表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/85

ネコを恐れ敬え

 これは、ある牧師が見た夢の内容である。あまりのも荒唐無稽過ぎて、やっぱり自分が信じている神様を恐れて敬っている方が良いと思ってしまった。


 突然、飼い猫のクロ子が、自分が神だと言い始めた。人間の言葉を話すのもおかしいが、一体どういう事だ?


 牧師館の隣にある礼拝堂から音がする。すると、近隣住民が集まり、礼拝堂を壊しているではないか。


「ちょ、皆さん。何をしてるんですか?」


 私が止めても無視された。


 なぜかこの世は、全ての宗教が廃止され、猫が神になっていた。キリスト教の礼拝堂も異端・カルトなので壊しても全く罪に問われない法律もできているらしかった。


「は? どういう事?」


 全く意味がわからないが、クロ子が牧師館から出てくると、住民達は「猫様〜!」と言って擦り寄り始めた。中にはひれ伏し、クロ子を拝んでいる者もいる。泣いて歌まで歌っている者いた。その歌は讃美歌ではなく、聞いた事もないものだったが、歌詞は「猫を崇めろ、恐れ、敬え」と繰り返されていた。


 確かに猫は可愛い。


 モフモフボディと大きくて可愛い目。パンみたいな肉球、鈴が鳴るような鳴き声。ツンとしたお耳。しかし、神様みたいに敬うのは???


 私の戸惑いなどを無視し、クロ子は大勢に崇められ、実に満足気な顔をしていた。


『高級猫缶をもってきなさい!命令だにゃん!』


 偉そうに顎を上げ、命令までしていた。


 いや、本当の神様はこんな命令しないから!


 私のツッコミは追いつかないが、住民達は高級猫缶を与え、だれが1番貢いだが競い合っていた。


 こんな現象は、自分の周りかと思ったが、世界的に猫が神様になっているようだった。


 どの猫が1番神なのか人々が争い、毎日のように戦争のニュースを聞いた。国という概念もなくなり、三毛猫派、黒猫派、白猫派など猫の種類で別れるようにもなった。日本も三つに分割され、どの猫が1番なのか血生臭い戦いが絶えなくなっていた。既存宗教はもちろん、カルトも全部崩壊していた。むしろ今は世界規模で一つのカルトにハマっている状況だった。カルトなんて口が裂けても言えないが。


 なぜか私以外の人間は、全員猫を恐れ、崇めていた。狂信的に猫を愛していた。私のような「猫は普通に可愛い派」も「猫は苦手派」も消えていた。なお、猫アレルギー持ちの人間は、厳しい迫害を受け、踏み絵を踏まされ、殺されていた。


 私も猫ではなく、キリスト教の神様を信じていると言ったら、強制連行されそうになった。必死に逃げるが、なぜかクロ子に「猫を恐れ、敬え!」と追いかけられた。


「もう、勘弁してくれよ。神様、助けて」


 そう言った瞬間だった。


 目が覚めた。


 いつもの牧師館の自室のベッドで寝ていたようだ。クロ子も専用のベッドで寝てる。


「おぉ、夢だったか……」


 まだ心臓はドキドキ動いていた。


 まあ、猫は普通に可愛い存在でいい。可愛いだけで十分だ。


 もし神になったら、どの猫が一番可愛いのか揉めるだろうから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ