さるすべり
蝉の声の中につくつくほうしが
混じってくるようになりました
もうすぐ夏も終わりです
それでもまだ見渡すと
さるすべりが花をつけています
気づいてみると本当に
あちこちの庭や街路樹として
さるすべりの木が植えられてます
かつて縁起が悪いとされたこともありますが
今ではすっかり人気の庭木のようです
百日紅とも書かれるさるすべり
夏になると花をつけ
百日にもわたって咲き続けます
濃い赤や紫や白と色とりどり
でもやはり紅色が一番落ち着きます
枝を取り巻くような豊かな花
遠目では小さな花が沢山
ついているようにも見えますが
実はそれらはフリンジに富む
個々の花弁だったりするのです
花軸と細い糸のように繋がった
六枚の花弁は広がって
個々に揺れたりもするのです
実はさるすべりの花は
思ったより大きかったりします
花の大きさが大きい分
実際に咲いている花の数は
案外と少ないのです
そして木の下を見てみると
散った花弁が沢山落ちています
さるすべりが百日咲くと言っても
けして一つの花が長持ちを
しているわけではありません
「ちってさき ちってさきして」
代わりばんこに咲いているのです
受粉してしまったら後は
花弁なんて無用の長物
早めに散らして次の花を
咲かせるというのが
さるすべりのありかたで
私たちは今咲いている花を見て
ああまださるすべりが咲いている
咲き続けている
夏がまだ続いているのだな
とそう思うのです
咲いている花の根元には
すでにたくさんの実りが
熟す日を待っています
そして咲いている花の数も
段々と少なくなってきます
もうすぐ夏が終わります
さるすべりの花も終わります
そして秋には熟した実が
新しい命を紡ぐのか
それは誰にも判りませんが
本当は夏の始まりの頃に書き始めていたのですが、なかなかまとまらずに夏の終わりになってしまいました。
途中の引用は、「散れば咲き 散れば咲きして 百日紅」加賀千代女の句だそうです。「朝顔や(に) つるべとられて もらひ水」の人です。