が笑顔で群がっていた。
エビやカニを焼く、いい匂いが充満しており、恐ろしく魅力的だった。
おれは誘惑に負け、焼いたエビを買おうとした時、声がかかった。
「ハインツ。ここで食べる必要はないぞ。料亭の仮店舗でマリーベルが待っているんじゃ。儂に付いてこい」
「これはカミーラ様、いつからここへ」
「昨日からじゃな、屋台の料理も野趣あふれて良いものだが、ルーデンドルフ家より遣わされた料理人が作る海鮮料理は絶品じゃぞ」
「それは大変楽しみです。ついていきますよ」
そこは仮店舗なため簡素な作りとなっていた。そんな店舗が何軒もたてられていた。
そして、そこには多くの人が列を作っていた。
俺達は列を避けるように、裏口から入った。
「ハインツ」
マリーベルが飛びついてきた。
俺はそれを抱きとめた。
「凄く繁栄しているな」
「そうね、ジャンには感謝しているわ。ハインツのために最高の料理を用意したわ、こちらにどうぞ。ジャンもいるわ」
「そいつはいい。是非どうやったのかは聞かないとな」
「驚くわよ」
マリーベルはいたずらっぽく笑ったあと、俺を食事する部屋に案内した。
そこには、カミーラ、ジャンがいた。そこに俺とマリーベルが着席した。
そこにはエビとカニを使った数多の料理があった。焼いたもの、蒸したもの,揚げたもの、煮たもの、そしてそれにかかった多くのソース、それに色々な野菜が色をそえていた。
「これは凄いな」俺は目を見張った。
「さて、食べようぞ」
みなが食べ始めた、あまりのおいしさに誰もが無言で食べていた。
ある程度腹がみちてきたときに、俺はジャンに尋ねた。
「どうしたら、こんなことができたんだ」
ジャンは優しい笑みを浮かべながら説明しだした。
「初めは宣伝です。ベルゲンに日帰りできる大きい街、ガルゲン、ベンゼン、フリューゲルにエビとカニを輸送しました。そしてもう少し時間がかかる領都ルーデン、そして王都にも輸送しました」
「日持ちがしないという話だったが」
「はい、そのため氷魔法を使える魔導士を雇いました。それで凍ったまま輸送しましたのです。もちろん費用はルーデンドルフ家が持ちましたがね」
ジャンはまたウインクした。これほど不自然なウインクをするものはいないと思うが、まあいいか。
「値段をは経費を無視して安くしました。それを屋台で焼いたり、煮たりして提供しました。安さもあり、人々がとりあえず食べてみようと思ったようで、客が集まりました。そして食べてみればあまりのおいしさに大評判となり、人々が殺到しました」
「そして、この屋台は氷魔法の費用が莫大なため、一か月の限定販売であると宣伝しました」
「ただし、ベルゲンでは、泳ぐ島のお陰でほぼ無限にエビとカニが供給でき、さらに新鮮なため、氷魔法で運んだエビやカニよりダントツにおいしいし、安いと宣伝しました」
「馬車による人員輸送施設、ベルゲンの宿泊施設の整備、王都、領都からの途中の宿泊施設の整備も同時に行いました」
「それでこんな隆盛になったのね。低い税率しか課していないのに、膨大な税収があり、お父様はたいへん喜んでいるわ」
「ジャン。うちにこない」
マリーベルがジャンを勧誘した。しかし、ジャンは、はにかむ様に、しかし断固として言った。
「嫌ですね。俺は自由人です。人に雇われるのは嫌です。でも、またの時は声をかけてください。気が向けば協力しますよ。それに今回の事で懐が豊かになったので、また自分の研究をしたいと思っています」
「しかたないわね、あなたはそういう人だったわね。今回は有難う。次があればまた誘うわ」
えーとマリーベルさん、あなたも全く同じ種類の人間だと思うんですが。まあいいか。
マリーベルは宣言した。
「じゃ、今日は飲みましょう」
全員から歓声があがった。




