幻のゴーストスイーパーの親戚の弟子の千円札(諭吉)の事件簿0
神も仏も存在するけど人間には手を出してこないものの、悪霊と呼ばれる存在らは平気で人間に被害を被る世界にて、ホトケやシャカなどの力を修行で引き出し強制的に成仏させる人たちが暗躍する、そんな物語。
私の名前はナツメ。あだ名は漱石、もしくは千円札。漱石はいいが千円札は不愉快だ。私はそんなに安い女ではないので、ぜひ諭吉というあだ名を推奨したい。ちなみに職業はしがないゴーストスイーパーをしている。簡単に言えば悪霊退治の専門家である。私が高校卒業後、ボディコン美人がビル街を飛び回るオープニングで有名な方の親戚と名乗る人物から修行を教わり、現在に至る。というのは、冗談のようで冗談なのかもしれない。結局どっちなんだ。それは私にもわからない、師匠に聞くべきか否か。何をだ。本当に真実なのかということ、つまり、ボディコン美人の親戚なのかということに決まっておろうが。まあそれはさておき。では、そろそろ現在の状況について説明しようか。
私はいま大阪に出張中である。なに、簡単な話だ。大阪某所、地下迷宮と呼ばれる場所に悪霊か何かが大量発生しているので退治してくれとの依頼が来たわけだ。そしてその地下迷宮と呼ばれる地下街に来てみたのだが、悪霊どころか人すらいないし、店も大半が閉店している。シャッター街ではなくシャッター地下街というべきか。いや、シャッター地下迷宮と名づけよう。昔遊んだゲームにそれとなく似た名前のダンジョンがあったはず。シャチホコのダンジョンだったか。私は興味のないことはすぐに忘れるので定かではない。さて話を戻そう。
依頼主からは、「地下街のどこかに悪霊がおるから退治して、はく製にしといてくれませんか。モニュメントにしたいので。ああ、無理ならかまいまへんけど、なるだけお願いしますね」としか聞いていないので、自分の足で探し回るしかないのだが、この地下迷宮もとい地下街は半端なく広いので悪霊どころかゴキブリを見つけるのも苦労しそうだ。冗談はさておき、とりあえず空いている喫茶店を見つけたので休憩がてらに情報収集してみることにする。
そして事件はあっさりと解決した。手っ取り早くて助かったが、拍子抜けするほどあっさりとそれでいてディープなインパクトが残る結末であった。
真相はおおまかにいうとこのような感じだ。
悪霊がうろつくため地下街は指定の場所以外、全てが休業中なのである。つまり開店しているお店は悪霊がお店を乗っ取り経営していたわけだ。面倒なので私は遠慮なく悪霊に不動明王の力をふんだんに取り入れたお札で強制成仏させていく。そしてその過程でなぜ悪霊がお店を経営していたということを知った。昔、この地下街には闇市のような許可なく場所を陣取り商売をしているお店が黙認されていたらしい。その名残を覚えていた霊、おおよそ商売が失敗して経営破綻したことを後悔したであろう浮かばれない霊魂が集まり、この事件を引き起こしたようだ。つまりはほとんどが悪霊ではない。しかし私は遠慮なく霊魂を成仏させた。なぜならば、現実の経営者のお店を乗っ取ているわけだから、罪は罪。成仏されたくなければさっさと場所変えるか、場所代を払え。そんな中、本当に場所代を払うつもりの霊魂もいらしたようだが場所を変えることをお勧めしましたところ、猛烈な勢いで首を横に振る一方だったので面倒になって強制退去してもらうことにした。
そんなこんななやりとりで数日後には大阪の地下迷宮もとい地下街には活気と平和な日常が戻っていた。
――もしかしたらこの数ある商店のうちの数件はいまだに霊魂が経営している可能性も無きにしも非ず、そんな冗談を考えながら大阪の町を去る私であった。が、その前にやることがある。日本一の高さを誇るビルで街を飛び回るというゴーストスイーパーの伝統芸能をしなくてはならない。というのは冗談で、普通に観光をしてお土産をあさる私なのであった。
完
続くかもしれない