みんな!春風くんと一緒に帰ろうよ… (春風ver.)
僕は、南條 春風。
自分で言うのもなんだけど、可愛い顔した高校1年生。
春ちゃんって、呼んでもらえたら嬉しいな。
ただ今、友だちの冬馬くんと絶賛帰宅中〜。
友だちの北詰 冬馬くんは、とても強面な顔をしている。この強面な顔は生まれつきなのか、後からそうなったのかは分かんない。でも、ただの強面ではなくイケメンなんだ。しかも体格もいい、たぶん185cmはありそうだ。
羨ましいな〜、あと10cmくらい僕にくれないかしら。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
その強面イケメンの冬馬くんが、ずっと僕の歌を聴いている。聴いているのはいいんだけど、ものすごくガン見しながら聴いている。
僕がどうして歌いながら歩いているのか、疑問に思っているようだけど、今更それを聞くのが恥ずかしいのか、それとも他に理由があるからなのか?
まぁ…どっちでもいいや〜。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
これは、何の脈絡もなく歌っているわけではないのだよ。寧ろとても意味がある。代々、我が家に伝わる伝承の歌なんだ!
「るんらら…るんらら…」
鼻歌のように思われては困…
「るんらっら〜。」
間違えちゃったぁ〜。てへっ。
おや?冬馬くんが何か言いたげに、頭をボリボリかいてるぞ…何が言いたいのか、言ってみなさいな。
「春風くん、僕は以前から君のことを常々思っていることがあるんだけど…君は、トイプードルみたいだね。」
トイプードル?…それは僕がちっちゃくて可愛くて、くりくり天然パーマで可愛くて、顔が可愛いくてしょうがないから?そんなことを常々思っているなんて…
もしかして…愛の告白?
「冬馬くん。君は、シベリアンハスキーみたいだよ。」
それが僕の答えだよ……伝わったかな?
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
それにしても、今日もたくさん憑いて来てる。日課だから仕方がないんだけど、ちょっと見飽きてきた。
最近は、生きてる人も紛れてるし…
でも、歌うのを止めると、それはそれでめんどくさいんだよな〜。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
ん?冬馬くんが神妙な顔をして立ち止まった。強面な顔の眉間にシワを寄せて、般若のお面みたいな顔になって更に怖さが増している。
右手でゆっくりと何かを案内した?どうしたんだろう…
「冬馬くん、何してんの?」
「今日は、生きてる女子高校生が3人と、そうじゃない女子高校生が5人と、首のない鎧を着た人と、生きてる野良猫2匹だよ…春風くん。」
怖いことをサラッと言ってのけたけど…君の方がよっぽど怖いよ冬馬くん。でもこれでハッキリした事がある。
君は、『見える人』なんだね…
「へぇ〜。」
あらら…生きてる女子高校生3人が、真っ赤な顔して走り去っちゃったよ。君がお目当てだったのに…青春だね。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
冬馬くんが『見える人』ということは分かったけど『聴こえる人』では、なさそうだね。僕は両方あるから大変なんだ。とくに聴こえてしまうと、どうでもいい情報がたくさん頭に入ってきて、疲れちゃうんだもん。
そう…こんな風にね。
※生きてない女子高校生5人=ITN.JK 1~5(昭和〜令和)
※首のない鎧を着た人=首なし
ITN.JK 2 『ちょっと!何?あの男子、超ヤバいんだけど。あたしらのこと見えてんだ…ウケる。』
ITN.JK 3.4 『ヤバみ、ヤバみ〜。チョベリバ!』
ITN.JK 1 『完全に見えてますわ!』
ITN.JK 5 『そんなことより、このオッサン首ないとかエモいんだけど、どしたん?』
ITN.JK 3 『うわっ…マジか?キモッ』
ITN.JK 4 『エモいって何?…エロ?』
ITN.JK 1 『皆さんの言葉って、日本語ですの?』
首なし 『儂は武将なり。オッサン?…ではないぞ!』
ITN.JK 2 『ぷぷっ…オッサン、首ないのにしゃべってるとか…ウケんだけど。』
首なし 『以心伝心!』
ITN.JK 4 『意味わかんね〜し!』
ITN.JK 5 『カオス…乙。』
こんなんだから…聴こえない冬馬くんが羨ましい。
「んじゃっ冬馬くん、また明日ね〜。」
僕たちは、同じ高校の同級生で家もご近所だから、何となく一緒に帰ることが多くなった。
「うん。また明日ね。」
この郵便ポストのある十字路がそれぞれの分かれ道。この後、家に着くまでの間に色んな雑音が聴こえてくるから、ボリューム上げてかないとやってけない。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
あれ?電信柱の影に、めっちゃ美人なお姉さんがいる。
目が合ってしまった……やっぱり美人だ。
「るんらら…るんらら……るんるん。」
僕だって男だもん。テンション上がるさ!
よしっ、話しかけてみよう〜。
『お姉さん、こんな所でどうしたの?』
『私、あなたを待ってたの。聞きたいことがあって…』
『そうなんだ〜!何でも聞いて?』
『私………キレイ?』
口が裂けてる?!
口裂け女だ!!
あれって…都市伝説じゃなかったっけ?
でも本当にいるってことは、伝説じゃなくて存在していて、目の前にいて…
写メ撮れないかな?
う〜ん。…めんどくさいから、上がっても〜らお!
『口が裂けてたって…お姉さんは美人だよ!』
「……………………チュッ」
『ひゃぁぁぁあああ……………ありがとう。』
生まれ変わっても美人だったら、デートしようね!バイバイ。
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
ITN.JK 2 『ちょっと!何よあの女、春ちゃんも投げキッスとかありえないんだけど〜!』
ITN.JK 1 『そうですわ!こ…公然で、ハレンチですわ!私だって……』
ITN.JK 4 『そうだ、そうだぁ!ハレンチって何?』
ITN.JK 3 『ハレンチ?日本語?意味不〜。』
ITN.JK 5 『口裂け女…エモすぎんだろ。』
「ふんっっ…らら…
『ねぇ君たち、うるさいんだけど…』
ITN.JK 4 『あ?逆ギレすんなし…』
「るんらら…」
『お行儀よく出来ないんだったら…』
ITN.JK 3 『ハレンチ…春レンチ。投げキッス〜。意味不。』
首なし 『何が何やら…全く見えぬ。』
「…るんばだ〜。」
『ママンのおしおき、ルンバだからね!』
ITN.JK 2 『ランバダ?』
ITN.JK 1 『私。ダンスは得意ですわ!』
ITN.JK 5 『いや…普通に掃除機で吸い取られんじゃね? …エグッ』
ITN.JK 3 『ヤバみ〜。』
「るんらら…るんらら…るんらら〜。」
やっと静かになった。女子が多めだと、こうなるのが嫌なんだ。集団になると強気になっちゃうやつ?それはいつの時代も同じってことなんだね。
それにしても、さっきから冬馬くんは何をしたいんだろ。郵便ポストに隠れたかと思いきや、思いっきりお尻がはみ出てるし。かと思えば、僕が口裂け女とは知らずに、ナンパしていたところを堂々とガン見してるし。
隠れた振りをしながら、尾行してるのかな?尾行してるとして、その理由は何だろ?やっぱり…僕のことが可愛くて気になって、僕の全てを知りたくてしょうがないから?
もしかして…告白されちゃうのかな?
どうしよう…ドキドキしてきた〜。
「るんらら…るんたら…たらいま〜。」
動揺して、家の外でたらいま言っちゃった。
さあ…手っ取り早く、終わらせちゃお。
「みなさん…道中、おつかれさまでした〜。」
パチパチパチパチパチパチッ…
パチパチパチパチパチパチッ…
ITN.JK 1.2 『お疲れ様でした。お疲れちゃん。』
ITN.JK3.4 『おっつ〜。あざーす!』
ITN.JK 5 『乙。』
パチパチパチパチパチパチッ…
パチパチパチパチパチパチッ…
『拍手ありがとうございます。では、順番に生まれ変わったら、どうしたいかを笑顔でお答えくださ〜い。そしたら、上がれます!』
ITN.JK 2 『あ〜ちょっと待ってっ!首なしがさっきから様子おかしんだけど、どしたん?』
首なし 『儂の首…間に合わんかもしんない。こっちに向かってるんじゃけど、恨みすぎて重いのよ。』
ITN.JK 4 『どんくらい恨んでたん?』
首なし 『大永3年からじゃから…ざっと500年ほどかの〜。』
ITN.JK 3 『激ヤバ!恨み節。』
ITN.JK 5 『鬼あつ!』
ITN.JK 1 『ごめんなさい…私、モゾモゾしてきたから、そろそろみたい。』
首なし 『おーっ儂に構わず行って、行って〜。達者でな!』
『じゃっ、1番から順番にお願いしま〜す。』
ITN.JK 1 『は〜い。私は、生まれ変わったら 長生きします!皆さん、来世で文通しましょ…さようなら〜。』
ITN.JK 2 『…マジメかよ。あたしも行くわ!生まれ変わったら、アイドルになりた〜い!サインの練習しとくわ!バーイ!』
ITN.JK 3 『生まれ変わったら、子だくさんになる!ラリホ〜。』
ITN.JK 4 『ぶっちゃけ!生まれ変わってもギャルやりたいしっ。そんでよくね?チョベリグ!』
ITN.JK 5 『異世界に転生して、チート魔法美少女になって、エルフと獣人と色々とイチャイチャして、最終的にイケてる魔王と戦って結婚する。そんなベタな展開を網羅したいいぃぃぃ…乙。』
『は〜い。お疲れさま!』
首なし 『春風殿…ちと、宜しいか。 儂の首、もう間もなく到着するらしいんだがの…誘導してもらえないだろうか。』
『おっけ〜。そしたら、キャッチできるように腕を上げててくれる?』
首なし 『かたじけない。こんな感じかの?…おっとっと…鎧が重くて…よろけてしまうわい…』
『首!こっち、こっちぃ〜。』
ボフッ
「…痛ってぇ!!」
首 『あれっ?さっきまで一緒にいた男?ごめんね。でも、儂もびっくり仰天よ。』
「ひぃっ…く…首っ!」
首 『むう!こ、この男怖い顔しとる。もしや、儂の行く手を阻む新手の敵か?』
「あっ冬馬くん!…早く首、投げて〜。」
首 『あっ、こらっ!手荒くするでない!』
「えいっ!」
首 『こらこらこらっ…こ、怖っ!』
『首なし〜、もうちょっと右に行って!』
…………………ポフッ
「ナイス…キャッチ!」
武将 『春風殿、色々と世話になった。ありがとう。』
『いえいえ。そんな大した事してないから、気にしないでね。さぁ、早くしないと上がれなくなっちゃうよ?急いで!』
武将 『有無!生まれ変わったら…MMORPGで無双するのが夢じゃ!今度こそ天下取るでな!ガハハハハ…さらばじゃ!』
『は〜い。頑張ってね!』
MMOを知ってるってことは、たまたま恨んでる人の末裔が遊んでたのかな?それで『恨み』が薄まることがあるんだね。ともあれ、生まれ変わった時のやる気に繋がることが重要なんだ。みんな頑張れ!
おや?何やら熱くて怖い視線を感じる……
「すごいよ!春風くんは…これをいつもしているの?」
うわ〜、冬馬くんの目がキラッキラッしてる。そうだよね…全部見ちゃったもんね。それはそうと、尾行していた理由を聞かなきゃかな〜。
「うん。それよりも冬馬くん!尾行してたね?」
「尾行してごめんね。どの辺から気がついてた?」
単純に僕のことが可愛くて気になって、僕の全てを知りたくてしょうがないから、尾行してたのか…
「別に怒ってないけど…郵便ポストに隠れた振りをしてたところから。」
それとも、僕のことを好きすぎるあまり…告白したくなって尾行して、あわよくば禁断のBL世界に誘おうとしているのか……どっちだ?
…冬馬くんが意を決したような表情になった。
口元がプルプルしてる。
目元がヒクヒクしてる。
鼻息がフガフガすごい。
強面の顔全体が更に怖すぎて、逆に可愛く見えてきた。
「春風くん!」
いよいよ告白タイムだ…
ドキドキ…ドキドキ…ドキドキ…ドキドキ…
「一緒に日本列島…『るんらら』昇天、行脚の旅に出ませんか?」
えええええええええぇぇぇぇ………???
思ってたのと違〜う。
日本列島を2人で行脚…って、修行僧じゃあるまいし!
「嫌です!」
もう…肩透かしだよ〜。僕のドキドキを返して欲しい。日本列島『るんらら』昇天、行脚の旅だなんて…
あれ?もしかしたら、ある意味BLっぽいかも…?
るんらら…るんらら……るんるん。




