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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第六話「淫魔さん、大活躍」
41/92

06-反対側は食の町に-

「「わあああああああああっ!!」」

「オークやゴブリンを追い払ってきたよー!」

「凄えぞ皆!それだけじゃねえんだ!」

「香辛料とか薬草とか沢山見つけてくれてよ!」

 英雄の凱旋再び。

 冒険者達は武勇伝より見つけた物で興奮してるけどね。あ、セシル町長さんもか。

「もう見つけてくれたのか!?」

「予想通り香辛料が多かったですよ。何より石英が大きすぎます。町長さんに石英を渡して」

「ああ!町長、こいつだ!運が良ければ水晶も見つかるってさ!」

「おおおおおっ!急いで採掘権を取ってくる!」

「「わあああああああああっ!!」」

 採掘品は美味しいです。うまうまです。

 旅仕度を整えてくれてたみたいで、石英を受け取ったらすぐ出発しちゃった。

 まあ、シャルルを通せば話が進むから良いんだけど。

「さて、諸君!まずメモを買ってくれ!そしたら周辺の植物を何でも良いから集める!木も葉っぱを毟ってきて!何かの材料になるかもしれないからね!見つけた場所をメモ!」

「「よっしゃあ!!」」

「「わあああああああああっ!!」」

 帰って早々だけど、やる気が有り余ってるからやって貰う。

 その間に町のヒトに頼もう。

「悪いんだけどさ。大工と仕立屋に声を掛けてくれないかな。新しい施設とか、魔法の服を教えるつもりでね。ギルドで待ってるから」

「おおおおっ!俺大工連れてきます!」

「私服屋!魔法の服欲しいです!」

「「わあああああああああっ!!」」

 喜んでくれて嬉しいね。

 アッサムの時みたいに、ボクの後を大勢が来てくれてる。

 この歓迎ぶりならギルドの軒先で話そう。

「解りました!お使い下さい!」

「悪いね。テーブルと椅子も貸して」

「はい!今役員を出します!」

「むしろ全員で手伝って。ギルドにも関係がある話になるから」

「「はい!」」

 毛皮とか素材とか。

 大きなテーブルを選んでくれて、外に設置。

 椅子も全部出してくれたところで大工と仕立屋が来てくれた。

「俺達に仕事くれるって聞いたんだが!」

「当面、休日の日数を減らして貰う事になりそうだよ。建てたい物が山程有る」

「「うおおおおおおおっ!!」」

「仕立屋も大きな話だから聞いて。まあ座ってよ」

「「はい!」」

 全員揃ったところで始めよう。

「まず、アイリスで色んな種類のお酒を造る。葡萄酒は勿論、皆が飲んだ事が無いお酒も有る。イキシアとアッサムだけじゃ材料が足りないんで、それぞれ三つの町で違うお酒を造って流通網を作るんだ」

「「わあああああああああっ!!」」

「となると工場と蔵か!」

「確かに休暇返上だな!」

 これだけで大工がフル稼働と解る。

 でもまだあるぞー。

「最近イキシアに行った事が有るヒトなら知ってると思う。色んな魔法を込めた広いお風呂のお店もアイリスとアッサムに建てる」

「「わあああああああああっ!!」」

 アイリスは標準装備の湯船に加え、食欲増加や消化促進を湯船を用意する。

 それに入れば食欲が沸いて、お腹が空きやすくなり、また料理が売れる訳だ。

「ここの食材を使った色んな料理を広めるし、お酒も造るからね。食の町として名を広める為にもそう言う魔法のお風呂を置きたいんだ」

「噂以上に凄えヒトだ。何でも建てるぜ」

「話を聞いて一度入ってみてえと思ってたんだ」

 他にも必要な物が出たら頼むと話して次。

 仕立屋には魔法の服。その前にコートを脱ぐ。

「皆、このコートを見て。良い感じでしょ」

「「うんうんうん」」

「実はこのコート、魔物の毛皮を使った魔法の服なんだ」

「「えええええっ!?」」

 ちょっと寒いけど、軽く振って冷ましたら仕立屋に貸す。羽織るだけでも解る。

「ど、どう!?」

「信じられない!軽いし背中が開いてるのに普通のコートよりずっと温かいの!」

「「ええええええええっ!?」」

 はい、皆も試して試して。

 あ、フィーナも脱いでくれた。優しくて眩しくて死にそう。早く押し倒したい。帰るまで我慢。

「うおおっ!凄え良い!」

「これ欲しい!出たら絶対買う!」

「そこで、ギルドの皆。毛皮以外にも魔物の体は何かしらの素材になるんだ。もしかしたらジャネットから聞いてるかもしれないけど、討伐クエストの証拠品は捨てずにとっておいて。報酬額の半値で各所が買い取る様に話をつける」

「「はい!」」

 どの素材が使えるかも後で教えると説明。

 理由もちゃんと説明しよう。

「魔物ってのは、強い魔力を持った動物でね。肉は食えないけど骨とか毛皮、爪も良い素材になるんだ。特に大きいのが魔法を込めやすいって事。道具ならアーティファクトと呼ばれる物になるし、服なら魔法の服になる。そこで、仕立屋には後で町長さんの家に来て欲しい。自分では中々気付かない素質、魔法使いの素質が有るヒトに魔法の服の作り方を教えるよ」

「「はい!!」」

「「わあああああああああっ!!」」

 素質が無くてもあげるから。魔法使い寄りのヒトを育てるから。

 その代わり魔物の毛皮を引き取ってくれ。

「喜んで引き取りますよ!」

「誰だって欲しがりますから!」

「「うんうんっ」」

 だよねー。

 それじゃ解散。テーブルと椅子ありがとう。


 仕立屋に魔力を与えたり成長用のアーティファクトを渡したり。

 その後も町長さんの家のお風呂や水回りをアーティファクトにしたりと最後まで忙しい日だった。

 翌日からも当然忙しい。

 冒険者達が集めた植物を中央広場で確認だ。

「凄いなー。これも香辛料だよ」

「やっぱりか!そんな香りがしてたんだ!」

「これ原生のサクランボじゃん。果物だよ」

「だよな!?甘い香りがして果物じゃねえかって話してたんだよ!」

 とにかく恵まれてて、どんどんヒトが集まってくれる。

 喜びの声も大きくなっていくよ。

「ジャネット。三分の二のイキシアとアイリスの冒険者を同じ数で編成して、木の植え替えを頼むよ。必要な物はファリスとエアリが用意。セシル町長さんが好きに土地を使ってくれって言ってくれたんで、アッサムの桑畑くらいの規模でお願い。土地勘はアイリスの冒険者に聞いて」

「任せておくれ!ウチのパーティを分ける!」

「何でもやるわよ!」

「美味しい物食べたい!」

「「わあああああああああっ!!」」

 一通り確認したら樹木を優先して植林。

 殆どが樹木なんで大変だけど頑張って貰う。

 残った冒険者はイキシアとアイリスで分かれて貰い、アイリスの冒険者にはお酒の材料を栽培してる農家を召集。材料も沢山欲しい。

 イキシアの冒険者には魔物素材の取引を各所で説明したり、酒造の道具集めや手伝いを頼む。試しに作っちゃうよ。期待されまくってるし、そのままちょっとだけ試飲させちゃうよ。

 このままここで作ろう。手伝ってくれると思うし。ほら、大勢が名乗り出てくれた。

「あ、悪いんだけど定食屋を片っ端から回ってくれないかな。今夜町長さんの家に来てって。今確認した食材も含めた料理レシピを提供するからメモも持ってきてって」

「解りました!こっち行ってきます!」

「じゃあ私こっち!」

「俺こっちだ!」

 動けなくなってきたし、どんどん頼る。

 料理レシピもアッサムの時みたいにしおりをつけてあるから、今の段階でだけど移して貰おう。

「イキシアに行って色々と食べたんですけど、どれも凄く美味しかったです。どれだけご存知なんですか?」

「んーとね。よいしょ。これがデザート込みで三十冊くらい」

「「えええええええええっ!?」」

「凄すぎます!行く度に料理が増えてるのも納得ですよ!」

 食材が一つ増えると沢山料理が増えるからね。

 期待してくれて良いんだよ?


 農家も道具も揃ったところで酒造開始。

 フィーナにも酒造を簡単にする魔法を仕込んであるんで、手順を教えたらフィーナに任せて次、と出来る。

「アイラさん。ほんとこんなので酒が作れるのか?搾りカスだぜ?」

「ボクを信じてみなって。って言うか、ボクが一番欲しい酒だよ。工夫次第で更に色んな風味になるから頼むね」

 サトウキビ農家が首を傾げてるけどラムは飲みたい。町のヒトに手伝って貰って独自に好きな配合で作るし。

「悪いね。お礼に一瓶あげるからお願い」

「うあっ♪頑張りますっ♪名乗り出て良かったぁ…♪」

 ボク用は好みな子猫ちゃんに頼んだ。頑張って欲しい。ほんと飲みたい。

「こんな感じですかい?」

「うん、良い感じ。次に行こう」

 少しずつ出来て行くお酒に周囲の期待がどんどん高まってく。

 香りもしてきたね。

「マジだよ。アイラさんほんと凄え。ゴミが酒になってきてる」

「砂糖の生産量そのままで酒まで作れるとか酒造許可貰うに決まってんじゃんねえ?」

「ありがてえ限りだぜ。確かにその通りだ」

 サトウキビ農家も納得してくれた。

 まだアルコールは生まれてないけど、良い香りってだけでボクを信じられる。

 んー、どこもそろそろ発酵の段階かな。

 一番早く発酵に辿り着いたのはやっぱり葡萄。

「ええ!?え、本当にこれだけなんですか!?」

「だよ。葡萄は単体でお酒になるんだ。発酵と熟成の時間が掛かるから、ちゃんとした蔵で適切な管理が必要になる。それも後で詳しく説明する」

 何しろ絞った果汁を樽に入れて寝かせるだけ。

 魔法でも長く掛けないと駄目なんで、樽の箍をアーティファクトにする。

「師匠!こっち発酵に移ります!」

「頼むー!」

 発酵の手前でフィーナに仕上げ教えたんで教える側が二手に増えて楽だ。

 蒸留酒の時だけ手順が多くなるんでボクが頑張る。ラムも蒸留酒。そして蒸留酒が半分以上。

「大変でしょうに。ほんとありがたいです」

「良いの良いの。実はイキシアで静かな酒場を持とうと考えててね。今作ってるお酒をどうしても仕入れたいんだ」

「凄い。あ、それならアイラさんのお店に優先的に入れますよ」

「それ凄い助かる」

 カクテルバーの事を話したら全員がボクの分を確保すると言ってくれた。これで勝てる。

 ここは果物も豊富だし繁盛…って。リキュールの事を話さないと。

「忘れてた!皆、聞いて!蒸留酒、今作ってる中で一番工程が多いお酒の事なんだけど、強い蒸留酒に果物と角砂糖を漬け込んで寝かせると果物酒って言う甘いお酒が出来るんだ!これはお酒造り、つまりアルコール造りには入らない!元からあるアルコールに味を移すだけだから!何が言いたいかって言うと、誰でも蒸留酒を買えば家で果実酒が作れるって事!」

「「えええええええええっ!?」」

「アイラさん!それマジか!?」

「大マジ!だからこれから角砂糖が馬鹿売れするよ!」

「うおおおおおおっ!あんた救いの女神だよ!」

「ありがてえ!ほんとありがてえ!」

 サトウキビ農家も大喜び。

 ちなみにリキュールの件はミシルガ町長さんとセシル町長さんが許可を貰う時に確かめて貰ってる。と言うか国側が解って無かったんで、味を移すだけなら良いだろうと言いくるめて貰ったよ。

 おかげで酒造量の制限が緩くなった

「ラムも蒸留酒だからね。果実酒にしやすいラムにすると馬鹿売れ」

「やっぱり救いの女神だあああああっ!」

「サトウキビ万歳いいいいっ!」

 サトウキビ万歳。知識万歳。

 ボクはアイリスの救いの神。

 さあ、どんどん仕上げよう!


「酒になったあああああっ!」

「美味しい!ほんとに葡萄酒!」

「お酒作れた!作れたよ!」

「「わあああああああああっ!!」」

 無事にお酒が出来て大喜び。

 試しに少し飲んで更に大喜び。

 材料を全て使い切るつもりでどんどん作って貰う。宣伝費と考えれば問題ない。

 ちょっとずつ配り始めた頃には植林を終えた冒険者達が戻ってきたよ。

「あああああっ!作ったの!?」

「ちょ、私にも頂戴!」

「アタイも飲みてえ!」

「安心しろー。まだ有るし、材料が尽きるまで作るぞー」

「「うおおおおおおっ!」」

 新しいお酒に吠える冒険者達。

 町のヒトの厚意で頑張ってくれたお礼に、と冒険者達を優先させてくれたよ。

「美味え!流石はアイラさんだ!」

「また飲んだ事無え酒だよ!」

「なあアイラさん!これイキシアにも入って来るんだよな!?」

「これから交渉するから待ってろ!」

「「おう!」」

 どれも美味しいだろー?

 ボクの家に無い酒が多いからな。

「って事で皆。イキシアとアッサムにも出荷してよ。三つの町で色々と提携する事が決まってさ。イキシアやアッサムから色んな新しい物が入ってくる様になるんだ」

「出す出す!売れるなら幾らでも出す!」

「三分の一ずつにしちまおうぜ!」

「あ、四分の一ずつで良いよ。アイリスをお酒の産地にもしたいから」

「「わあああああああああっ!!」」

「「よっしゃああああああっ!!」」

 良い形に纏まったところでボク用のお酒。

「助かったよ。飲んでごらん」

「はい!…はぅぅぅっ♪さっき飲んだラムと違う…♪」

 外から入ってきたって言うレモンも加えたすっきりで爽やかな甘味。お礼に一瓶プレゼント。

 サトウキビ農家にも飲ませる。

「頼む…っ!これも教えてくれ…っ!」

「教えるけど、レモンが必要だから流通ルートを何とか作って」

「行商人に頼む!これも造りてえ!」

 じゃあ教えよう。

 いつどれくらいレモンを入れるか教えるだけ。

 すぐ理解してくれたんで、ボク用のを手早く瓶詰めして樽を渡そう。レモンは町のヒトに買ってきて貰う。

「飲みたいでしょ」

「「飲みたい!!」」

 どうせ後で強請られるし、サトウキビ農家が作り出したから冒険者にはちゃんと飲ませてやる。

「美味しい!」

「何これ!ほんと美味しいんだけど!」

「アタイこれ好み!」

「良いなこれ!ストックしてえよ!」

「カクテルベースにも使えるから使い勝手が良いんだー」

 帰り際にサトウキビをしこたま買い込む。

 三本だけ確保して残りはくれてやろう。

 さて、そろそろ別の物を作るか。

 サトウキビ農家から普通のラムを一瓶貰い、ブドウ農家に掛け合う。

「乾しブドウって作ってる?」

「あ、はい。葡萄酒を教わったから減らそうって考えてたんですけど、使えます?」

「乾しブドウをラムに漬け込むと更に美味しくなるよ。ラムレーズンってんだけど」

「ほんとですか!?」

 そう言う訳でラムレーズン作り。

 魔法を使えばすぐ出来る。

「美味しい…っ♪」

「でしょ。パンの種に混ぜて焼くのも美味しい。用途が沢山あるから、むしろ畑を広げた方が良い。近々それに関する話しを持ちかけるよ」

「ありがとうございます!」

「そう言う訳でブドウを半分貰ってくね。ラムレーズンを使った美味しいデザートを作る」

「はい!」

 はい、ブドウも確保。ファリスとエアリはこっちに来なさい。ラムレーズン作りに使う魔法を教えるから作りなさい。

「うっわぁーっ♪凄く良い香り!」

「え、これでも材料なの!?」

「ふっふっふ。至高のアイスを作るぞ」

「「アイス!!」」

 次は冒険者諸君。材料を買ってきなさい。それと金属製のバケツを複数。沢山作る。

 そろそろアレの季節なんだー♪


 出来たーっ♪

「フィーナ。一口」

「あぅ♪…んううううううっ♪何ですかこの美味しさ!美味しすぎます!」

「でしょー♪ラムレーズンアイスって言うんだ。上品で良いよね」

 ラムレーズンアイスは大好物。

 ブドウにサトウキビと調査結果を見た時は舞い上がりそうなくらい嬉しかった。

 フィーナには後で沢山ご馳走するとして、一先ずは冒険者達。

「おぉいぃしぃいいいいいっ♪」

「何でこうアイラのデザートは私好みばかりなのよぉぉ♪」

「ちょ、これ美味えぞ!」

「酒のアイスも良いな!」

 そうだろうそうだろう。

 材料が無くなるまで作る。酒造の手伝いもしないといけないから、冒険者達に作り方を教えて作って貰おう。

 ブドウ農家とサトウキビ農家は先に食べさせてやる。

「あうううううっ♪美味しいいいいっ♪」

「うおおおおおっ!サトウキビ万歳いいいっ!」

「すっげぇ美味え…っ!アイラさんどこまでも女神だ…っ!」

 そう思うなら畑を広げよう!材料は幾らあっても良い!これは多目に作り置きしたい!

 親友もこれが大のお気に入りで、作り置きすると根刮ぎ持っていきやがるんでちまちま作るしか無かったんだよね。

 今は贅沢に作り置きして飽きるまで食べられるー♪

「フィーナ、慣れてきた?」

「はい。もう大丈夫です」

「じゃあこれ。片手間に食べて」

「あううっ♪ありがとうございますううっ♪」

 頑張ってるフィーナには大盛り。

 これを食べて頑張ってくれ。

 ボク用のラムを作ってくれた子猫ちゃんにも。

「え、これ、ここで!?定食屋にも!?」

「勿論勿論。ここの名物デザートにする」

「毎日でも通います!信じられないくらい美味しいですよ!」

「「おおおおっ!」」

 残りは町のヒトにあげよう。スプーンで一口ずつって事で。

 これからのアイリスにヒトを呼ぶ味を楽しんでくれ。

第六話了

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