表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/86

73・真実

 あなたはあのエルフ──リクハルドから、失格王子と聖なる魔女──すなわち、わたしとアーノルドの話を聞きましたね。

 そこではアーノルドが国家転覆を謀った罪で、処刑させられたことを聞かされたでしょう。


 しかし事実は違います。

 アーノルドは悪くなかった。

 全て──彼を妬んだ、他の王子の策略だったのです。


 彼は自分が他の王子から妬まれ、常にその命を狙われていることを察していました。

 このままでは婚約者──すなわち、私にも被害が及ぶかもしれない。


 ゆえに彼は王継承権を放棄しようとしました。

 そして王継承権を放棄した後は、わたしと辺境の街で一緒に暮らそうと。

 もしかしたら、今までのような贅沢な暮らしは出来ないかもしれない。リアーヌ、それでもいいかい……という問いに、わたしはすぐに頷きました。

 たとえどんなに貧しくても──後ろ指を指されても、わたしは彼と一緒にいられればそれでよかった。


 ですが、そんなささやかな願いも結局叶えられませんでした。アーノルドの意志は他の王子に届かず、彼は処刑されてしまったのです。


 わたしは彼が死んでから失意のどん底に落ち、王都から遠く離れた街へと行きました。

 そこはかつて、アーノルドと一緒に暮らそうとしていた街です。


 だけど、わたしの隣にはもう彼はいない。

 わたしは街の中にある崖の上に立ち、そこに身を投げました。


 アーノルドと一緒にいられればそれでよかった。

 もし、次に生まれ変わることがあれば、聖なる魔女の力なんて持たなくてもいい。アーノルドは王子じゃなくていい。

 そんな願いを抱きながら──。




「実現不可能な願いでした。しかし──その願いは思わぬ形で叶えられることになります。わたしとアーノルドは他の人の体を容器にすることによって、転生したのです」


 と辛そうな表情で語るリアーヌ。

 話はさらに続く……。




 どうして、そうなったか分かりません。

 それに、わたしとアーノルドでは転生した時代が違っていた。彼はずっと前からですが、わたしはあなたの体が最初だったので──つい最近のことです。


 ですが、その間に起こったことは知っています。

 わたしは彼と一緒になれるならそれでいい──そう思っていました。


 しかしアーノルドは違った。

 彼は変わってしまった。

 ブノワーズ家のとある男の体に魂が宿ったアーノルドは、世界の全てを憎むようになっていたのです。


 どうして僕がリアーヌと一緒になれないんだ。

 それならいっそ──こんな世界ごとなくなってしまえ──と。


 きっと彼が王族の血を求めていたのは、かつて自分を貶めた他の王子に殺意があったからでしょう。


 そしてアーノルドは魔神となり、世界を恐怖一色に染めました。

 最終的にはブノワーズ家の子どもに封印され、その子どもが死んでも次の子どもに……と受け継がれていたようですが。

 そんな彼の憎悪、そして悲しみを、わたしはあなたの中から見ていました。


 わたしはこう思います。



 ──彼をもう楽にさせてあげたい。



 あなたの大切な人に魔神が乗り移った時、わたしにあったのは彼に対する怒り──そして憐れみでした。


 そこでわたしは自分の力を、外に放出させることに成功しました。

 わたしの力はアーノルド──魔神を捉え、見事彼を消滅させることが出来たわけですね。


 そして同時に──彼ともう一度、一緒になりたいというわたしの夢が潰えたことも意味します。




「──これがことの真相です。あなたからしたら、信じられないことでしょう。彼──魔神がやったことを許してくれと言うつもりもありません。実際、彼は許されざることを世界に対して行った。だからあなたがわたしとアーノルドを許してくれるはずもなく……?」


 そこでリアーヌの言葉が止まる。

 私の顔を見て、困惑している様子だった。


「あなたたち……そんなことがあったのね。うぅ……不憫だわ。まさか冤罪だったなんて……」


 そう──私は泣いていた。


 だってこんな話、聞かされると思ってなかったじゃない!


 リアーヌは生まれ変わっても彼と一緒になりたかった。

 だけど……彼はもう変わってしまった。

 二人は──生まれ変わっても、一緒になれない運命だったのだ。


 儚い二人の恋物語に、私の感情は強く揺さぶられていた。


「ノーラ、さん……わたしの話を信じてくれるんですか?」

「え、嘘なの?」


 と首をかしげる。


「い、いえ、嘘ではありません。しかしノーラさんからしたら、あまりに都合のよすぎる話といいますか……彼──魔神に酷いことをされたというのに」

「うーん、言われてみればそうかもしれないわね」


 お人好しと呼ばれるかもしれない。

 だけど。


「だって、あなたは私の相棒だもの。相棒の話を信じないわけないじゃない」

「ノーラさん……」

「ああ、そうそう。さん付けなんてしなくていいわ。ノーラって気軽に呼んでちょうだい!」


 そう言うと、リアーヌはより一層驚いた顔になった。


 それに──リクハルドさんから二人の話を聞いて、少し違和感があったのも事実。

 だって、いくら自分の思うように政治を動かしたいからといって、国家転覆だなんていうリスクを取る? 考えにくいわ。


 あの時は違和感の正体が分からなかったけど、ようやく解明出来てすっきりした気分。


「ますますあなたに興味が出てきたわ。私ともっとお喋りしましょうよ」

「わたしが……あなたと、ですか? 戻りたくないんですか? アシュトンさんたちのところへ」

「戻りたいわ。でも戻し方も分かんないんでしょ? だったら無駄にジタバタしてもダメ。もっとゆっくり構えましょ」


 それにリクハルドさんから話を聞いてから、ずっと彼女とは腹を割って話したかったのだ。

 私は両手で頬杖をついて、猫背気味なリアーヌと目線を合わせる。


「じゃあ次は私の話をしてもいいかしら? あなたの恋人であるアーノルドは、他の王子にハメられた。でもアシュトンも似たようなことがあって──」

当作品のコミカライズ二巻が明日(11月30日)発売となります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1653
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000366895

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新2巻が発売中
jb6a64403lndg8zj4n5jjf1r6poi_maa_13z_1kw_a74q.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ