46・アシュトンさんがノーラに甘すぎる!
本作品のコミカライズが決定&連載開始しました。詳細はあとがきに書いています。
──というのが事の顛末。
そして旅の途中で魔物の群れに出会したので、戦闘になってしまったわけね。
だけど。
「ふう、大したことなかったわね」
私たちの前には、魔物の死体がそこら中に転がっていた。
襲ってきた魔物は弱い個体ばっかりだった。それなのに私とライマーだけじゃなく、アシュトンもいるんだからね。正直オーバーキルだ。
「歯応えなかったわ。どうせなら、ドラゴンとか出てきて欲しいわ」
「お前はまだそんなことを言ってるのかよ!」
ライマーがツッコミを入れる。
でもせっかくの遠征なのだから、ドラゴンに限らず、珍しい魔物と戦ってみたいというのは普通のことじゃないかしら?
「ねえ、アシュトン。あなたもそう思うわよね──って私の顔をジロジロ見て、なに笑ってんのよ」
「くくく、ノーラは相変わらずだと思ってな。普通の公爵令嬢なら、ゴブリンに遭遇しただけでも大騒ぎだぞ」
「バカにしてんの?」
「褒めてるんだ」
褒めてるようには全然聞こえない。
まあアシュトンが楽しそうだから、別にいいけどね。
せっかくの旅なんだし楽しくいきましょ。
「無駄な時間を食っちゃったわ──さあ、出発するわよ! 目的地の街までには、まだまだ距離があるんだから!」
と私は目的地の方角へ指を向けて、そう高らかに告げた。
「どうしてお前が仕切ってんだよ! ねえ、アシュトンさんもなんか言ってやってください!」
「ノーラの思う通りにやらせればいいじゃないか。それに随分と様になっている。もしかしたらノーラは、冒険者パーティーのリーダーとしての素質も持ち合わせているかもしれないぞ」
「アシュトンさんがノーラに甘すぎる!」
「あっ、それから……」
私はミニマムボアの死体に視線を移し、こう口を動かす。
「あっ、ミニマムボアの死体はいくつか馬車に積み込んどこうかしら。これ、食べると美味しいらしいのよ!」
「普通の人でも魔物食には抵抗ある人が多いというのに、どうしてお前が──ってもう突っ込むのはやめた。疲れた」
ライマーが溜め息を吐く。
彼は呆れてるみたいだけど……こうやって、普段なかなか口に出来ない食材を食べるのも、旅の醍醐味よね。
その機会を私がわざわざ逃すわけないわ!
ミニマムボアを氷魔法で冷凍保存しながら──私はこれからどんなことが待ち受けているんだろう? と心躍らせるのであった。
本作品のコミカライズが決定&連載開始しました。
漫画ご担当は鏡ユーマ先生で、本日からPalcy (パルシィ)で連載開始しています。
ぜひご覧くださいませ。




