1話:今日もその夢で目が覚める
「はあ・・・はあ・・・・・・・・・・またか・・・」
目が覚めると汗でシーツがぐっしょり濡れていた。
あーあ。昨日洗ったばかりなのに・・・ったく
もう何日目だ?ここ最近ずっとこんなことが続いている。
毎晩毎晩、同じような夢にうなされ目を覚ますのだ。
「・・・どんな夢だっけ・・・」
思い出せるのはそう、なにか「とてつもなく恐ろしいモノ」から逃げ回っていた・・・というような、そんな漠然とした感覚だけ。
それ以外は・・・全然ダメだ。スモークがかかったようにまるで映像がはっきりしない。
・・・・いや、待てよ。
なにか思い出せそうだ・・・
そうだ・・・夢の中でオレはたしか・・・
・・・・・・・・・・・・・
素っ裸だった・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
気がする・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「プッ」
なんて突拍子もない。
途端にバカバカしく思えてきた。まあ所詮は・・・ただの夢なのだ。
カーテンを開けると強い西日が部屋に飛び込んできた。途端にさっきまでわずかに残っていた夢の記憶もきれいさっぱりかき消えていく。
「さあ!仕事に行くか!」
オレはベッドから出るとまずシャワーを浴び、それから朝食を作った。
朝食はだいたいいつも同じ。冷凍もののワッフル、スクランブルエッグ、それにコーヒー。朝食なんてのはこれくらい簡単なものが一番いいのだ。まあコーヒーにだけは少しこだわっているんだけどね。
食器を手早く荒うと、ささっと身支度を整え、そしてクローゼットの扉を勢いよく開いた。
そこには色とりどりのスーツが規則正しく等間隔に並んでいる。
「さて、今日はどれにしよう」ここでいつも迷う。
スーツの色なんてホントはどうだっていいのだが、どうしてもなにか納得する決め手が欲しくなる。
「・・・そうだ」
オレは先日顧客から受け取った写真を机の引き出しから取り出した。
写真には紺のスーツでビシッと決めた強面の男が写っていた。
オレはこの男の着ているものと似た色のスーツを手に取った。
「まあこれでいいか」
スーツを身に着け、その色に合った靴を履き、そのまま部屋を出ようとドアノブを回したところで気がついた。
「おっと・・・あぶない。一番大事なモノを忘れるとこだった」
寝室に戻るとスーツケースはいつも通りベッドの脇に置いてあった。
「オレとしたことがどうしたんだ?仕事道具を忘れるなんて」やっぱり夢のことが気にかかって
るのか・・・な?
オレはスーツケースを開けて中身を確認した。
そこには分解されたスナイパーライフルM16がきちんと収納されていた。
「・・・よし」
オレは一度深呼吸して落ち着きを取り戻すと、勢いよく扉を開けて部屋を出た。
そして標的の元へと向かった。