幸せな眠り
10月31日。世間はハロウィンで盛り上がっていたが、渡辺悠真は楽しくない。
クラスメイト達で集まり、ゾンビや魔術師のコスプレをしていたが、なんだか微熱のような怠さもする。それに仲間達は、妙に悪ノリし、町外れにある廃墟に行こうという。
そこは空き家になった民家や店が集まっている地区だ。過疎化が進んだ田舎では、珍しくない場所だが、人気がなく昼間でも悪い雰囲気がする。今は夜の7時過ぎ。深夜でもないが、肝試しをすると盛り上がる。
悠真は気が進まないながらも、雰囲気にのまれ、断れない。
ゾンビや魔術師のコスプレをした悠真達が、人気のない民家や店が集まる区域にはいる。
「きゃあああ」
暗闇でよく見えないが、仲間の一人が怖がり、泡を拭きながら逃げていく。それがきっかけで、仲間は散り散りになり、悠真は一人になり暗闇で迷子になった。
「やっべ、どうしよう」
さらに身体がゾクゾクとしてきた。携帯のライトをつけようと思ったが、頭が混乱し、身体も上手く動かない。
「だれか、助けて」
情け無い声しか出てこない。
そこに目の前にふわふわとした光が見えた。なぜか発光している白い猫一匹。毛並みはモフモフで、ミントグリーンの目がファンタジーのネコみたいで現実感がない。
『今日は夜に彷徨かない方がいい』
なぜかネコが話していたが、今の状況は、科学で証明できな事も受け入れていた。可愛い声で少しホッともする。
悠真は涙目でコクコクと頷く。
『今日は現実と魔が曖昧になりやすい。キリストが嫌いな人達が変な儀式とかやってるし、あなたのそのゾンビコスプレも、魔に仲間だと思われる』
「わーもう、なんでもいいから、助けてくれ。ここはどこ?」
『わかったわ。私についてきて』
不思議なネコに案内されながら、暗闇を歩く。恐怖で身体は震えていたが、目に前に光があるので、息はゆっくり吐けるようになっていた。
こうして数分歩いたところ、駅前につき、仲間達とも合流できた。
「まって!」
あの不思議なネコを追いかけようかと思ったが、さっと消えてしまった。
「悠真、どした?」
「いや、俺、もう帰るわ」
なんだか今日は、あまり良い予感がしない。さっさと帰り、コスプレを脱ぎ捨て、風呂に入り、すぐに寝た。
以来、あのネコを探していたが、一度も会う事はなかった。
ちょうど一年の月日が流れていた。
代わりに近所のキリスト看板というのを見つけた。よく田舎にあるホラー風の看板で、聖書のメッセージを書いてあるものだが、なんだか妙に気になる。
私は世の光 イエス・キリスト
そう書いてあった。あのネコと何か関係あるだろうか。わからないが、あのネコにまた会えたら、聞いてみたい気もする。
とりあえず、今日はハロウィンだが、外出せず、家にいよう。さっさと寝よう。ふかふかの布団で眠るのも楽しそうではないか。
きっと良い夢を見られる気がする。
悠真は目を閉じ、幸せな眠りに落ちていた。




