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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第一話「淫魔さん、人里に下りる」
9/92

09-滞在五日目-

 五日目は町長さんと相談から。

 来る前にファリスに神官用の属性感知用紙を作って貰ってある。

「面白い発見があったので、まずは報告から」

「ほう?どの様な報告だね?」

「魔法使いや神官を育成出来そうです」

「本当か!?」

 エアリに判定用紙を使って貰おう。

 まだ話してなかったから、その結果にファリスが仰天。

「エアリが魔法使い!?」

「そうなの!昨日の夜になれたんだよ!」

「そんなにあっさり!?」

 あっさりと言う程でも無いと思うけど、従来のヒトの常識からすればあっさりになるかな。

 とりあえず落ち着いて貰おう。

「まず、魔法の素質、魔力の量は成長します。エアリは魔法肥料の調合で魔力を消費し続けていたので成長しました。そして方向性の確立。これは魔法使いか神官かと言う話ですが、一定以上の魔力量に到達してから四属性か光属性の感覚を掴む事で確立するのではと仮説を立てました。これが正しければ、現状では少しでも魔力を持ってさえいれば練習次第で魔法使いか神官になれます」

「「おおおっ!」」

 つまり、練習すれば魔法使いや神官が増える。

 少しでも魔力を持っていれば何時かなれる。

 これはこの町にとって、ひいてはヒトにとって大きな希望になる事。

「出来れば魔力を持たないヒトが魔力を持てる様になる研究もしたいところですが、流石に時間が足りませんね。一応模索は続けますけど」

「素晴らしい…っ!」

「やっぱり滞在許可出そうよ…っ!僕も魔法を使ってみたい…っ!」

 これも滞在許可の一手になるね。まあ、やっぱり町民次第なんだけど。

 それを踏まえて再度町民召集を頼む。

「って訳で、皆さんも魔法を使える様になるかもしれません。そこで、もう一度確認させて下さい。そこから属性練習。属性練習が可能な魔力量がどれくらいかも確かめたいんです」

「「はい!」」

 今回は進んで協力してくれた。やっぱり魔法を使えると言うのはヒトにとって大きいらしい。

 ボクとしても面白い研究課題が出来た。

「あ!あ!赤く光った!」

「うおお!火の魔力だ!火の魔力だって解る!」

「こっちなら光った!これ光属性よね!?」

 うん、面白い。魔力量が少なくても属性魔力の感覚が僅かながらに感知出来てる。

 流石に魔法を構築出来る程じゃないけど、成長すれば使えそうと解っただけで大きい。

 魔力量が少ない状態でも方向性の傾向が見えると言うのも励みになるだろう。

「魔力が無いヒトも気を落とさないで下さい。もしかしたら何かしらの要因で魔力を得る事が有るかもしれませんから」

「「おおおっ!?」」

 うーん、ちゃんと研究したいなー。誰かに喜ばれるのは結構好きだし。ここも認めてくれたヒト達にはお世話になってるし。

 何であれ、生きてる以上は魔力を備える可能性が有るんだけど、どうしてヒトは持ってない場合が有るんだろうか。

 草花でさえ僅かながらも魔力を持ってるのに。

「ねえアイラ。魔力を持ってないヒトにも属性練習をやらせてみない?」

「そもそも発動しないよ。魔力を流す事で発動する物だから」

「そっか。感覚だけ掴めれば変わるんじゃないかと思ったんだけど」

 …ん?あれ、それ面白い発想かも。

 魔力を知らないから、もしくは諦めたり信じていないから魔力が無いのだとしたら。

「アレス。魔法使いになりたいって考えた事は有る?」

「なれるならなりたいけど、僕には無縁だと思ってるよ。現に魔力が無かったしね」

 …有り得る。

 急いで魔法を構築してファリスに頼もう。

「これで良い?」

「…うん。ファリスが発動させて。魔法陣が出たらアレスもそれに触れて」

「解った」

「「おおお?」」

 なら、魔力を感じさせたらどうか。

 ファリスが新しい用紙に意識を集中させ、魔法陣が展開。それにアレスが触れて…。

「おおっ!?これは何だ!?これが魔力か!?」

「「おおおっ!?」」

 よし、魔力の感知は成功。

 アレスがファリスの魔力を感じ取り、そこからアレスに魔力の存在を理解させる。

 そのまま少し待って、今度はアレスに魔力判定用紙を使わせてみた。

「おおおおおおっ!」

「「おおおおおおおおおっ!!」」

 成功!アレスが魔力を得た!

 判定用紙から魔法陣が出たよ!

「信じられない!アイラ凄いわ!」

「魔力だ!僕にも魔力!」

「エアリお手柄!世紀の大発見だよ!」

「ほ、ほんと!?あたしのおかげ!?」

 これは間違いなくエアリの功績。これなら誰でも魔法使いになれる。どう考えてもヒトにとって新たな一歩だ!

 魔力感知用紙と名付け、魔力を持ったヒトに発動して貰って魔力を持たないヒトにどんどん魔力を与えていく。

 そこからはもう大盛り上がり。

「凄い!俺にも魔力!」

「夢みたい!練習すれば私も魔法を使えるって事よね!?」

「おおお!私にも魔力が!」

 こうなると欲が出てくるね。

 如何に魔力量を増やすか。出来るだけ日常的に魔力を使う方法が欲しい。

 全員で魔法肥料を作るのは流石に無理がある。

 そうなると、だ。

「ファリス、予定変更。使用者の魔力を使う形でアーティファクトを作ろう。出来るだけ使用頻度が高い物。それを使って魔力量を増やすんだ」

「賛成!」

「「わあああああっ!!」」

 アーティファクトで消費させるのが一番。本来のアーティファクトだから刻印する魔法も単純。

「冒険者諸君。悪いんだけど討伐クエストを請けて魔物の毛皮と骨を集めてきてくれ。毛皮で増力の手袋を作ろう。骨は灯りにする」

「「よっしゃ!」」

「仕立屋は手袋をありったけ用意して。甲に毛皮を貼り付けるだけで良い」

「「はい!」」

「大工も手伝って欲しい。骨を磨くだけで良い。それから井戸の滑車も改良して楽に水を汲み上げられる様にする」

「「はい!」」

 井戸にはファリス、他は新入りでもいける。

 今日中に魔法の基礎を叩き込めば、材料が集まる頃には作れる様になると思う。

「これは面白くなってきたな」

「「うんうんうん」」

 皆で魔法使いになって、イキシアの町を盛り立てて行く。町長さんからすれば嬉しいだろうね。

 皆もやる気一杯って感じだ。

「真面目な話さ。もうアイラを受け入れて良いんじゃないか?皆を魔法使いにしてくれたし、練習の為の物を揃えるのもアイラに手伝って貰った方が早いだろう」

「「うんうん」」

 おっと、それは真面目にありがたい。

 認めて貰えるのは嬉しいし、研究もちゃんと出来るし。物を用意するのもボクが出た方が確かに早い。

「では、アイラさんを受け入れると言う事で良いだろうか」

「「わあああああっ!!」」

「ありがとうございます。やはり郊外か近くの森で暮らす事になると思いますが、今後とも宜しくお願いします」

 こうなると意固地に期限一杯までと言い張るのは失礼になる。

 ありがたく受け止めて加勢しよう。




 封魔の首輪も外れ、久しぶりの本調子。

 ほんとボク良い仕事したわ。全然違う。体が物凄く軽い。魔力も漲る。

「ちょ、アイラ!こんな物を今まで着け続けてたのかい!?」

 あれ、アレスが着けてる。

 鍵が有るからと高を括ったな?

「だよ。ここだけの話、それで魔王を殺してる」

「何だって!?」

 んー、残ってるのはアレスのパーティと町長さんだけか。それなら話してしまおう。

「前に覇権争いをしてたって言ったでしょ。ボクとボクの親友の相手は魔王アルゴニア。アルゴニアを完全に殺す為にそれを作ったんだ。魔力が使えないと自己蘇生が出来ないからね」

「実はとても凄いヒトだったんだね…」

「まさかアルゴニアが倒されていたとは…」

 実際、凄い奴ではあるんだけど。

 今は平穏な暮らしを望む変わり者なのだ。

「まだ秘密ね。親友は能動的にヒトを襲おうと考えてない。態勢を整えたら各国と交渉して休戦協定を結ぶつもりだ。いい加減、魔族側も疲れてるんだよ。ボクも疲れた。だからヒト里に下りた。良い場所に巡り会えたよ。」

「本当に面白いヒトだなあ」

「ああ。そう言う事なら尚更歓迎しよう」

 ありがたくお邪魔させて貰おう。

 もっと貢献して、良い居場所にする。

「目指せぐーたら生活だ。合意の上でハーレム作ってゆったり平和を満喫したい」

「はははははははっ!駄目だ、面白い…っ!」

「く、くく…っ!合意の、上なら…っ!」

 贅沢な暮らし、とまでは言わない。

 それなりに不自由が無ければ十分。

 でもハーレムは外せない。サキュバスだし。

 良い居場所が出来たから、次はハーレムを作れるだけの豪邸を目指そう。

「あ、町長さんにはこれも話さないと。ボクは性同一性障害って奴でしてね。平たく言えば見た目は女で中身は男なんです。だから女の子でハーレムを作りたいんですよ」

「ぶふぅっ!?」

「ね…っ?面白いだろう…っ?」

 後で町民の皆にも話さないとなー。

 こう言う事もちゃんと先に話すべきだ。

第一話了

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