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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第五話「淫魔さん、支援に奔走する」
29/92

02-繊維と染物と-

 翌日からはフラッパーを出す。

 ミシルガ町長さんが冒険者を二人くらい連れてくると思ったんで、ボクとフィーナのとは別に折り畳み式で何台か持ってきてた。

 ミシルガ町長さんは写本に専念してるんで、バランだけを連れて行く。…はずだったんだけど。

「ミシェルも乗りたいー!!」

「こら、ミシェル。アイラさんを困らせるんじゃない」

 ミシルガ町長さんの娘さんが駄々をこねた。

 まだ十歳で可愛らしい女の子って感じ。

「ボクで良ければ連れて行きますよ」

「ほんと!?」

「む、むむ。甘やかさなくて良いのだが…」

 空飛ぶ乗り物って聞いたら気になるよね。

 ミシルガ町長さんが乗る様になったとしてもまだ予備が有るから乗せてあげよう。

「すごーい!パパ、見て見てー!浮いてるー!」

「気をつけて乗りなさい!…アイラさん、申し訳ない」

「構いませんよ。実はあれも将来的にイキシアで販売する予定でしてね」

「なんと…。値段次第では私も欲しいぞ」

 普通ので三万、折り畳み式は五万予定。

 折り畳み式だと金属の部品が多いんで高くついたんだよね。

 そんなこんなでバランやミシェルを連れ、四人でふよふよ町を飛ぶ。

「アイラさん凄い!空飛ぶ乗り物に乗ってる!」

「ほんとだ!アーティファクトかな!」

「空飛ぶアーティファクトとか凄え!アーティファクトを見たのも初めてなのに!」

 当然注目される。驚かせられて良い気分。

「これは楽で良い。某も欲しい」

「折り畳み式だと魔法の鞄で持ち歩けるから凄い便利だよ」

「そこだ。町の移動くらいは楽をしたい」

 戦闘の事を考えると旅には不向き。

 でも大きな町とか都になると凄い便利。

 んー、帰る時に予備のをあげちゃうかな。

 バランのはそのままあげよう。ミシェルの前では言わないけど。

 さて、目当ての場所に到着だ。

「おおお!アイラさん!」

「ようこそお越し下さいました!」

「お邪魔するね。いつもアッサムのお茶を飲んでて、茶畑は絶対支援するって決めてたんだ」

「「おおおおおっ!!」」

 茶畑は最優先。

 季節外れなんで殆どの葉っぱが収穫されちゃってるんだけど。

「イキシアで魔法肥料を作ってるのは知ってるかな」

「勿論です。こっちに入ってくるので、ウチは全ての木に使っています。安くて助かりますよ」

「他の畑で出来た物が例年より良くて。もう他の薬品は使えません」

 お、魔法肥料を導入してる。

 来年の茶葉が楽しみだな。新茶で欲しい。

「ここで扱ってるお茶って紅茶だけかな」

「紅茶?他にもお茶が有るんですか?」

「あー、えーと、確かに色んな品種があるんだけど、加工の仕方は一つだけかなって」

「えと、はい」

 やっぱりなー。

 あれ世界でも珍しい方だしー。

 頼んで中途半端に切れてる葉っぱを全部収穫して貰おう。ちょっと萎びてるけど何とかなる。

「アイラおねーちゃん。何するの?」

「あの葉っぱで違う味のお茶を作るんだよ」

「へー。美味しい?」

 ミシェルにはまだ早いかなー。あれが主流の場所だと逆に紅茶が無いんで子供も飲んでるけど。

「同じ葉で違う味か」

「うん。緑茶って呼ばれるお茶だ。バランなら気に入るかも」

 そんなに多くなかったみたいで、すぐに農家が戻ってきた。そこから更に使えそうな物を選ぶ。

 選んだら家にお邪魔して加工しよう。

「おお…。違う香りだ…」

「こんなやり方も有るのね…」

「良いな。某に合いそうだ」

 この加工法の利点は早く出来る事。

 紅茶みたいに乾燥させないからだ。

 いれ方は大差無いんで、加工した物の半分を普通の茶器でいれる。

「おおお!」

「すっきりして美味しい!」

「やはり合う!これは良い!」

 中々に好評。ミシェルだけは別だけど。

 緑茶はそのまま飲むのが普通なんで、紅茶に砂糖を入れてたミシェルには合わないと見てた。

 フィーナは普通に喜んでくれてるね。

「来年はちょっとで良いから販売してみて。売れ残る様ならボクが全部買うよ」

「解りました。店に頼んで試飲用を出して貰いましょう」

 試飲出来るとまた違うね。

 さて、次は残りの半分を更に加工。

 魔法も駆使して粉状に。

 出来たらコップに入れ、水で薄めれば良し。

 今回は砂糖を入れても良い。

「おおおおっ!?」

「これも美味しいわ!」

「冷えたお茶はどうかと思っていたが、これはまた別だな!」

「これ好きー!甘くて美味しいー!」

 こっちはミシェルもにっこり。

 夏場はこれの方が良い。

 他にも夏に最適なお茶が有るけど、それは夏が近づいてから教えよう。


 次はギルド。

 確保を頼んだ植物は土ごと掘り返してギルドに持ってきてくれと頼んであった。

 そして来たよ。

「アイラさん!これが絹の蛾か!?」

「それそれ!カイコガってんだ!こいつを繁殖させれば絹が出来る!」

「いやっほーう!お宝発見だぜ!」

 カイコの飼育法も教えないとね。

 虫が平気なヒトを後で集めて貰おう。

「こいつの幼虫が作る繭が絹になるんだ。繭になったら乾燥させて煮込んでカイコを殺し、残った繭から絹糸を取り出す。どこであっても高級品だから、態勢が整ったら捕まえるのを手伝ってあげて」

「「おう!」」

 野生のカイコガはかなり珍しい。普通は豚みたいに家畜として交配させた物だ。

 何にせよ見つかった以上は家畜にする。

「おおー。助かるよ。結構あったなー」

「まだかなりあったぜ。これで足りなかったらまた掘ってくる」

「畑を作るってなったら手伝ってあげて。これ等は今から使う。どうなるか気になる様なら運ぶの手伝ってよ」

「「よっしゃ!」」

 本来の目当ては麻や染料。

 綿の加工工場に持っていって実験だ。

「えええっ!?麻糸に絹!?」

「本当ですか!?」

「うん。絹は虫から作られる物だから後で飼育法を教えるつもりだけど、麻は別。それから染め物用の良い素材が周辺で見つかった。悪いけどヒト手貸してよ。試そう」

「「はい!」」

 麻の加工は後回しにして、先に染色。

 来る途中で綿布を何枚か買ってきた。

 基本的に染色はお湯で煮込むんだけど、今回は例外の方が多かったりする。

「まず、この花とこの花は花を取る。こう」

「「はい」」

「「おう」」

 ベニバナとか緑染めの花は花を取って水に浸して揉む。少ししたら水を捨てて、新しく汲んだ水に浸して揉む。大変だから冒険者に水汲みを頼もう。

「あれ。なんか花の色が変わってきてねえか?」

「ほんとだ。俺のと少し違う」

「これ元の色だよ」

「「おおおっ!?」」

 繰り返していくと色がかわっていく。

 解りやすい様に一つずつ残しておいた。

「この種類は水に溶ける色素と油に溶ける色素の二つで色を作ってるんだ。そして用があるのは油に溶ける色素。こっち赤でこっち緑。元の色からそうだって解るでしょ」

「「うんうんうん」」

 水性の色素を落としたら一つに纏めて水分を落とす様に搾る。踏んでも良い。搾ったら魔法を使って発酵と乾燥。普通のやり方も教える。

 ここからが本番だ。

「糸や布をこれと一緒に煮るんだけど、しっかり定着させる為に必要な物がある。まずはそれを作ろう」

 最後の仕上げに使う物からかな。途中で買った梅の実だ。焚き火を用意してその煙で燻す。やっぱり魔法で促進。

 梅の加工が終わったら、燻す為に使った焚き火の残骸をお湯で煮る。

「面白えな。それも使うのか」

「うん。これで出来る灰汁があの赤や緑の色を糸や布に移してくれるんだ」

「「へええ」」

 灰汁作りの横で買ってきた綿布を煮る。

 ある程度煮て水に馴染んだら加工した花を投入する。ことこと煮よう。

「灰汁を入れるよー」

「「…おおおっ!」」

 灰汁の成分が色素を溶かして布に染み込む。中々に綺麗。やっぱり稼げるな。

 かき混ぜてしっかり色を染み込ませたら加工した梅を投入。そしてまぜまぜ。

「綺麗だねえ。こうやって色を付けてたのかい」

「仕上がりはかなり綺麗だよー。花の質も結構良い。…こんなとこかな」

 加工した梅の成分が色素を布に定着させる。

 定着したなと見たら引き上げよう。

「「うおおおおおっ!!」」

 うん、ばっちり。鮮やかな赤と緑。

 色素を落とした花の色より鮮やかだ。

 魔法を使って乾かそう。

「これの服欲しい!」

「凄い綺麗!」

「ちょ、マジで植え替え手伝う。売れるって」

「あんな鮮やかな色の布は初めて見たぜ」

 これは僕も欲しいなー。

 融通利かせてくれると凄い助かる。

「見事。良い物を見せて貰った」

「おねーちゃん凄い!綺麗!」

「ここから先、つまり裁縫となるとからっきしなんだけどね。名産品を作るならここまでで十分な知識でしょ」

「「うんうんうん」」

 染色をどう運営するか考えて貰って、決まったらミシルガ町長さんの家に来て貰おう。

 畑を広げたりしないといけないし、これから就職ってヒトや失業者も集めないと。

 取り敢えず藍染と麻糸の作り方もやって今日は帰ろう。


「素晴らしい!実に見事だ!」

「ええ。某も感服しました。アイラさんは本当に素晴らしい英知を持っている」

 ミシルガ町長さんが大喜び。

 鮮やかな赤、藍、緑の布と麻糸に大興奮。

「素敵…。これで服を作れたらどんなに素敵なのかしら…」

「綺麗だよね!」

 奥さんやミシェルも喜んでくれる。

 喜び様が気持ちいいね。

「これも素晴らしい…」

「来年からこれも用意するとの事。某はこちらの方が好みです」

 緑茶も好評だね。粉末にした物も喜んでる。

「何より雇用枠が一気に増えた事が素晴らしい」

「ここにとって新しい事業ですから、誰であっても新人として雇えます。まだ他にも見つかるかもと考えると、逆にヒト手不足になるかもしれません」

「ありがたい事だ…。アランが頭が上がらないと言ったのも心から頷ける」

 ここは普通に恩を売る形で良いな。

 本気で尽力したいと思えるのはイキシアだけ。

「帰る途中で仕立屋にも寄ったんですけど、王都から入る物や他の産地の物より上質だと太鼓判を押してくれました。今後染め物はアッサムの主力産業になるでしょう」

 それでもお隣さんは贔屓。特に子猫ちゃん向けの産業は幾らでも助ける。

 良い服を贈るのは義務。

 あ、そうだ。

「ここって宝石店があったりします?」

「有るには有るが、宝石細工にも通じているのかい?」

「いや、単純に買いたいだけです。ここだけの話、魔法の杖の肝となる物質を宝石代わりに取り付けたら持ち運びしやすいかなと考えていましてね。イキシアには無いのでどこかで買いたいと考えていたんです」

 アクセサリーを買っていこう。

 職人も居る様なら紹介して欲しい。腕輪が欲しいだけなんで頼めるなら頼んだ方が良い。

「良いなー。ミシェルも魔法を使ってみたーい」

「無理な事を言わないの」

「使える様にしてあげようか?」

「ほんと!?」

「そんな事までご存知なのですか!?」

 はい、各種用紙。

 バランも使えないらしいからやらせる。

「本当だぞ。私もやらせて貰ったのだが、神官になれるかもしれないそうだ」

「ううむ。やはり博識でも足りませんな」

「イキシアのヒトのおかげで魔力を持たないヒトに魔力を与える事が出来るようになりました。バランもやって。やれば普通のアーティファクトを使える様になるし、成長すれば魔法だって使える様になる」

 あ、ミシェルと奥さんは魔力を持ってる。奥さんは魔法使い寄りだ。ミシェルはまだまだかな。

「おおお!これが魔力!」

「そそ。もう少し感じて。感じたらミシェルや奥さんがやった用紙ね」

「解った!まさか私が魔法を使える様になるかもしれないとは…っ!」

 あー、フラッパーを調整して使用者の魔力を消費する形にするか。乗り回してれば育つだろ。

 魔力測定装置を二枚使ってそれぞれの家に保管して貰えば良い。

 素質が生まれたら連絡を入れて貰って、それぞれに有用な魔法込みで情報を流そう。

「将来的にイキシアで魔法学校でもと裏でアラン町長さんと話してましてね」

「魔法学校!学費は幾らだろうか!」

「税金から積み立てるので、イキシアに四年定住すればタダです。アッサムでもやります?」

「やらせて欲しい!本当に素晴らしいよ!」

「今度はタダで魔法か…っ!」

 外から通いに来るヒトを考えて、学費の算出も考えてるんだけど。宿住まい確定なんでどうかなと迷ってる。

 アッサムも続くなら教師役を寄越して貰わないと駄目だね。

 建てると本決定したらミシルガ町長さんに伝えるとしよう。

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