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いざ異世界へ_2

僕が望んだ最初の願い、それは異世界、しかも周囲に人が住んでいないような山奥に転移することだった。

家や会社から離れられれば、というより親や社員どもから離れることができれば何でも良かったが、せっかくの機会なんだから異世界を選ぶだろ。ラノベの聖地だぞ。

と訳のわからないことを考えつつ、テンションが上がっていた。

だが、少し落ち着け。まずはここが本当に異世界かどうかを確かめなければ。ラフターラが本当に異世界に飛ばしてくれたかはわからん。

僕の知識がない、地球の裏側みたいな異国に飛ばされただけの可能性もある。そうなると非常に困る。

だが、確認しようにも、周りに人はおらず、家もない。

誰か見つければ、特に人間以外の種族を見つければ早いのだが。

探したいのは山々だが、周囲の危険性がわからない状態では迂闊に動けないのでやめておこう。

異世界生活は始まったばかり。これからいくらでもチャンスはあるさ。

そう言いながら、僕は目の前の一軒家を眺めていた。


叶えてもらった2つ目の願いは、住環境の提供だった。

これについては、かなり細かく設定させてもらえた。

最初はただ家が欲しいと話したが、ダメ元でライフラインや家具家電がある状態で用意してくれないかと頼むと「対価(じゅみょう)を50年分もくれたからには、それくらいサービスしてやるか」とOKしてくれた。

ちなみに、ライフラインには地球と繋がっているWi-Fiも入れてくれるとのことなので、感激して泣きそうになった。

用意してもらった家を確認するため中に入ると、頭の中で描いていた理想の家具が並んでいるじゃないか。

もしかして、頭の中を読み取って用意してくれたのだろうか。

僕はまた涙腺が緩みそうになる。

いや、まずは確認を終わらせなければ。

家は2階建てで、1階は広いリビング・ダイニング。2階はそれが無い分、個室がいくつもあった。

ここまで部屋があるなら、1部屋は漫画やラノベを保管する書庫にしよう。本が好きな僕にとって、自分だけの書庫が持てるというのは夢のようだった。

家の中を一通り確認し、自分の要望が反映されていることがわかり、ここが異世界であるということにも納得した。

最初はこの目で確かめなければと思っていたが、ここまでしてくれているのに異世界ではないなどあり得ないだろう。

僕は安堵のため息をついた。


3つ目の願いは、無限のお金をもらうこと。

大量の札束でももらえるのかと思っていたが、リビングのテーブルの上に1つの財布とクレジットカードがあった。

クレジットカードの横には

『更新不要、金額無制限』

と一言だけメモ書きが添えられている。

そうか、無限とはこういうことか。

嬉しいが、この世界で買い物するときにクレジットカードが使えるのだろうか。

財布は中に入るだけのお金しかないだろうし。

少し不安になりつつ財布を開くと、そこには異空間が広がっていた。

…………え?

もしかして、好きなだけお金を取り出せる、とか?

恐る恐る手を入れてみる。

イメージしたのは100万円の束。

そこそこ高額かつイメージしやすいものがそれだったからだ。

すると、手には紙の束に触れる感覚があった。

まさかと思い、その束を掴んだまま財布から手を引き抜く。

すると予想通り、手には100万円の束があった。

すげえ、この財布の力は本物だ!

でも、これは日本円。この世界のお金じゃない。

この世界のお金をイメージできないけど、取り出せるのか?

再び手を突っ込むと、貨幣のようなものを掴んだ。

引き抜くと、金貨が十数枚握られていた。

なるほど、これがこの世界のお金か。

納得すると同時に、これで心配事がなくなり一安心する。


4つ目の願いは、元の世界から買い物ができるようにしてもらうこと。

お金もあるし、これさえあれば、好きなだけ漫画ラノベアニメゲーム課金し放題!!!

QOLの上限突破を確信した僕は、異様なテンションになっていた。

まずは試しに買い物だ。さっき見たクレジットカードを使い、通販サイトを立ち上げる。

記念すべき最初の買い物に選んだのは、憎き父親に捨てられたラノベの全巻セットだった。

早速注文してみると、注文と同時に足元に大きな段ボールが出現した。

「は?」

思わず声に出してしまった。

段ボールを開くと、しっかり全巻セットが入っている。

これは、魔法的な何かだろうか。凄すぎる。

「ん、なんだこれ?」

本の下に、1枚の手紙が隠れていたことに気づき、読んでみる。


『ヤマトへ

異世界はどうだ?

地球から買い物できるようにというのは面白い願いだな。

サービスで、買ったものがすぐ届くようにしてやったぞ。感謝したまえ。

ラフターラより』


おいおい、神対応かよ。

『一生ラフターラ様に忠誠を誓います』とか言いそうになるレベルだ。

どうしよう、僕死ぬの? そういや寿命あげたんだった。

……変なテンションも落ち着いてきた。

ラフターラへの感謝の気持ちを抱きつつ、手紙と本を片付けた。


5つ目の願いは……その時のお楽しみにしておこう。

そもそも限定条件下でのお願いで、現時点では確認のしようがないからな。


これで自分の願いを確認し終えた。

これからは夢の異世界生活だ!

今まで読んできたラノベだと、自分のスキルを使って商売したり、レベルアップのために敵と戦ったりしてたけど、僕はそんなことに興味はない!

その証拠に、魔法などの戦闘スキルは願いに含んでいない。

今日からは夢の引きこもり生活だ! 自宅を警備しなければ!

僕はこれ以上ないくらいはしゃいでいた。

だって、全てから解放されて自由な一人暮らしを手に入れたのだから。

寿命を50年支払ったから56歳までしか生きられなくなったけど、痛くも痒くもないね。

苦しい100年より、楽しい50年を選んだ。ただそれだけだ。

では、早速……!

僕は自分のための家を完成させるべく、通販サイトの漫画アニメゲームラノベを片っ端からカートに入れていった。


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