0.彼女の独白
————結衣。
◇ ◇ ◇
——卒業記念に何かしようか。
そんな話がみんなのあいだで持ち上がったのは、中学2年に進級したばかりのころだった。
まだ気が早いと笑う人もいたけれど、3年の冬には必ずと約束したのが今ではとても懐かしい。
大切なものが手に届く位置にあって、わたしたちの関係はこれからも変わらず続いていくのだとばかり思っていた。
だけど実際に訪れた未来は夢見た情景とは程遠い、どうしようもなく虚しいものになってしまった。
あの楽しい日々を壊したのはわたし。大好きなあの子を遠ざけたのも——。
わたしが弱くて、周囲に流されて、大切な人を信じ切れずに、疑ってしまったから。
醜い感情をたくさんあの子にぶつけた。あの時のわたしは、自分のことしか考えていなかった。
子供じみた独占欲と嫉妬心は、あの子を失ってすぐに後悔と自責の念に変わった。
ぽっかりと空いたあの子の場所は、他の誰にもうめられない。
*
卒業記念にみんなで作ったシルバーのペンダントタグ。
それぞれのプレートの下部に名前と卒業式の日付が彫られ、中央はアクリル絵の具でわたしがみんなのイメージイラストを描いた。
絵の具が乾いた後に透明の樹脂でコーティングして、それは完成した。
卒業式から半年以上たった今でも、ペンダントはみんな身に着けているはず。
わたしの首にも、常に2つのプレートがかかっている。
ひとつはわたしのもの。
飛びかたを忘れて木に留まり続けるしかない、ちっぽけな白い鳥。
もうひとつは、黒猫のシルエットが書かれたプレート。
座っている猫は見方によって前を向いているようにも、後姿にも見える。
みんなの持つプレートに描いたイラストは、黒と白の絵の具しか使用しなかった。
話し合うまでもない、満場一致の選択。
理由は実に単純なこと。
——色彩が入るとわたしたちが遠くなる。
あなたがそう言うのなら、わたしたちはいくらでも色を捨てられる。
ねえ、結衣。
あなたは今、何をしていますか?
幸せですか?
こんな自分勝手なわたしなんて、嫌いでいいから。
でもどうか、あなたの幸せをわたしたちが見届けることを許してほしい。
そしてもし今のあなたが苦しんでいるのなら、陰からでもあなたが幸せになる手助けをさせて……。
……もし、あなたがわたしを許してくれるというのなら……、
ありったけのごめんねと大好きを伝えさせて——。
◇ ◇ ◇




