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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【短編】まとめ

私は脅迫されております!

いつもお読みいただきありがとうございます!

唐突に思いついてしまった短編です。

頭を空っぽにしてお読みください。

こんにちは! 今日もいい天気です!

太陽が眩しいですねぇ、えぇ。洗濯物がよく乾きそうです。あ、ちなみに私は今、脅されております。


「ワタシが王子様の寵愛を受けているの。ワタシに付いた方がいいのは分かるわよね?」


この人、寵愛って言葉を知ってたんだぁ、とちょっと私は感動しております。

最近、王子殿下がデレデレ……じゃない、側に侍らかしまくっていて調子に乗っているこのピンク頭の男爵令嬢。とうとう何かを仕掛けるようですね。

ちなみに脅されているのは私の他に二人。このお二人は男爵令嬢さんと子爵令嬢さんです。私は貧乏伯爵家の令嬢です。貧乏です。大事なことなので二回言います。


「何も難しいことを頼んでるんじゃないわ。ワタシがあのアンネット様から虐められてたとかぁ、教科書破かれてたとかぁ、足引っかけられてたとかちょぉっと証言してくれればいいのよ。あ、やっぱり階段から突き落とされたのも要るわねぇ」


うわぁ、つまんないテンプレ。あと絶妙に人の神経を逆なでする話し方。


アンネット様というのは王子様の婚約者のお名前です。このピンク頭、一応アンネット様に「様」を付けるだけの分別はあるんですね。

わざわざ人気(ひとけ)がなく、音が漏れにくい音楽室まで呼び出して脅迫するのもなかなかですね。可哀想に、他のお二人は震えています。

え、私は特に。借金の取り立てに来た柄の悪い男性達の方がこのピンク頭の一万倍怖かったです。


「どの場で証言するのですか?」


質問する私に他の二人は怪物でも見るような目を向けてきます。


「決まってるでしょう、卒業パーティーよぉ」


はぁ、そんな場を乱そうなどと……今年の卒業生たちに謝ってほしい。私たちは見送る側であって卒業する側ではないのです。


「ふむ……裏を取られたら困りますので、詳しい証言内容を頂けますか? いつ、どこでどのようにいじめられたかです」


「多少の粗なんて王子様が揉み消してくれるわよぉ。ちょっとした嘘なんだしぃ」


アンネット様がこのピンク頭を虐めてるってすでにウワサになってるけど、まぁ嘘ですよね。脅迫する人間が大人しく虐められるわけないですし。ちょっとした嘘って結局嘘ですし。


「いえ、証言が食い違うのはよくありませんから。念には念を入れて。それにセンセーショナルな証言があった方が場も盛り上がるでしょう。また、証言したら私達には何かおこぼれを頂けるんでしょうか?」


「ふーん……確かに言われてみればそうねぇ。やるなら派手な方がいいわね。ワタシはいずれ王妃になるんだから便宜を図ってあげるわよ。断るならあなた達の家との取引やめてもいいしぃ。王子様に頼んでお家を潰しちゃってもいいしぃ」


お、だんだん素が出てきましたね。ま、うちとは取引ないですけど。他のお二人は取引があるようで青い顔をしていらっしゃいます。可哀想に。


うちの伯爵家は潰そうとしなくても災害復興のための借金で潰れかけです。特に脅しになっていません。あぁ、うちの領地でドカンと温泉出ないかしら。あとはこのピンク頭が首にしてるピンクダイヤモンドが採掘されるとかないかしら。そうしたら借金なくなるんじゃないかな。


「では、こちらに証言内容をお書きくださいませ。本番までにしっかり覚えます。登場するタイミングなども合図をよろしくお願い致します」


ノートを破って差し出すと「気が利くじゃない」とか「まずは足を引っかけられたことからよね」などとブツブツ言いながら書いてくれる。この人がアホで良かった。もちろん褒めています。


書き終わって上機嫌でスキップしながらピンク頭は帰って行ったけど、字が汚すぎて解読が大変だ。他の二人も泣きそう。

私の知ったことではないので、会釈をしてさっさと音楽室を出る。何か声をかけられた気がしなくもないが、こちらは奨学金で学園に通っている身なのだ。さっさと勉強に戻らなければ。テスト順位が15位から落ちれば学費は自腹だ。


図書室に向かう途中に生徒会室がある。私は迷うことなく生徒会室の扉をノックした。


***


「こちらが証拠になります。では」


「おい、待て。いきなり紙を渡してきてどういうつもりだ?」


この人はピンク頭が一緒にいる王子よりもよほど王子らしい風貌だ。ちょっと前の代に王女が降嫁されて王家の血も入ってるものね。正真正銘のボンボン。王子もボンボンだけど。羨ましい。


生徒会室で眉間にシワを寄せながら仕事をしていたユージーン・オールドリッチ公爵令息にそそくさと証拠を押し付けて退散しようとしたが、失敗した。


「ピンク頭を断罪できる証拠であります」


ユージーン様は黙って紙を見つめる。


「汚い字だが……ご丁寧にあのピンク頭のサインまであるな」


頑張って焚きつけてサインまでさせたんですよ。これなら立派な証拠ですからね。


「はい。というわけで彼女は煮るなり焼くなり好きにしてくださいませ。私は関係も興味もないので勉強に戻ります」


「おい、待て。面識もほとんどないお前からこんなものをいきなり渡されてどうしろと言うんだ」


「オールドリッチ公爵家は影を統率する一族だとおじい様がお酒に酔った時に喋っていましたので。この証拠があればいろいろやりやすいかと邪推しました」


「はぁ……お前はピンク頭から証言を頼まれたんじゃないのか」


「あ、やっぱりどなたかに見張らせていらっしゃったのですね。うちはご存知の通り貧乏なので没落なんて今更どうってことはないのですが、慰謝料なんかは困るんですよ。ノーモア借金!」


「すまない、話が全く見えないのだが」


「えぇ! だってこのまま証言したら虚偽の証言をしたことになるではないですか! アンネット様のお家、公爵家なんですよ? そんな方に喧嘩売ったら後から慰謝料払えとか謝罪の誠意を見せろ(結局は金を出せ)とか言われるじゃないですか。王家にも虚偽の発言をしちゃうことになりますし。これ以上借金額が増えたらうちももう首をくくるしかないですよ」


「そこまで分かっていてなぜこんな紙を書かすまでに至るんだ?」


「お金を請求されないためです。全ては借金を増やさないためなのです。証拠は渡しましたから、私は無罪放免にしてくださいね。脅されただけですし!」


「いや、まぁ……その分かった。お前の家はあれに便宜を図ってもらわなくていいのか?」


ノーモア借金の強い意志が伝わったのか、ユージーン様は気圧された様に頷いた。


「何年後になるか分からない便宜よりも明日のご飯の方が大事です。証言したら借金全部払ってあげるって言われたら考えましたが。あ、でもあの方が王妃になったら国が潰れるでしょうから……そうなったら借金なんて関係なくなりますかね。私はあまりあの方好きではないので、個人的な意趣返しです。はぁぁピンクダイヤモンド、あれ売ったらいくらになるんだろう……いいなぁ……ジャガイモ何個分かしら、いや何年分のジャガイモになるのかしら」


うっかり漏れた私の本音にユージーン様は引いている。


「あれが王妃になったら重税を課すだろうから、結局借金が増えて首をくくる羽目になるんじゃないか?」


「う……そうでした。あ、もうこんな時間! ま、とにかく証拠は渡しましたので! では、これで!」


私の名前は紙には書かれていないので、私にこれ以上火の粉(さらなる借金)が降りかかることはないだろう。良かった。

私は知らなかった。自分で言うのもなんだが私が嵐のように去った後、ユージーン様が珍しく笑っていたことを。


そしてピンク頭の件が片付くと、私はなぜかユージーン様から付きまとわれたり、借金を完済してやるから婚約しろと脅迫されたりするようになるのだった。どうしてこうなった?


【書籍情報】

第9回ネット小説大賞で金賞を受賞した小説が2022年2月14日に書籍化されました!

「憧れの公爵令嬢と王子に溺愛されています⁉婚約者に裏切られた傷心令嬢は困惑中」

(旧題:たとえその目が再び私を映しても)


ラブコメディです。この小説もコメディによく走っております。イラストは鳥飼やすゆき先生に担当して頂きました!


特設サイト↓ WEB限定SSが読めます!

https://www.cg-con.com/novel/publication/09_treasure/02_dekiai/


紙の書籍と電子書籍が好評発売中です。こちらも良ければどうぞよろしくお願いいたします。

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