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4.圧倒

 凄まじい速さを持つクロウさん。

 剣技の腕も立つし、ダンジョン攻略が大分楽になる。

 私は死んでリセットが出来るとはいえ、クロウさんは、どうなるか分からない。慎重になるべきだろう。合理性を考え、私を先頭にして、クロウさんに殿を勤めてもらうことがベストだろう。

 しかし、何回も押し問答し、結局根負けをして私が最後尾になった。

 合理性にかけると思ったが……。


「ひっ!?」


 鈍い音ともに、モンスター地に付した。

 切られた背中から血が溢れ、何者かに斬られた事がわかる。新手の敵か?仲間割れか?


「どうした?」


「どうしたって、モンスターが!死んでるじゃない!」


「俺が殺した」


「へ?」


 まったく分からなかった。モンスターがいた事も、クロウさんが動いた事も。

 魔術以外何も出来ないとはいえ、自動防除が発生するから見えなくても構わなかったとはいえ、これだけの速さ、強さ、正確性があるなら自動防御があっても危なかったかもしれない。頼もしい味方の存在に身震いがする。


「寒いか?」


「え、いや、大丈夫……」


「もう日が落ちる。今日は探索はこの辺にしておこう」


 太陽は見えないし、時間の感覚もわからないので本当にそうかは分からないが、疲れているしその案に乗ることにした。


 魔術は使えないが、知識はある為、薬草やキノコを選別して食事の準備をする。

 私が火を起こし、クロウさんは苔や蔦を採取し、持っていた袋に入れると絞って水を得る。


「それで水とれるんだ」


「腹壊すぞwww」


「汚っwww」


 コメントは相変わらず民度が低い。脱水症状になるほうが大変なのをなんも分かってないのだ。こいつらは!

 心許ないが、なんとか食事を終え、今後の方針を立てる。


「私は魔力をとられて役立たずだ。ダンジョンを制覇したことは数え切れないから知識はあるが、足枷と思って欲しい」


「謙遜するな。十分だ」


 偶然とは言え命の恩人のせいか、大分私のことを過剰評価している。魔力0の魔女なんか役に立たないだろうに。


「ダンジョン配信みたいなのを神界の神と、魔界の王にやらされて魔力も盗られた。

この品のないコメントもそいつらの仲間のでしょう」


再びコメントが汚く荒れるが無視をする。


「私の魔力は6冊の禁書に閉じ込められている。それを集めるのが目的ね。期限は一年以内。飽きたらそれより早めに全種族を滅ぼすと言われたわ」


「なるほど、悪趣味だ。」


「同意見よ。クロウさんは?」


「俺は暗殺を生業にしている……。モンスターも多く殺してきた。それが気に食わなかった。

ドラゴンも殺し、罰として死神を10匹このダンジョンで殺したら許してやると言われたが8匹目の時点で、首を切断されて呪いをかけられた。」


「ドラゴン……死神殺せるの?」


「苦労したがな」


 ドラゴンを単身殺せるのは伝説レベル。死神を殺せるなんて人どころか神さえも知らない。

 そんな人を殺せるなんて、その死神も何者よ。


「ひとまず禁書を探そう」


「でも、死神は……」


「残り2匹倒れるかは不明瞭だ。呪いのことをあるし、制限がかかるかもしれない。

それなら、期限もあるアザラ様の方を進めた方がいいだろう。貴方なら俺よりも強いだろう。」


 流石に、死神を単騎で7体殺せる人に言われると素直にはいとは言えないわね……。

 最強とは言えなくなった今、大分自信がない。

 それにしてもアザラ様って……大分尊敬されているわね。まいったわ。


 交互に睡眠をとる約束をし、周囲に気を配りながら眠りにつく……。



 翌日、悪趣味な2人のことだから禁書は下層にあるだろうと考えて、下に降る。

 

 下へ


 下へ


 下へ



 どれぐらい降りただろうか。

 牢屋があり、1人の痩せ細った少年が捕えられていた。少年は本を抱き抱えている。

 その少年には首輪が繋がれていて、後ろには人間の体をし、牛の頭部を持ったモンスター、ミノタウロスが睨みつけている。


「この本には、お前の魔力が捉えられている。」


 ミノタウロスは私を指差す。


「そして、このガキの魂が入っている。こいつが本を手放すと死ぬ呪いをかけた。

俺は、このガキが死んでもなんにも困らない。だから……」


「ひっ!!」


「こいつを盾に出来る。

ガキの為に命を賭けるところを見せてくれよ」


 子供は泣き叫び本を抱きしめる。

 なんて酷い、なんて悪趣味。こんなこと許せない……!

 拳を握りしめ、皮膚から血が流れる。


「クロウさん」


「任せろ」


「ふ、無駄な作戦を立て……ど……する?」


 巨大の足、手が、半分になり、大きな音を立てて尻餅をつく。何があったのか分からないと言った具合で目を見開き、自分の切断された手足を見て絶叫する。


 手に持っていた子供を私はなんとかキャッチする。まぁ、運動神経なんかないから、手じゃなくて、背中でクッション代わりになったんだけど……。

 

 クロウさんは切断した手足を蹴り飛ばし、舌を切るように見せて、剣を当てる。


「呪いの解除方法を言え」


「だぁ、だぁれぇが言うか!」


「脅される認識が分かるぐらいの知性はあるだ?」


 そう告げ、眼球に剣を立てる。

 咄嗟に子供の眼を隠す。


「ぎゃあああああ!!」


 脳まで響く悲鳴に狼狽えながらも辺りを見回す。手足が動き元に戻ろうとしたので、持っていた火がついた棒で、足を焼く。再び悲鳴があるが今度は気にしない。

 肉の焼ける音、肉が裂ける音、大きな悲鳴に眩暈がしながら、自分のやるべきことをやる。


「アザラ様」


 名を呼ばれて向かう。どうやら聞き出せたようだ。


「子供の手にこのマークを書くそうだ。」


 空中で指を動かす。片手はミノタウロスの頬肉を切っている。仕事ができる人だ。


「いや、このマークは呪いの重ねがけのマークだから違うと思うわ」


「そうか、嘘をつく余裕があるのか」


 更なる暴行を加え、ようやく解除方法を聞き出し子供と、ミノタウロスは解放された。

 子供は怯えるどころか、ヒーローのようにクロウさんを見ている。

 教育に悪いが、助けてるから勘弁して欲しい。


 クロウさんのおかげで、感謝を手に入れる事が出来た。これで少しばかり魔力が戻るだろう。

 本を手渡された瞬間、またあのけたたましいファンファーレが鳴り響いた。


「おめでとう!まさかミノタウロスを倒すとは天晴れだ!晴れて魔力をほんの少し手に入れたな!!」


「では、褒美としてダンジョン配信のシステムを開示しよう!」


 ドラムを叩く音が鳴り響き、高らかに告げられる。


「アンチコメントの数の分だけ、お前に電流を流す!!

その数なんとー……1,000!」


「こりゃあ、悲惨!でも、視聴者を楽しませることが出来なかった自業自得だ!」


「じゃあ、死ね!」

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