なんでこんな時に(リン視点)
正直、ジズがこんなところにいるなんて思ってもいなかった。
確かに、あいつも防衛省の特殊部隊「シックス・ウイング」所属の戦士。精鋭中の精鋭だ。反重力ブーツを使った実践的模擬戦闘訓練は何度もやったし、体捌きの訓練としてこういう一般の試合だって何度も出たことはある。
でも……まさか。今日、ここであいつが試合をやる予定だったなんて。
しかも、表の世界の公式チームに所属しているなんて。
お前、裏世界の戦士だろ! だから私だって足を洗ったんだ。単に腕試しのつもりだったのに全日本一位にまでなって顔が売れちゃったから、あの温厚なリュークさんに死ぬほど怒られちゃったんだよ!
なのに、いまだにこんなところで堂々と試合やってるなんて馬鹿か。いい加減大人になれっつーの、何歳だお前。
くそ。夕真とデートできる貴重な時間を、こんなクソ野郎に奪われるなんて思ってもいなかった。
しかも、試合を受けなきゃ夕真を殺すだって!?
調子に乗りやがって……!
この程度の死合、葵との勝負に比べたら屁みたいなものだ。
私に勝てる気でいるのか? お前が、銃撃戦で一回でも私に勝ったことがあったか?
なんでもありの戦闘をやればあの頃は確かにお前が僅かに優勢だったが、こと体捌きと銃撃に関しては十代前半の私のほうが既に上だっただろうが。
お前の特技は槍だ。対して私も得意技は剣。だけど、私は銃撃も得意なんだよ。
忘れたか? 私のパワーチャンネル・アビリティ「アズール・ショット」を躱せず被弾しまくって何度手術した? やっぱあのとき手加減せずに頭に当てとけばよかったな。訓練中なら事故で処理できたのに。
エネルギー弾の撃ち合いで一度でも私に勝てなかったお前が、今さらどうしようっての?
それに、仮にお前が夕真を狙ったとしても、お前なんかに殺させやしない。
パワーチャンネルでもなんでも使って絶対に叩き潰してやるからな。お父さん譲りのエクストラスキル、一撃必殺のデッドストライクをお前程度が打ち破ることなんてあり得ない。
そんなことより、私が恐れているのは葵。
この試合をする間、私は夕真のそばを離れなければならない。
目を覚ました危険極まりない葵のそばに、夕真を残して。なぜかわからないが、弟・晴翔は彼氏のくせに葵が夕真に近づくのをあまり止めようとしないように見えるんだ。
私は、葵に視線を馳せる。
私のことをじっと見つめる葵は、僅かに口角を上げたように見えた。
──ダメだ! 嫌な予感がする……。
速攻でカタをつけないと、致命傷になり得る!
「さあ──っ、飛び入りの元全日本一位選手、しかもとんでもなく可ぁ愛いぃ──っっ!! 最高の特別ゲストが加わり、俄然盛り上がってまいりましたっ!」
わあああ、と歓声が上がる。会場の上空には幾つものドローンが配置されて、実況の準備は整っていた。




