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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第六話「淫魔さん、大活躍」
39/92

04-反対側の隣町にも-

 準備の方が少し遅れてる。

 やっぱりセルケナスの加工はヒトだときつい。

 練習してからだし、イルルに調査させたところ小さい巣が一つあった程度なんで余裕も有る。

「小せえと凄え魔法は無しか」

「いや、デカいの一発打ち込む。長く近寄らせない様にするのが目的だから。それに道中で魔物が多目らしい。冬篭もりの前準備が一番盛んな時期だからね」

 アイリスの冒険者が稼ぎ時だと頑張ってるらしいんだけど、拮抗状態みたいだ。

 ここで一気に覆せれば大分変わる。

「師匠。町長さんとミシルガ町長さんがお見えです。アイリスの町長さんもお越しになりました」

「「おおお!」」

 あっれ、来てくれたのか。

 イルルの奴、報せろっての。

「おお、貴女が」

「初めまして。変わり種のサキュバスのアイラです。遠いところをようこそお越し下さいました」

「な?丁寧なヒトだろう?」

「ああ。二人揃って太鼓判を押す訳だ」

 何かかなり擁護して貰えたっぽい。

 居間に通してフィーナにお茶を入れて貰おう。

「改めて。私はセシル。アイリスで町長を務めている。アイラさんの話はイキシアに行った町の者から聞いていたし、二人からも色々と聞かせて貰った。アイリスの者も殆どがアイラさんの来訪を心待ちにしているよ」

「うあ。それはとてもありがたい。見ての通り魔族なものですから、ヒトからの信頼を得るのが大変でして。平穏に暮らしたくて魔王城を抜けてきたので受け入れられるのは本当にありがたいんですよ」

 アイリスは上手く動けそうだなー。

 ほんとありがたい。幸せ。

「アランから町の調査をと頼まれた。アイリスにも助言を貰えると言う事だろうか」

「勿論ですとも。実は不自由の無いぐーたら生活が目標でしてね。欲しい物はすぐ手に入れたいですし、色んな物を手に入れて贅沢したいんです」

「く、くく…っ!何度聞いても…っ!」

「それでアッサムもか…っ!」

「ううむ、本当に面白いヒトだ。ああ、いや、面白い魔族と言うべきだろうか」

「ヒトで良いですよ。ボクにとってヒトも魔族も大差ありません。何かを食べて生き、子供を産み、そして死ぬ。それはどちらも同じなので」

 セシル町長さんも話が解る。ボクの言葉に感心しながら頷いてくれたよ。

 そして調査結果を見せてくれた。

「良いですね。想像以上だ」

「おおお…。どんな事が出来るだろうか」

 畑の面積がかなり広い。この辺りの食物庫と言える。アッサムと同規模の町なのに畑がアッサムより五割広い。

「セシル町長さん。まずミシルガ町長さんと酒造許可を貰ってきて下さい。酒の産地になります」

「本当かい!?」

「セシル、本当だ。アイラさんが断言したなら間違いなく産地になる」

「アッサムでも作れると言ってくれた」

「おおおおっ!」

 特に小麦と大麦生産量が物凄い。残りの酒を全部用意出来る。何よりサトウキビだ。

「これでサトウキビまで多いのは最高ですね。良いラムが出来る」

「「サトウキビで酒!?」」

 ラム酒の材料になるサトウキビ。カクテルのベースになるし、造り方次第ではそのままでも美味しい。

 しかもそれだけじゃない。

「砂糖を生産した時に出る残骸がラム酒の原材料です。砂糖の生産量を維持したままお酒を造れるのは大きいどころじゃない」

「素晴らしい!本当に素晴らしい!」

 無駄が無いんだよねー。

 ボク好みの調整も採用させよう。

「果物が多いのも良い。食の宝庫じゃないですか。穀物も揃ってる。リキュールを作り放題だ」

「それも酒なのかい…?」

「果物の酒だ。美味いぞ」

「悪魔ではなく救いの女神だ…っ!」

 中身は男だけどねっ。

 んー、セシル町長さんにもストックしてる酒を見て貰うか。

 イキシアの物だけで作ったんだよと。

「こんなに!?イキシアの物だけで!?」

「真面目に大麦畑を広げたい」

「解る。アッサムには三種類を広めてくれる事になったが、幾らでも広げたい」

 三人に少しずつ出そう。アラン町長さんとミシルガ町長さんはオマケで。

 そのどれもに喜んでくれた。

「アイラさん。良かったらウチの分を作ってくれないか?材料費も報酬も出す」

「うお。ずるいぞアラン。私も頼めないか?」

「出来れば私も是非」

「あはは。そろそろ追加しようと思ってたんで良いですよ。材料費だけ頂ければ。三つの町の物を使って更に種類を増やしましょう」

「「おおおおっ!!」」

 今度から四件分作るか。

 賄賂じゃないけど、胡麻擂りにはなる。

「ラムはほんと欲しいです。ラムを使ったアイスが最高なんですよ」

「おおお…。それは食べてみたいな…」

「前に頂いたアイスも酒を垂らしただけで格段に美味くなったからな…」

「ふむ?アイスと言うのは?氷だろか」

 バニラアイスも出そうかー。

 今回もブランデーを少し垂らそう。

「これは!なんて美味いデザートなんだ!」

「おおおっ!酒が更に風味を!」

「少しの酒でこれだぞ。そのラムを使ったアイスがどれだけ美味いか非常に気になる」

 しかも良い物を見つけたんだー。

 葡萄酒が無いのに葡萄が有るんだよ。

 ラムレーズンアイスが可能とかほんと最高。

「葡萄酒も作りましょうよ。ただの果物で出すには勿体無さ過ぎる生産量です」

「頼む!造り方さえ解ればとずっと考えていたんだ!」

 畑を広げても良いくらい。

 アーティファクトの農具を出して広げて貰おうかな。フラッパー付きで。

「アラン町長さん。年間酒造量の設定って確か畑の総面積が基準でしたよね?」

「ああ。畑を広げれば申告するだけで酒造量を増やせる」

 そうなるとアイリスの年間酒造量はかなり多くなるな。

 ここはあれだ。

「もう酒の産地で大展開しましょう。それだけでヒトを呼びますよ。料理と酒の町アイリス」

「頼む!本当に素晴らしい!」

 もう食い物特化で良い。絶対当たる。

 酪農がちょっと弱いのが気になるけど。

「アッサムの酪農家に乳製品をアイリスにも出荷する様に頼みましょう。これだと乳製品まで手が伸びない。逆にアイリスの食材をアッサムに流せばお互いに美味しい。正直物流はこの三つの町のみで展開しても良いくらいです」

 三つの町で大展開。それが可能なだけの揃い方だ。流石にそれはアイリスとアッサムが損をするんで三つの町それぞれが融通を利かせるって形にしたい。

 そのままボクが構想していた提携の事を全て話そう。

「救いの女神だ」

「ああ。本当に頭が上がらないでいるよ」

「全くだ」

 各産業の提携と魔法学校。

 冒険者の提携も構想の内。

「ここまで豊かだと見落としてる食材も多そうですね」

「見落とし?」

「郊外に食材が有るかもと言う話だな。アイラさんが指摘してくれたおかげで絹も麻も染料も見つかった」

「凄まじいな…。博識でも足りんぞ…」

 んー、イキシアの北西にあるんだよなー。

 平地だし、気候的に考えるとー。

「んー。香辛料が生息しやすい環境かな?」

「そこまで解るのか!?」

「ウチも新しい香辛料を見つけて貰えた。今栽培中だ」

 環境的に有り得る話。

 この辺りの気候は穏やかなんだよね。だから来たんだけど。

「この辺りって肥沃なんですよねー。嬉しいものばかり見つかるし。この辺りの環境じゃ珍しい物まで有る。ほんと王様大丈夫なのかな。学者を派遣すれば幾らでも稼げるレベルなのに」

 そりゃ為替相場も下がるわ。

 とにかく無能としか感じない。有り得ない。今の故郷の方がよっぽど頑張ってる。


 ミシルガ町長さんとセシル町長さんが王都に向かい、準備期間を延ばす事にした。

 セシル町長さんが戻ってから一緒にアイリスに行こうって事になったからだ。

 ちなみにインビジブルエアをセシル町長さんに託した。名前はセシル町長さんがシャルルと名付けてくれたよ。

 王都でこの一帯がどう見られてるか、同行して解る範囲で確かめて貰う。

「何事も無ければ良いんだけど」

「だねー。平和が一番」

「でも、アイラ。もし本当に攻めてきたらどうするんだい?町の防衛はケロス君達に頼むとして、どう陛下を黙らせる気?」

 お、アレス聡い。

 はっきり言わなかったけど気になったか。

「今後またボクやこの一帯を力尽くで何かしようとしたら、王都まですっ飛んでいって王都のど真ん中にグレーターエビルを放つと脅す」

「ぶっ!?それは、流石に、黙るよね…っ!」

 余程の馬鹿じゃ無い限り黙るでしょ。

 ミスリルレベルの武器や魔法の武器を完全に揃えた軍隊で何とか対抗出来るってレベルだ。

 弱小国家のこの国じゃ王都陥落までやれる。

「普通に交渉してきたら?」

「素直に行くよ。首輪は着けないけど。念の為ケロス達も呼んでおく。イキシアから離れて暮らすつもりは無いけど、人材育成くらいは手を貸すつもり。王様に恩を売れるなら売りたい」

 対等に交渉しようってんなら請ける。

 少しでも高圧的なら話は別。

「来いと命令されたら、謁見の間にグレーターエビルを呼んで肩に座ってから交渉するよ」

「ぶふっ!」

 何時でも殺すと見せ付けて謝らせる。

 命令を聞いてやる義理は無い。膝を折る事も絶対しない。今のボクは誰が相手も膝を折らない。

「見てみたいなあ。最強最悪の悪魔で倒すのに軍隊が必要とまでは聞いたんだけど、どんな奴なのか想像もつかない」

「んー。あいつに話もあるし、今呼ぼうか」

「え。大丈夫なの?」

 エナジードレインの許可を貰いたい。

 あいつなら許可してくれるだろうけど、ちゃんと許可を貰わなきゃ。

 工房の皆やフィーナを連れ、ビールを樽で持ち出そう。

「伝説の悪魔だぜ…」

「どんな奴なんだろうな…」

「良い奴だよ。契約してる奴の中で一番まとも」

 それじゃ呼ぼう。

 半分以上の魔力と貯蓄の三分の一とか言う莫大な魔力を消費して召喚だ。

【久しいな、我が主。…うおっ!?】

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 ボク達の二倍は有る背丈と体格。

 腕は四本、真っ青な毛並み。

 おどろおどろしくねじ曲がった大きく太い角。

 そしてのっぺりとした顔に真っ赤な瞳。

 これが最強最悪のグレーターエビル。

【ま、待て。待ってくれ主。何故このような状況で私を呼んだ。魔力や貯蓄は大丈夫なのか?】

「それに関して話があってね。あの時に比べて貯蓄が半分ってとこだけど問題無い。それより、酒と食い物を用意したから食ってよ」

【ぬおおおっ!?良いのか!?召喚された以上は食事など必要無いと知っているだろう!?食料が勿体無いではないか!】

 ほら、良い奴でしょ。

 強大故にプライドが高い種族だけど、それだけに契約出来た者に心酔してくれるんだ。

 呼ぶ度にボクの事を気遣って迅速に片付けて負担を減らしてくれるんだよね。

「いつも頑張ってくれてるのに何も食わせてやれないのは悪いと思ってたんだ。他の奴には食わせてるから尚更でさ。フィーナ、食料をありったけ使って料理を沢山用意して」

「解りました!」

【ぐぬぅ。多大なるご配慮に傷み入る。やはり主と契約出来たのは私の誇りだ】

「ボクもマイルフィックと契約出来て幸せだよ。あ、皆、紹介する。グレーターエビルの中でも一番強いマイルフィックだ。マイルフィック、彼等はここイキシアの冒険者や住人だ」

【宜しく頼む。そうか、我が主を受け入れてくれたか】

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 グレーターエビルだけは一番強い奴と決めて狙った。群れに突撃して他を皆殺しにしつつエナジードレインで搾り取ったのもマイルフィックに気に入られた理由。

【おおお!?これが酒と言う奴か!美味いな!】

「だろ。ビールって酒だ。近辺に無かったんでイキシアに広めてる」

【ううむ。流石は主】

 料理がくるまで掛かるし、話を先にしよう。

「本題に入ろう。いつもボクを心配してすぐ戻ってくれてた訳だけど、マイルフィック次第でその必要が無くなるんじゃないかと考えた」

【聞かせてくれ。出来る事なら何でもしよう。あまり主と話せないのは寂しいと思っていたし】

「ボクもだよ。言葉にするなら簡単だ。帰る前にギリギリまでエナジードレインさせて欲しい。そうすれば消費した分だけ貯蓄が増えるし、自分の魔力は休んで取り返せば良い」

【成る程、素晴らしい案だ。死なずに主の力になれる。そうなると消費如何で逆に私を呼んだ方が貯蓄が増えると言う事だな?】

「そうなるね。頼める?」

【喜んで精を捧げよう。主の糧になれるなら本望と言うもの。契約が解除されないのであれば尚更だ。是非とも私を使ってくれ】

 やっぱり許可をくれた。

 ほんと良い奴なんだよね。

 皆もそれが解ったみたい。

【イキシアのヒト達よ。改めて礼を言う。我が主を受け入れてくれた事に心からの感謝を】

「いやいや。アイラさんにゃ世話になりっぱなしでよ。俺達からすれば来てくれてありがとうと言いてえくれえだ」

「最初こそ驚いたけど、数日で皆も馴染んだよね。今では少し町を出ただけで寂しさを感じるほどだ」

【ははははは。それも良く解る。主の面倒見の良さは本当に魔族なのかと首を傾げる程だ。ただ力任せに戦っていた私に様々な武術を教えてくれたくらいでな。本当に頭が上がらん】

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 あったあった。

 契約してすぐの事だ。

 他のグレーターエビルから搾り取った精を使って呼び出し、あれじゃ折角の力が勿体無いだろと色々指南してる。

 それに喜んだマイルフィックもどんどん吸収し、今では並の悪魔族じゃ瞬殺されるレベルになってるよ。

「お待たせしました!マイルフィックさんが何を好んでいるか聞き忘れてしまったので、一先ず軽めの物を用意しました!」

【おおおお。わざわざ申し訳無い。そもそも食事をしなくても生きられる身故、どんな物でも食べてみたい】

「解りました!色々作ってきます!」

【ありがとう。…主、もしやあの娘は主の弟子か?】

「そそ、フィーナっての」

 周囲にはエルフと話してるんで、細かい事は念話で話す。魔力の感覚から気付いてたらしい。

【美味い…。こんなに美味い物がこの世にあったとは…】

「なー。ヒトの知恵ってのはほんと凄いよ。故郷じゃこんな美味いの食えないもん」

 フィーナの料理は美味いだろう。

 ただでさえ食い物を殆ど食わない種族だ。

 準魔族と言った性質で、生き物の精を吸って生きてる。知性が足りてれば中級魔族と呼ばれただろうね。

「そう言うもんなのか?」

「魔族の国って土地が痩せてんだ。魔族が力を使うと自分の消費を抑える為に周辺の魔力を吸い上げるんだよね。だから魔王城に近づく程植物が育たないんだ。食料が無くても生きられるからって軽く見すぎなんだよ」

【こうして食べると主の言葉を痛感するな。これだけで生きられるのなら、むしろヒトと言う存在が羨ましいとまで感じる】

「解るわー。淫魔とか最悪だぜー?ボクは規格外だからともかく、粘膜接触じゃないとエナジードレイン出来ないんだから。普通は粘膜接触するのに相手の合意を得るか、殺さず無力化しなきゃいけないんだ。面倒ったらない」

「「ぶふっ」」

【それは大変だな…】

 エロい事じゃ通じないからこう言ってみた。

 遠回し過ぎる表現だけど、周囲は意味を理解したね。

「淫魔ってそう言うもんだったのか…っ!」

「下級魔族で一番面倒な遣り方だよ。だから淫魔って貧弱なの。吸うの大変で力が出ないから。同じ下級魔族の夢魔は逆の意味で貧弱。寝てる奴の頭からエナジードレインして夢を見せる。簡単過ぎるから強くなる要素が全く無い。でも夢魔が超羨ましい」

「「ぶふぅぅぅっ!」」

【ははははは!主らしい!ぐーたら生きたいといつも言っていたものな!】

 生きやすくなりたいから夢魔から接触でのエナジードレインを教わってるんだよね。

 でも夢魔の真似をしてもエナジードレインに気付かれず夢を見せられないから起きてようが寝てようが大差無いって結果になった。

 それまでより楽ではあるし、アルゴニアの側近を殺せたから無駄じゃなかったんだけど。

「お待たせしました!」

【おおお!こんなに!】

「まだまだ作りますよ!」

「あ!ならあたしも手伝う!」

「私も手伝うわ!」

【忝い!】

 料理追加来たー。

 フィーナの素晴らしさを実感するのだー。

【本当に良いヒト達だ】

「うん。だからこそ守りたい。その時になったら呼ぶから力を貸して」

【喜んで貸そう。私も気に入った】

 念話で可能性の事を話そう。

 それにも快く引き受けてくれた。

 暴れる時は本気でとも。


 中々に良い報告が来たんでアレスに話す。

「シャルルから報告があった。王都ではこの辺りに新しい物が出回り始めたって程度にしか伝わって無いらしい」

「それはありがたいね。まだまだ大丈夫そうだ」

「うん。どうも実際に来たヒトがボクの事を黙っててくれてるらしいよ」

 この段階でそれなら余裕が有る。

 警戒は続けるけど、三つの町が提携して軌道に乗るまでは大丈夫だろう。

 念の為インビジブルエアを追加で三匹呼んで夜間巡回を頼むつもり。

「アイラのおかげで政治を理解出来る様になったから、この国の法律を見てるんだけどさ」

「アレスも頑張ってんなー。すっかすかでしょ」

「そう、本当にすかすか。僕も不安になってきたよ。お酒の許可を貰う時も酷いよね」

 あれも酷かったなー。簡単に許可が下りるの。

 町長さんが早く戻ってきて驚いたもん。

 見直したら上納金の上乗せに承諾して、後払いしても良いから一定の認証料を払うだけ。

 そんなんどこでも申請するっての。

「生活水準は平均的だから不満の声は上がらないだろうけど、政治に通じてる奴からすれば稼ぎ放題だって」

「そうそう。僕でも幾つか考えられたくらいだ。陛下に対して悪い噂は聞かないけど、流石に不安だって」

 だよねー。

 まあ、おかげでこの一帯は稼げるんだけど。

「仮にさ。陛下が良い国にする為の知恵を貸して欲しいと頼んできたらどう動く?」

「まず憲兵を総動員して憲兵自身を徹底調査。不正を働いてたら投獄。次に同様の方法で家臣全員の身辺調査。不正を働いてたら一族郎党処刑して財産没収。まともな家臣と政治学者を集めて強固な法律を作り、改革案も出す。没収した財産と余剰の国家予算を全解放して国民全員に行き渡る様に改革を進める」

「凄いな。即答でそこまで答えられるのか」

「アルゴニアを殺した後に使った手だよ。真っ先に必要なのは公正な司法と安定した暮らし。憲兵と家臣を潔癖な奴だけにすれば名声を得た上で公正な司法を作り易くなる。改革案は安定した暮らしに繋がる物を優先だね」

「例えば?」

 まず医療技術の普及。一子相伝を認めず、医者を集めて研究施設と学校を建てる。建てる時は一般人から材料確保のヒト手を集めてお金をばら撒く。

 次に農業政策。魔法使いに魔法肥料の作り方を教えて魔法薬品の普及を進め、国持ちで一回分を提供する。

「どちらも大きい…」

「でしょ。飯と医者が各地で保証されれば基盤としては十分凌げる。後は各地で特産品を使った事業を立ち上げさせて失業者を減らせば良い。これで十中八九持ち直す」

 現に故郷は順調に持ち直してる。再来年には完全に態勢を整え直せるはずだ。

 ここで解ってない奴が多いと思う事がある。

「奴隷なんかもそうだけどさ。労働者を増やして税金多く確保した方が得なんだよ。給料どころか名声まで上がるんだから」

「確かにそうだ」

 長期的に考えない奴が多すぎる。

 賄賂で一気に大金入ったからって何に使うんだろうと首を傾げるね。美術品でも集めてるんだろうか。それともアーティファクト?

 使いこなせない奴がアーティファクトを集めるとか、そんなん美術品集めと一緒だから。使ってなんぼな物なのに。

「ほんとアイラさん凄いねえ」

 あれ、ジャネット達だ。

「どうしたの?」

「アイリスの町長さんはいつ頃戻ってくる?」

「明後日には戻るよ。先にアイリスに行ってくれるの?」

「そのつもりさ。理解させておくから、魔法の鞄を見せる許可をおくれ」

「良いよ。悪いけど頼むね」

「「おー!」」

 本当にありがたいなあ。

 ジャネット達はボクの為に一番頑張ってくれてる。アレス達よりあちこち動いてくれるもん。

 後で何かお礼を用意しよう。

「明後日までに間に合うかな?」

「間に合うと思うよ。僕やフレキなんかもう出来たしね」

 おおう。二人とも努力家だなー。

 武器職人として食っていけるレベルだよ。フレキの引退後は安泰かも。

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