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9.鈍感

 魔力も半分理戻したのでワープを使い降りていく。近くに禁書があるはずだ。

 4冊目の禁書を獲得してから、死神を倒すのが1番良いだろう。しかし、死神がずっと同じ場所にいるとは限らない。ここは、慎重に行動しよう。


「アザラ様、禁書の内容はどのようなものですか?」


「え、あー……読んでなかった。」


 アスタロトに話しかけられて、気まずくなり視線を逸らす。

 だって、好きとか言われたら意識してしまうじゃない!

 せめて、悟られないように仕舞っていた禁書を取り出し、中身をめくる。


「………。」


「これは……。」


「何て書かれてるんですか?」


「悪趣味中の悪趣味。確かに禁書だわ。」


 アスタロトにそう言って手渡す。眼鏡の位置を整え興味深く読むのを、後ろからリュカが覗き込む。びっしりと書かれた文字の羅列に、心底うんざりした顔をしてみせた。


「うげぇ、それで、なんて書いてあるんだ?」


「……人名、家族構成、職業、持病、死亡原因が書かれている。」


「え?」


「中表紙に『家畜の一族』と書かれている。何百年も前の発行のようですね……。」


 悪魔が昔人間を飼っていたことがある。その飼われた人達の名簿だ。その名簿を回して番わせ、子を成して、一族として管理していたのだろう。胸糞が悪い。


 もう一冊は人の皮、獣人の皮、家畜の皮を縫い合わせて作られた表紙だ。中身は、その皮を剥いだ様子が綴られている。


 最後の一冊は、天使と人間が恋に堕ち迫害され、処刑される本だ。


 悪趣味2人のことだから、この本を強制音読とかも企てていたのだろう。なんてカス共だ。

 どれもこれも特定の人物や、獣人を傷つける内容だ。許されもんじゃない。


 最後の天使と人間の恋物語はよくある悲恋ものに見えるが、中身はかなり陰湿で陰惨。結ばれた2人の描写はかなり過激で官能小説に近い。ここにあるというということは、悪趣味な理由もあるのだろうと捨てたい気持ちを抑えて本をしまう。


 アスタロトと、リオさんは興味津々だが、流石に未成年であるリオさんに読ませるわけにはいかない。


 ……。

 アスタロトの「好き」と、近所の過激な内容を思い出し、頭がぐるぐるする。

 いつから、私はこんなにスケベになってしまったんだ……!

 残酷描写を思い出し冷静になるように努める。


「アザラ、どうしたんだ?」


 心配した様子で、リュカが声をかける。

 リュカとアスタロトは犬猿の仲に見えて、親友だし、仮に、アスタロトが私のことを本当に好きだったら気まずくなりそう。

 そもそも、2人とも良い歳だし、私が知らないだけで恋人とか、好きな人もいるかも知れない。


「いや、リュカもアスタロトも村から離れさせて大分経つし、親御さんとか、友人とか、恋人とかに心配かけてるんじゃないかと思うと申し訳なくて……。」


 ちらりと様子を伺う。確かにそれについて罪悪感があるのは事実だが、カマをかけてるようで申し訳ない。

 リュカはそんなこと気づくことなく、顔を真っ赤にして反論する。


「いやいや、恋人なんかいねーよ!余計なこと考えずに、さっさと行こうぜ!な!!」


 バシバシと力強く背中を叩かれ、自動防御が反応する。照れ隠しでそんなに力強く叩かなくても……!

 でも、この反応を見るに、まだまだ恋に興味もない子供で日常を思い出し、少し安心した。関係が変わるのは怖いもの。

 2人が恋人ができたと結婚相手を紹介した時に、冷静に挨拶できるようにしておかないと!本当の親じゃないのに、近所のおばさん的なポジションの人が感動で泣いてたら引かれるもの!2人の晴れ姿を祝える魔術を獲得しなきゃね!私は固くそう決めた。



「リュカ、変な反応してどうするんですか!」


「そんな反応してねぇよ!」


 2人の喧嘩の原因のほとんどが私だとは思いもよらなかった。

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