表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/86

35・ゆえに失敗した

 深夜。


 レオナルトはとうとうアシュトンの屋敷に辿り着いた。


「なかなか立派な屋敷を構えているんだな。アシュトンのくせに、生意気なヤツだ」


 屋敷の近くでレオナルト一行は身を隠し、最後の打ち合わせをしていた。


(どうせこの屋敷も民を虐げて、無理やり建てさせたものだろう……全く、我が弟ながら許せない)


 ギリッとレオナルトは奥歯を噛んだ。


 ここに来るまでの調査で、エリーザは今はあの屋敷の地下に閉じ込められていることは知っている。

 おそらく、アシュトンもエリーザの内に潜む魔神の力に気が付いたのだろう。レオナルトはそう決め付けていた。


「レオナルト様。いつでも攻撃出来る準備は整っています」

「へっへ。坊ちゃん、早くやっちまいましょうよ」


 レオナルトの近くにいた二人の男がいた。

 エリーザの父、ダグラスに私兵を借りている。しかしそれだけでは心許ないので、何人かの冒険者も雇っていたのだ。


 しかし彼らは冒険者の中でも素行が悪く、ギルド内でも立場が悪いらしい。

 そういう彼らだからこそ、こんな怪しい依頼でも、すぐに受けてもらえたともいえた。


「みなの者。今日は僕のために集まってくれて礼を言う」


 レオナルトはみんなに向けて、最後の演説を行う。

 こうしていると、まるで自分が民のトップ……国王陛下になったかのような錯覚を感じた。


「今、囚われの姫はあの屋敷の中にいる。僕たちは姫を救い出し、そして世界を救済するのだ。いわば僕たちは勇者。これが終われば、お前たちも僕の臣下として重宝してやろう!」


 気付かれてはいけないので歓声は上がらなかったが、集まった者たちは喜色をあらわにした。


「よし……では行くぞ! 僕に付いてこい!」


 レオナルトは剣を屋敷に向けて宣言する。

 今ならなんでも出来そうな気がした。

 気分が高揚していて、周りのことが見えないくらいだ。




 ゆえに──失敗した。




 レオナルトたちが屋敷に侵入する。


「出てこい! アシュトン! さっさとエリーザを出せ!」


 そしてレオナルトが高らかに声を上げる。

 後ろに控える者たちの間で「そんな目立つようなことを……」と動揺が広がったが、レオナルトはすぐに視線で「大丈夫」と伝える。


 これだけの数だ。

 たとえアシュトンがなんとかしようにも、ここまでくればどうしようも出来ない。

 エリーザを返すことでしか、アシュトンの未来はないのだ。


「おい、早くしろ! こんなところで時間をかける場合じゃ……」


 とレオナルトが言葉を続けようとした時であった。



「兄上よ。正気か? まさかここまでバカだったとは思っていなかったぞ」



 背後から声。


 レオナルトはすぐに振り返ろうとする。しかしそれは出来ない。

 彼の首筋に剣が突きつけられていたからだ。


「ア、アシュト──」


 声を聞き、数テンポ遅れてレオナルトは気が付いた。


 しかしもう遅い。



「うおっ!」

「なんだ!? なにが起こっている!」

「暗すぎてなにも見えやしねえ!」

「一体……ぐほっ!」



 耳をつんざくような悲鳴。

 そして少し遅れて、バタバタと人が倒れていく音が聞こえた。

 咄嗟のことでレオナルトはなにが起こったか分からない。


「ア、アシュトン、お前なにをした!?」

「決まっている。不躾な訪問者に少し眠ってもらっただけだ」


 アシュトンはレオナルトに剣を近付けるだけで、あとはなにもしている様子がない。


 他に人がいる?

 執事などの住み込みの家臣がいることは掴んでいたが、彼らにそんなことは出来るはずが……。


「うおおおおおおお!」


 そんな中。

 闇夜の混乱に乗じて、一人の冒険者が飛び出す。

 そして彼は剣を振り上げ、アシュトンを斬り裂こうとしていたのだ。



 シャキイイイイン!



 だが、もう少しで冒険者の剣がアシュトンの胸元を一閃しようとした時。

 床から氷の華が咲き誇る。


 それによって彼は上に突き上げられ、やがて落下に転じて床に激突した。


「な、なんだ? なにが……」


 レオナルトは最早そんな間抜けな声しか上げることが出来ない。


 やがて人の倒れる音が聞こえなくなったかと思うと、屋敷の明かりが灯された。


 彼の眼下に広がっていたのは、床に倒れ伏せるダグラスの私兵や冒険者。

 皆、死んではいないようだが気を失っているようである。


 そしてその先には……。


「ノ、ノーラ!?」


 元婚約者ノーラが腕を組み、鋭い眼光でレオナルトを見据えていたのである。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1653
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000366895

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新2巻が発売中
jb6a64403lndg8zj4n5jjf1r6poi_maa_13z_1kw_a74q.jpg
― 新着の感想 ―
[気になる点] 『彼の首筋に剣が突き立てられていたからだ。』 首に剣を突き立てるというのは、首に剣を刺したという事です(^_^;) なのでこの場合は『突き付ける』です。 突き刺す手前、あと少し動かせ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ