表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第一話「淫魔さん、人里に下りる」
3/92

03-町に到着-

 結果、楽勝。

「凄いです!討伐どころか巣まで潰すなんて!しかもサキュバスの捕獲まで!」

 語る必要が無いくらいにあっさりさくっと巣を潰せた。見張りを眠らせ、巣に爆炎魔法を放り込むだけの簡単なお仕事。

 見張りは一匹だけ見せしめに切り刻んで終了。

 これで数年は安心出来るし、また来ても同じ手口を使えば良いとアレス達に教えておいた。

 で、今はアレス達が依頼を請けたと言う町の冒険者ギルドで報告中。

「でも、巣の潰し方を教えてくれたのはアイラ、このサキュバスなの」

「そうなんですか!?」

 おっと、レンジャーの子が擁護してくれた。これはありがたい。

「捕獲で済ませてくれたから、そのお礼にね」

「アイラって面白いんだよ?捕獲だって自分から手錠着けてくれだし。魔法一発で巣を潰すくらい強いのに」

「ね。あれを見た時は僕も青ざめたよ。本気を出されたら僕達ではすぐに殺される」

 こらこらこらこら。それは逆効果だって。怯えさせてどうするの。

 こうなるとアレを出すしか無いのかなあ。

「それより、報酬貰えるかい?」

「あ、はい!えっと…」

 報酬は中々。巣を潰した事で本来の報酬の倍額が追加されたみたい。

「アイラ、巣の分は持っていきなよ」

「別に良いよ。さっき擁護して貰っただけで十分だ」

「良いから。この先どう稼ぐか見通しがつかないだろう?」

 うーん、確かにそうだし受け取ろう。

 思った以上にアレス達は良い奴等だなあ。

「稼ぐって、サキュバスがですか?」

「どこかの町の近くで静かに暮らしたいらしい。面白いだろう?」

「なんでまた…」

「さてね。取り敢えず父さんにあたってみるよ」

「ええっ!?」

 父さんにあたる?アレスのお父さん?


 どうやらかなりついてるらしい。

 アレスのお父さんはこの町、イキシアの町長さんだったんだ。

「馬鹿を言うな!魔族を匿うなど出来ん!」

「だよね。まあ、これが普通の反応だよ」

「うん、知ってた」

 で、当然ながらこうなる。

 普通に考えればどこだってこう。

 だから気長に構えるつもりだったよ。

「でも、一泊させるのは許して欲しい。アイラのおかげで暫くオークやゴブリンが近寄らなくなったんだ。言わばイキシアの恩人だよ」

「ぬう!?…詳しく話せ」

 成る程、それで。町長の息子ならボクに恩義を感じるのも無理は無い。次期町長と考えれば、それでも冒険者をやっていると言うのは町への愛や責任感を伺わせるし。

「…そうか。まず、すまなかった。後から聞いたとは言え、町の恩人に無礼な振る舞いをした」

「いえいえ。本来ヒトと魔族は相容れぬもの。町長さんのお怒りはご尤もです。早々に立ち去りますのでご容赦下さい」

「ふむ。成る程、アレスが連れてくる訳だ。面白いサキュバスだな」

「だろう?」

 あれ、何かすんなり落ち着いた。アレスの父親ってだけはあるのかな?妙に話が解る。

「町長。何ならあたしの家に泊めますよ。一人暮らしだし」

 名乗り出てくれたのはレンジャーの子。…はありがたいんだけど、それはそれでちょっと。

「アレス達には頼み事をしているので、それが終わるまで郊外で野宿する許可を貰えれば十分ですよ。頼み事もすぐ片付くはずですし」

「なにそれ。あたしの家じゃ不満なの?」

「そ、そうじゃないんだけど…」

 むしろ大歓迎なくらいだし。だからこそ困るわけで。

「ふむ。頼み事とは?」

「換金です。ポーションなんかのアイテムを売って生活費を稼ごうと思いまして」

「アイラが持ってるのって全部最高級品で、ここの道具屋で買い取れるか解らないんです。だから都まで行って、代わりにあたし達に換金して欲しいって」

「解らんな。何故そこまでしてヒト里で?」

「ひっそり暮らしたいんですよ」

 ここの道具屋が買い取ってくれれば楽だけど。イキシアは町に成り立てって言う、ボク的には理想の規模だから厳しそう。話の解るヒトが居るって点でも理想なのにな。

 とは言え先立つ物が無いと話にならない。魔族の通貨は使えないから持ってきてないし、金塊や銀塊なんかはそれこそ都に行かないと駄目と見て持ってこなかった。

「正直、疲れたんです。魔族内でも覇権争いがありましてね。先日漸く落ち着いたんですが、それを機に魔王城から抜けてきたんですよ。サキュバスとしては変わり種なもので、襲う襲われるの生活はもう遠慮したくて」

「確かに変わり種に思えるな。ふむ…」

 これは半分くらい本音。もう疲れた。争い事はうんざりだ。平和が一番。

「しかし、君は何が出来る?ヒトの暮らしに溶け込めるか?」

「一応、錬金術が。他にもそれなりの学が有るので、打ち解けられれば何とでも」

「え。錬金術って、自分でもポーションとか作れちゃうの?」

「材料さえ有ればね。工房を構えるのにお金が必要だから、どちらにせよ物を売りに行かないといけないんだけど」

 ちなみに技術は魔族一。伊達に魔王の右腕と呼ばれてない。

 他にも様々な産業の知識を持ってて、親友の道に一役も二役も買ってると自負してる。

 弟子も多く、だからこそ抜けられたとも言う。

「よし、解った。泊めてあげなさい」

「はーい!」

「え、ちょ、野宿で良いんですけど」

「良いから良いから!」

 参った。これは参った。やっぱりアレを使うしかなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ