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天使の反乱~地上編~  作者: ますっす
目覚めの章
3/12

能力について学ぼう

「いいでしょう。想造力に覚醒してしまったものはしょうがないわ。あなた方のSOEFへの加入を認めます。」


私の母が言う。

いや、ここでは隊長と呼ぶべきなのだろうか。

認めます。と言われても、こちらから願ったわけではないのだが。


「加入しないこともできるのか?」


と三ヶ里が聞く。

かなりの自由人のようだし、組織に属するのは嫌いそうだ。

だが、三ヶ里本人が言っていたように、強制的に徴兵されるのだろう。

無駄と分かった上での質問だとおもったのだが、


「できるわよ。」


…え?できるの?

意外過ぎる答えが返ってきた。


「でも、あなたは犯罪はバレているわよ?その罪で死刑になるかもしれないわ。」


それでもいいの?と問いかけるような眼をしている。

確かに、この三ヶ里は犯罪をしていたわけだから拒否できないだろう。

軍がわざわざ犯罪者を見逃す理由などない。

無銭飲食で死刑はやりすぎな気もするが…

では、私は?

先ほどの活動内容の話から考察するに、私は”保護”という扱いだ。

ならば、私は軍の勧誘を断ることもできそうだ。


「私は軍には所属したくありません!」


自分の気持ちを素直に言ってみた。


「何を言ってるの?あなたに拒否権はないわよ。」


は?

じゃあ、勧誘を断れるとは何だったのか。


「な、なんで?」

「あなたは私の娘なのよ?優秀に決まってるわ。」


まるで何を言っているのか分からないと言った口ぶりだ。

”優秀に決まってる”のが、拒否権のない理由になるわけない。

ふざけないでほしい。

華のJKが無駄になってしまう。


「そうねぇ、あなたはどうせ『青春がなくなる~』みたいに思ってるのでしょう?」


ほぼ当たり。


「なら、学校にいくことも許可するわ。」

「ほ、ほんと!?」


まじか。

意外と融通が聞く組織のようだ。

軍に入るのも悪くないかもしれない。

部活のような感覚でいいのなら私にもできそうだ。


「あっ、でもしばらくは登校禁止ね。」

「なんで!?」


なぜだ!


「あなた、また想造力を暴走させたらどうするの?」


言われて気づく。

確かに考えていなかった。


「じゃあ、能力が完璧に扱えるようになれたら登校してもいいってこと?」

「ええ。」


それならやることが単純で分かりやすい。


「教えてください!」


腰を90度に曲げる。

母にこんな風にお願いをするなんて、数年前に新型ゲーム機を買ってもらったとき以来だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それから、私達は一つの部屋に移動した。

部屋の中にあるエレベーター。

あれは飾りではなく、ちゃんと動いたのだった。

どうやら三階にあたる場所についたようだ。

その部屋は剣道場のような内装をしている。


「見ての通り、この階は訓練場よ。」


剣道場とは言ったものの、置いてある武器は竹刀・木刀の他にも、斧、鎌、大剣。

果てには銃まである。

中々に物騒である。


「ここで何をしようってんだ?」

「それは私から説明しよう。」


三ヶ里の質問に岩本が答える。


「君たち二人には想造力(そうぞうりょく)の発動の仕方を学んでもらう。」

「俺はできるぞ?」

「そうか。ではまず、想造力の仕組みについて説明しよう。」


三ヶ里の質問を半分無視するように岩本が話し始める。

三ヶ里はチッ、と小さく舌打ちをしていた。


「想造力とは、『”想()力”を元に、事象を発生させる能力』のことを言う。私ならば”壁”。隊長ならば”空間”。三ヶ里であれば”減速”だろう。それぞれに関する事象の操作を得意とする。」


ふむふむ。なんとなく分かった。

”頭の中でイメージしたことを現実にする能力”ということかな。


「もちろん、全ての人間が有しているわけではない。ごく一部だ。想像力豊かな人間よりも、思い込みの強い人間の方が想造力の発現率が高いことが分かっている。」


へぇ。

想像力を元にする能力なのに、思い込みが強いほうが能力が発現しやすいとは意外だ。

想像力豊かというと、色々なことを考えられるというイメージが強い。


「想造力を生み出すためには、強固なイメージが必要となる。だから、想像力よりも思い込みの方が大事になるのだと考えられている。」


想像力は”広く浅くイメージする”こと。

思い込みは”狭く深くイメージする”こと。


といった意味で岩本は言っているのだろう。

そして、能力を使うには深いイメージが必要、とのことだ。


「じゃあ、初めに発現した能力以外にも能力が使えるんですか?」


”広く深くイメージする”ことができたのならば、どんなこともできるのではないだろうか。


「ああ、可能だ。実際、上位の者には二つの想造力を扱うことのできる者もいる。」


可能ではあるらしい。


「想造力を複数使うのは問題ない。しかし、大きな力を生み出すのは危険だ。想造力は普通の運動と同じようにエネルギーを消費する。」


言われてみれば、少し疲れているかもしれない。


「さて、想造力について説明は以上だ。」


ここまでの話をまとめると、


・想像力を元に事象を発生させる

・各々に得意な事象がある

・強固なイメージさえあれば複数の能力を使用可能

・エネルギーを消費する

・大きすぎる力はエネルギーの消費が多く危険


といったところか。

出力の制限以外は何でもありな能力という説明であった。

まぁ、得意分野以外の能力は使えそうもないけど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「想造力についての説明も終わったところで、そろそろ演習に入りましょうか。」


いよいよか。


「先ずはあなたの想造力について。岩本は、”加速”だと分析していたわ。心当たりある?」


加速か。確かに思い当たる節がある。

でも、いつの間に岩本さんから聞いたのだろう。

エレベーターの中で聞いたのかな?


「その顔だと、ありそうね。」

「うん。確か、ステージで演奏してるバンドがいて、『早く終わらないかなぁ』って思ったら、時間が進んだみたいに…」

「ふーん、なら”加速”で間違いなさそうね。目覚めのきっかけは…三ヶ里の想造力に無意識のうちに反発しようとしたからかしら?」

「相性がいい想造力ならば、無意識に”減速”を中和することもできるかもしれません。」


私が三ヶ里の能力の中で動けて、母が動けなかったのは能力の相性の問題だったようだ。


「じゃあ、”加速”をイメージしてみましょうか。思いっきりやっちゃっていいわ。」


確か、強くイメージするんだったか。


速くなれ早くなれ速くなれ早くなれ速く早く速く早く…


ひたすらにイメージをする。

…はっ!!

何かを掴んだ気がする。


「できた!?」

「駄目ね。」


何を掴んだんだろう。


「イメージするときは、”状態を映像”で考えるといいわ。”速くなった自分の姿”を映像にするの。」


なるほどね。

…早速やってみる。



目を閉じる。

先ずは強いイメージ。



スピードが上がる

動く

スピードが上がる

動く


自分の姿が鮮明に脳裏に描かれる。



目を開ける。

頭の中を現実に投影する。

剣道場を自分の姿が走る。

それに追いつくように走る。



脳内と現実が重なる。



遅い。


まだ速くできる。


加速。


まだ。


加速。


まだ。


加速。


まだ。


加速。


まだ…



「止まれ。」


ぱふっ…



何かにぶつかった。

痛みはない。

棒高跳びのマットに飛び込んだ時のような音と衝撃。

目を開けると、岩本と母の姿があった。


「すごいじゃない。ちゃんと想造力を発動できてたわ。」


頭の中で走っていたはずなのに、いつの間にか剣道場の端まで来ていた。

あれ?

三ヶ里の姿が見えない。


「おいおい!早すぎんだろ!ハァハァ…」


三ヶ里が走ってきた。

息が切れている。

狭い剣道場の端から端まで走っただけなのに。


狭い…?


もう片方の端が遠い。

明らかに遠くなっているのだ。

エレベーターの扉が米粒程の大きさに見える。


「気づいた?この道場は私の想造力で、広さが自由自在なのよ。」


母が何やら自慢げに言う。

私がこの距離を一瞬で移動したのか。


「発動は問題なさそうだな。あとは制御か。」

「初日にしては上出来じゃない!流石、私の娘ね。」


母が私にハグをしてきた。

何歳だと思っているのだろうか。

照れくさい。

だが、嫌な気持ちはしなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後、剣道場(第一訓練場)から二階に帰ってきた。


「今日は、娘の入隊祝いということで、焼肉よ!!」


母は上機嫌だ。

すっかり頭から抜けていたが、今日は想造祭。

豪華な夕飯を食べることを最大目標と定めていた。

一時は絶望的だったが、見事、達成できたようだ。


「私のおごりだから、三ヶ里、お肉を買ってきて頂戴。」

「パシリかよ!」


母が睨む。


「なに?あなただけその辺のドブガエルでもいいのよ?」

「あ、いや、その。買ってきます!ただ、買うための金をもらってもいいですか?財布を落としちゃったみたいで。」


そりゃそうだ。

金があったなら無銭飲食なんてしないだろうしな。

落としたというのが本当かは知らないが。


「はいこれ。」



母はどこからか札束を取り出した。

分厚い。

百万はありそうだ。


「そうねぇ。お肉は5kgもあれば足りるかしら?」


多いと思うが、母が食べてくれるのだろう。

というか、母ってお金持ちだったんだ。

なら、ガチャガチャの一つくらいさせてくれてもいいだろうに。

ケチ。


「A5ランクのお肉と、あとはセンスでお願い。あっ、レシートとお釣りは返してね。」


…気前がいいのか、ケチなのか。

よく分からない。

ただ、朝の想像よりも良い食事になりそうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


岩本に連れて行かれた時点で諦めていた、「豪華な食事」にもありつけそうだ。

問題こそ多かったが、何とか平和に一日を終われそうであった。

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