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2・次の婚約者

 レオナルトに婚約破棄をされて、私は久しぶりに実家で悠々自適にくつろげていた。


「ふう……やっぱり王子殿下と婚約だなんて、私には向いていなかったのよ」


 今日もベッドで横になりながら、紅茶とクッキーを食べてぐーたらしていた。


 レオナルトとの婚約が決まってから、王太子妃としての教育が忙しく、こうして自分の時間を持つことが出来なかったからね。


 でも彼との婚約がなくなって、なんだか背中に羽が生えた気分。

 今だったら、なんでもやれそう。


「私にとって、レオナルトとの婚約は重荷でしかなかった……というわけよね」


 そのことを認識しただけでも、婚約破棄されてよかったと思っていた。




 そんなニート生活を楽しんでいた、ある日……私はお父様に呼び出された。




「ノーラ。今回の件は災難だったね」


 お父様の名前はルドルフ。

 我がエナンセア公爵家の当主であり、優しそうな雰囲気をまとっている。


 お母様は小さい頃に亡くなったんだけど、そこから彼は再婚することもなく、私を一生懸命育ててくれた。


 幸い、私を含め他にも兄弟がいるから跡取りの心配はいらない。

 再婚すればいいのにと思っていたが、お父様はお母様にぞっこんだったらしく、頑なに相手を作らなかったのだ。


 公爵家としてどうか……とも思わないでもないが、そんなお父様を私は好ましく思っていた。


「ええ、災難だったわ。まさかレオナルトが『真実の愛』に目覚めて、急に婚約破棄を告げてくるなんて」


 当たり前だけど、婚約破棄された理由についてはお父様に全て打ち明けている。


「うん。僕も殿下があれだけバカだと思っていなかった。仮に『真実の愛』を大切にしたいとは言っても、正式に手続きを踏む必要もある。今回の件はレオナルト殿下が全面的に悪い」


 とお父様は声に静かな怒りを含ませて言った。


 彼も今回の件ではお怒りなのである。


 そりゃそうだ。

 娘に落ち度がなく、相手から一方的に婚約破棄を言い渡されたのだ。これに怒らない親はいないだろう。


 しかもお父様はお母様を亡くしてから、他にパートナーを作ってこなかった妻一筋の人間だ。

 レオナルトの所業には、色々と思うところがあるんでしょ。


「それにしてもノーラ」


 お父様が続ける。


「レオナルトに婚約破棄されて傷ついていると思ったら……そうでもないようで安心したよ。それだけが救いだ」

「ふふ。私が傷ついているって?」


 お父様の物言いに、つい笑ってしまった。


 何度も言うが、私にとってレオナルトとの婚約は重荷でしかなかった。

 それがなくなって清々しているくらい。


「うん。それでこそ僕の娘だ。君は本当に良い子に育ってくれたね」


 とお父様は柔和な笑みを浮かべた。


「……で、お父様。私を呼び出したのは、なにか理由があるのよね?」

「察しがいいね。ノーラの言う通りだ。実は……君に別の婚約話がきている」

「え−……」


 なんとなく分かっていたが、私は思わず苦い表情を浮かべてしまう。


 あーあ、もう少し一人で自由を謳歌しておきたかったのになあ。

 でも私はいくら王子殿下に婚約破棄された傷物令嬢とはいえ、エナンセア公爵家自体は有力な貴族だ。

 そんな私と婚約したい殿方は、いてもおかしくはないんでしょ。


 だけど……婚約破棄のニュースが他に行き渡るのが、ちょっと早すぎるような?


 私が疑問に思っていると、次にお父様が言った言葉でそれが解決する。


「相手は……この国の第七王子。アシュトン殿下だ」

「は? 第一王子に婚約破棄させられて、次は第七王子なの?」

「うん」


 お父様は短く答えた。

 そして淡々と彼はこう続ける。


「今回の婚約破棄は、国王陛下も心苦しく思っているようでね。第一王子の非を認めてくれている。そこでノーラに第七王子との婚約を、陛下は用意してくれたんだ」

「用意って……余計な真似を」


 舌打ちしたくなる衝動をおさえる。


 それに第七王子といったら……。


「あまり評判がよろしくない王子よね?」

「……ノーラの言う通りだ。君はアシュトン殿下のことはどこまで知っている?」


 アシュトン第七王子といったら、この国で知らない者はいない。


 なんでも彼は昔から剣の才があったらしく、暇さえあれば剣を振るっていたいたらしい。

 その実力は国の騎士にも劣らないものだとか。


 そんな彼を将来の騎士団長に……と推す声も多かったが、()()()()()をきっかけに、それがうやむやになってしまう。

 さらにアシュトン様はそんな自分の将来に悲観してのことなのか、それとももっと自由に生きたくなったのか……自ら辺境の地に赴き、今はそこで冒険者をしているらしい。


 王位とは程遠い第七王子とはいえ、王族が冒険者になるだなんて異例のことだ。

 そんな彼のことを、周りは『変人』と称する人もいる。


「しかも冷酷無比で怖いお方だとか……今まで何人もの婚約者候補がアシュトン様のところへ向かったけど、すぐに帰ってきたのよね?」

「ノーラの認識で間違いない。今までは良くて保ったのが一週間……悪くて門前払いだったと聞く」


 そんな男と婚約だなんて……陛下の温情というよりも、これはただ単に押しつけられたと見る方が正しそうね。


 いくら今はほとんど縁が切れ、王室との関わり合いが少ない第七王子相手とはいえ、陛下としては完全に無視することは出来ないのだろう。

 そこで丁度、レオナルトとの婚約もなくなった私にアシュトン様の婚約を押しつけ、あわよくばエナンセア公爵家との結びつきを保つ……なんて魂胆が透け透けだ。


「私も舐められたものね」

「僕もそう思う」


 お父様の声は穏やかだったが、私と同じようなに不快な気持ちを抱いていることは明白だった。


「いくら陛下相手でも、エナンセア家のこと……そしてノーラをバカにしすぎだ。今回の件は断ろうと思うのだけど……」

「あら、嬉しいことを言ってくれるわね。でも……お父様、ダメ。それはさすがに許されない」


 何故ならこれはいわば国王陛下直々の勅命。

 明らかに私たちを舐めている態度とはいえ、これを断れば逆に私たちの立場が悪くなってしまう。


 それに王族との結びつきはなんだかんだで大切。

 いくら舐められていることが分かっていても、私たちはこの話を呑むしかなかった。


「私、その婚約話……謹んでお受けするわ」

「本当にいいのかい?」

「ええ。だって貴族との結婚なんて所詮こんなものだから」


 肩をすくめる私。


 もう少し実家でゆっくりしておきたかった……というのが本音だが、こうなった以上は動かざるを得ない。


「それにさすがに相手から門前払いされたら、婚約話を白紙にしても問題ないでしょ? 今はその可能性に賭けましょう」

「……君は本当に良く出来た娘だね。僕の自慢の娘だ」


 お父様が私の頭を撫でてくれる。


「分かった。じゃあ陛下に婚約をお受けすることを伝えておこう。ノーラには苦労をかけるね」

「気にしないで」

「そう言ってくれると、僕もちょっとは楽になるよ。それに……アシュトン殿下の評判が悪いという話だけど、僕が見た限りはそうでもなくて……」

「え?」

「……いや、ここからはノーラ自身が判断することだね。実際に見て、確かめてきなさい」


 お父様の言葉に、私を首をひねるしかないのであった。

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