第15話:エビとカニ
第15話:エビとカニ
次の調査まで数日間、間が空いた。
翌日、俺たちは港付近を散策していた。
「ところで、このエビとカニはなんという種類なんだい」
案内についていた漁業長が答えた。
「これは、この辺にいくらでもいるウチワガニと、ワタリエビという種類です。どちらも尾側の足がウチワのように広がっていて、それで泳ぐ事が出来るというちょっと特殊なカニとエビです。が別に珍しい種類ではありません、そこら中にいくらでもいます」
「ふーん、それでこれは食えるのか」
俺は聞いてみた。
「勿論です。焼いても、茹でても大変美味しいです」
「それを聞いたら食べない訳にはいかんなあ。食えるんじゃな」
カミーラがよだれを垂らさんばかりの表情で言った。
「もちろんです」
「私も食べてみたいわ。大変でなければ用意できるかしら」
マリーベルも賛同して言った
「即刻用意します」漁業長が引っ込むと、部下になにやら命令しだした。
いくつもの土を焼いて作ったカマドが運ばれてきた。そのカマドに炭が入れられ、火がつけられた。
その上に鉄製の網が載せられたものと、大量の水を入れた大きな鍋が載せられたものが用意された。。
網の上には直接カニとエビが載せられた。鍋にも大量のカニとエビが投入された。あっという間に、それは焼き上がり、真っ赤に茹であがった。
「これはうまそうじゃな」
カミーラが笑顔で言った。
簡易的な椅子とテーブルが用意され、その上に焼きあがった、そして茹で上がったカニとエビが山盛りに積みあげられた。
「塩味はついてますので、そのままでも食べられます。が、このオリーブオイルとレモンをかけるとさらにおいしくなります」
漁業長がそう言って、レモンとオリーブオイルを差し出した。
「これは御馳走じゃな、いただくとしよう」
「俺は、素の味を知りたいから、このまま食べてみよう」
「私もそうするわ」
俺はエビを食べてみた。それは今まで食べたことのないくらいおいしいエビだった。味が濃く、肉はプリプリで、本当においしかった。
「なんだこれは、こんなおいしいエビは食べたことがないぞ」
「カニも絶品です」
「うにゅにゅ、うにゅあ」
カミーラは両手にカニとエビを持ち、殻ごと貪り食っていた。300年も生きてると羞恥心というものはなくなるんだな。
俺はカニも食べてみた。殻を割るのが面倒だが、途轍もなくおいしかった。さらにレモンとオリーブオイルをかけるとさらに絶品だった。
「こんなにおいしいものを、なぜ他の地方に運んで売らないのですか。絶対に売れますよ」
俺は漁業長に尋ねた。
「このカニとエビは保存が効かないんですよ。死んでから半日も立つと腐って酷いにおいがするんです。遠くには運べないので、この近辺で食べるだけです」
「なるほど、よく分かりました」
その時マリーベルの目が光ったのを俺は見逃さなかった。何か策があるんだな。




