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話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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81/86

81・婚約破棄された令嬢が幸せになるまで

 そして時が過ぎるのは早いもので。

 とうとう私たちの結婚式本番となった。



「本当にジョレットでよかったのか?」



 アシュトンが私にそう問いかける。


 彼は黒のタキシード姿。

 ここまできっちりした装いのアシュトンは初めてだったので、なんだか新鮮。

 こうして見つめられるだけでも、胸のところがキュンってするわ。


「ええ──だってジョレットは私たちにとって、大事な場所なんだもん。それにこれからも、ここに住み続けるんだから、他の人にも見てもらわなくちゃダメでしょ?」

「それはそうだ」


 とアシュトンが快活に笑う。


 王都とジョレット──どちらで結婚式を開くのかは、アシュトンと話し合って決めた。

 頻繁に忘れるけど、アシュトンって第七王子なんだからね。普通なら王宮で煌びやかなパーティーが行われるだろう。


 だけど彼はそれを選ばなかった。

 ジョレットの小さな教会で、結婚式を挙げることにしたのだ。


 私も実家がある王都で……と少しは考えたけど、アシュトンがこっちでしたいって言うから仕方ないわよね。

 お父様も馬車を乗り継いでここにやってきてくれる。街には前日に着いてたみたいだけど──もう式場で待っているのかしら?


「とうとうこの日がきたな」

「ほんとね」


 結婚式の開始はもうすぐ。

 私たちは教会の控室で、今までのことを思い出していた。



 ──初めは乗り気じゃなかった。


 だって、レオナルトに酷い振られ方をして、実家でくつろいでいたら次は第七王子と婚約させられそうになったのよ? 

 しかも相手は冷酷無比という噂の変人王子。

 でも……貴族ってそういうものだと思ったから、嫌嫌彼と婚約するつもりだった。

 まあ、門前払いされればいいなあと思っていたのは事実だけどね!


 でも──違った。

 彼は街の住民からも慕われる、優しい人だった。


 私もいつしか彼に惹かれていった。

 でも……彼のことを心から愛しているかと問われれば、すぐに頷くことは出来なかった。


 それが決定的に変わったのは、リアーヌと話をしてから。

 いつしか彼を本気で愛している自分に気付いたのだ。

 だからアシュトンと結婚出来るようになって、今の私は間違いなく幸せだった。



「ノーラ……いつも以上に今日のお前はキレイだ。お前と結婚出来て、俺は本当に幸せものだ」


 思い出話に花を咲かせていると、彼がふとそう口にした。


「ま、馬子にも衣装というヤツでしょう? ライマーもこれだったら、キレイって言ってくれるかしら?」

「ライマーだけじゃない。式場で待っているカスペルもセリアも──きっとお前を褒め称えるだろう」

「は、はあ……」


 照れるやら恥ずかしいやらで、ついそんな曖昧な返事をしてしまう。


 私は今──白の花嫁衣装に身を包んでいる。

 私としては、いつも通りの服で結婚式に出ようとした。でも、やっぱりダメみたい。

 こういう衣装に憧れない気持ちがなかったわけではない。


 でも──恥ずかしいんだもんっ!


 本当にキレイって言ってくれるかしら……お前には似合わん! とか言われたりしないだろうか。


「お、ノーラ。顔にゴミが付いてるぞ」


 アシュトンが手を伸ばし、私の顔に触れようとする。


「あら、ほんと? それはいけないわね。ありがと──」


 と口にしようとした時であった。



 ──彼の唇が私の唇と重なった。



 私も目を閉じて、それを受け入れる。

 あの決起会でのダンスの時、同じことをされそうになったけど──あの時はまだ心の準備が出来ていなかった。


 でも今は違う。

 彼と唇を重ねていると、頭が幸せでいっぱいになる。

 私と彼の心が溶け合い、一つになっていた。


 そうしてどれだけの時間が経っただろう。


「──ノーラ。愛している」


 やがてアシュトンが唇を離し、そう声を発した。


「私も──あなたを愛してるわ。これからもよろしくね」

「ああ」


 とアシュトンは、さらに私の頬にチュッと唇を押し当てた。


「じゃあ……! そろそろ行きましょうか!」


 こういうのは私の柄じゃない。

 私はアシュトンに手を伸ばし、式場に向かおうとする。


 だけど。


「待ってくれ」


 とアシュトンは私の一歩前に出る。


「今日くらいは、俺が前を歩かせてくれ。そうしないと格好がつかん」

「なにを言ってるのよ。昔、私が前を歩いてあげるって言ったでしょ? なのに、今日みたいな大切な日に約束を破るなんて、許せないわ」

「ダメだ」


 少し言い合う。


 しかし私たちはいつの間にか笑みを零して。


「……並んで歩きましょうか」

「そうだな」


 アシュトンと手を繋ぐ。そして隣り合って、式場へと足を進めた。



 今まで楽しい日々を過ごしてきた。

 そして──それはこれからも同じだろう。

 たとえアシュトンの妻になっても、今まで通りやり続けるつもりだわ。

 だって──。


「それが私だもの──ねえ、リアーヌ」


 今も私の中で眠っているであろうリアーヌ。

 私は彼女に対して、そう言葉を投げる。

 返事はない。だけど彼女が嬉しそうに微笑んでいるような気がした。


 そこでふと空を見上げると──。


「ねえ、見て! アシュトン!」

「なんだ──」


 アシュトンも感動で言葉を失う。

 何故なら、さっきまでなかったはずなのに、空にはキレイな虹が架かっていたからだ。


「あなたも喜んでくれているのかしら?」


 その美しい光景はまるで、リアーヌが私たちを祝福しているようだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


これにて、婚約破棄から始まったノーラの物語本編は完結となります。

紆余曲折ありましたノーラですが、最後はハッピーエンドで終われてよかったです。


ただノーラの人生はまだまだ続いていきますし、この先番外編や短編として投稿させていただく可能性ありますので、

「完結」ではなく、「連載中」のままにしておきます。


また書籍版2巻はKラノベブックス様より、好評発売中です。

コミカライズも絶賛連載中(書籍1〜2巻も発売中!)ですので、ぜひお手に取っていただければ幸いです。


最後に。

本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!

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