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第17話:群体生物

第17話:群体生物


「群体生物じゃと。それはなんじゃ」


「群体生物とは、たくさんの生き物が、ひとつの生き物のようにふるまう状態をいいます。サンゴが有名です」

「この島は、エビとカニの二つの別の生き物が群体生物を形作っています」

「厳密には群体生物ではないかもしれませんが、群体生物のようにふるまっています」


「この大量のエビとカニが、一個の生き物として行動しているのか」

「はい、波に流されて来てここにきてみれば、明らかにあの港の中は居心地がとても良いのだと思います。港内なので波が少なく、外敵がいない。さらに魚のあらなどが大量に捨てられ、エサも豊富になっています。だから港の外に運んでも、何度でも戻って来るんでしょう」

「ちょっとまて、あの島は約50メートルの円形で、厚さは推定10メートルはある。一平立法メートルに100匹いるとすると、概算で200万匹弱はいることになるぞ。これがいっせいに行動しているのか」

「島の裏側にびっしりとくっ付いている個体のみが一斉に泳いでいると思います。さらにいうと、全部が島の裏側にくっついているわけではなく、島の内部の空洞にいる個体を主力として、さらに周囲を泳ぎ回ったり、エサを取りに出かける個体もあるようです。その数倍はいるかと思います」

「下手すると1000万匹はいるかもしれないのか。これを絶滅するのは簡単にはいかないな」

俺はカミーラに聞いてみた。

「焼き払えますかね」

「無理じゃな、島の大部分は海の下じゃ。いくら焼いても、海水が蒸発するだけで、島はあんまり影響ないだろう。まあ周辺の海水が全て沸騰するくらいの火力があれば、ゆだってしまうが、そんな火力は流石に無理じゃ」

「氷魔法でもおんなじじゃ、大体高温や、低温が迫ってきたら。周辺にワラワラと逃げるだけじゃろう。殲滅はむりじゃな」


「むしろ、だいぶ遠くまで曳航すればどうじゃ」

「カミーラ様は動物の帰巣本能を甘く見られています。渡り鳥を思ってください、彼らは数千キロを平然と移動します。どこまで遠くまで曳航すれば帰ってこれないかは、予測不可能です」

マリーベルが反論した。

「では、どうするのじゃ」


マリーベルが考え込んだので、俺は一つの提案をした。

「ならば、いっそ食べてしまえばいいんじゃないか。俺には、あれは、巨大な養殖イカダにしかみえない。殲滅できないなら食っちゃえばどうか」

「実は、私もそれは考えました。しかしそれにはお客さんがこの地に来てもらうための、意思、交通手段、そのための宣伝などのマーケッティングが必要です」

「無理か」

「いいえ、実は私の知り合いにそういった方面に詳しい博物学者がいます」

「私は、生物学、物理学、地学などの理系の博物学者なのですが、彼は哲学、文学、経済学などの文系の博物学者です」

「彼、ジャン・バルは異国から来た博物学者で、元々ある商人の庶子です。そのため経済学だけでなく商売にも詳しいため、うってつけの人物だと思います」

「そいつはいう事を聞いてくれるのか」

「真面目で、有能で、誠実な人物なのは私が保証します。そして面白い事には目がありません、飛びついてくると思います」


マリーベル嬢、あなたに似ているんだな。有能なんだろうけど、いろいろと気を付けないとな。

「私にも色々案はあります。この港町が栄えるのはお父様の意にも沿うと思います。お金を出してもらうように頼みます。そしてジャンと私とで、このカニとエビをもって、ベルゲンを復興します」

マリーベルが決然としてそう言った。



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