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話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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29/86

29・我慢が出来ません

 ロマンス小説友達になったセリアと、あれから私は文通でやり取りをしている。

 セリアが住んでいるところは、ここからちょっと遠いところだしね。そう簡単には行けないためだ。



 ──この巻のカーリニン王子の台詞は全て見所ですよ。

『たとえこの国を敵に回そうとも、君だけは守ろう』

 と語るカーリニン王子はカッコよくて……!



 そうセリアからの手紙には記されていた。

 これを読むだけでも、セリアの興奮具合が伝わってくるほどだ。


「ふふふ。セリアはやっぱり分かっているわね」


 趣味が同じだと、やっぱりこうしてやり取りをしているだけでも十分楽しい。


 しかもセリアに何冊かオススメの本を紹介してもらったけど……それが面白いのなんの! 

 つい時間を忘れて読み耽ってしまったわ。


 そのせいでアシュトンから、


『部屋に引きこもってどうした? 具合でも悪いのか?』


 と心配されたけど……具合が悪いどころか、体調は絶好調。


 ロマンス成分を摂取した今の私は無敵なのだ!


「あっ……『王太子の側室は色々と大変だった』……の最新刊が王都ではもう発売されているのね! セリアに言われて気が付いたわ」


 当たり前の話かもしれないが、基本的に本の流通は王都が中心となってくる。そこに出版ギルドなどが多く設立されているためだ。

 だからジョレットに最新刊が流通するのはまだ先の話……だということは分かっているけど、早く読みたいわ!



「ねえねえ、アシュトン」



 そこで私はアシュトンに相談することにした。


「どうした。新しい剣でも欲しくなったか?」

「うーん、それも捨て難いんだけど、今回はそうじゃないわ。実は……」


 本について話をする。


 すると彼は悔しそうに、


「……ちっ。そっちだったか。たまにはお前の考えを当てて、ビックリさせてみたかったんだがな」


 と舌打ちした。


 なに張り合っているのよ。

 私、そんなに考えていることが分からない性格をしているかしら?


 ちょっと疑問に思ったけど、今の問題はそうじゃない。

 あらためてアシュトンにこう言う。


「どうにかして手に入れる方法はないかしら?」

「そうだな……発売日は具体的にいつだったんだ?」


 私はセリアから聞いた発売日を伝える。


「それだったら、街外れの本屋には置かれているかもしれない」

「え!? それって本当?」


 思わず前のめりになって、アシュトンを問い詰めてしまう。


「ああ。俺が知っている本屋は、王都に独自の()()があるそうでな。どこよりも早く本を仕入れることが出来るわけだ」


 心なしか、アシュトンがドヤ顔になっている気がする。


「そ、それはどこに!? 今すぐ買いに行きたいわ!」

「口で説明するのは、少し難しいところだな……そうだ。たまには街でデートでもするか。最近は忙しくて、なかなかそんな時間は取れなかったしな」


 名案を思い付いたようにアシュトンが言う。


 正しくは一緒にダンジョンとかに出かけて、一緒に依頼をこなしたことはあるのだが……あれはアシュトンの中ではノーカウントなんだろう。

 あんまり男女のデートっぽくないしね。どちらかというと、冒険者パーティーを組んでいるみたいだ。


「分かりました! すぐにお出掛けの準備をしてきますっ!」


 すぐに踵を返して、自分の部屋に走った。


「……あの調子だったら、あんまりデートという意識ではなさそうだな。まあノーラのことだから分かっていたことだが」

「ノーラ様らしいですよ」


 後ろからアシュトンと、どこからともなく現れたカスペルさんが話している声が聞こえた。

 でも今の私はロマンス小説の最新刊のことで頭がいっぱいになっていて、最早どうでもよかった。


 急いで着替えを済ませて、アシュトンの前に戻る。


「さあ! 行きましょう!」

「早いな。普通、女の準備といったらもっと時間がかかるものだと思うが……」

「なにか言った?」

「なんでもない」


 とアシュトンが声にした。


「ではカスペル、行ってくる。夕方までには戻れると思う」

「はい。行ってらっしゃいませ。なんだかんだで、アシュトン様とノーラ様でまた依頼をこなしに行きそうですけどね。前回のサンドスパイダーの時みたいに」

「それは否めない」


 頭を下げるカスペルさんに手を振って、私たちは早速屋敷の外に出た。


「アシュトン! その本屋っていうのは、結構離れているのかしら? 走って行こうか?」

「ちょっと待て。本屋は逃げない。そう急がなくても大丈夫だろう」

「でも……」

「お前は走る速度が尋常じゃないくらい早いのだ! そんな速さで走っていたら、街のヤツらが『なにごとだ?』と心配するだろうに」


 確かに……私は走る速さについては少々自信がある。

 簡単にいうと、自らの体に身体強化魔法をかければ、馬と同じくらいの速さで走れるくらいだ。

 アシュトンの言うことにも一理あるわね。


「分かったわ。じゃあ歩いて行きましょう。あっ! でもなるべく速くね!」

「全く……せっかくのデートだというのに、ノーラはなにを考えているんだ……」

「あら。なにか言った?」

「なんでもない」


 今度はちゃんと聞こえたけど、わざとそう言ってみたら、アシュトンは苦い表情をしていた。

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