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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第三話「淫魔さん、人助けをする」
18/92

04-ローン返済の算段を-

 早くも家が建ち、後は内装って段階まで来た。

 町長さんから記録の事を聞いたらしく、研究室より優先してくれたんだ。

「悪いねえ」

「いやあ、町長の話聞いて急がねえとと思ってな。ああ、いや、記録を見せて貰う為ってんじゃねえんだ。凄え記録ばっかだからちゃんと置く場所を用意すべきだと町長がな」

「そっか。どの記録も魔法で強化してあるから保管は大丈夫なんだけど、そう言ってくれると助かるよ」

 町長さんはよほど感動してくれたらしい。

 政治経済の本を貸したら大真面目に遠慮されたしなあ。押し切って貸したけども。

「勝手だが書斎の本棚は作らせて貰うぜ。俺達からのささやかなお礼って奴だ」

「うあ。ありがとう。それ頼もうと思って来たんだよ。量が量だから下手なの使えなくて」

「だろうな。町長から話を聞いたってのも呼ばれての事でさ。アイラさんから借りたって言う記録を見たが驚いたぜ。あんな分厚いのが百冊単位で有るんだろ?」

 本棚も用意して貰えるかー。

 特注確定だから困ってたんだよ。

 書斎に入れて貰って記録を積もう。

「…予想を遥かに超えてきやがった。どれも町長が借りた本より分厚いじゃねえか」

「政治経済の研究はわりと早く切り上げたからね。こっちが平均」

 ここは贅沢させて貰おう。

 書斎はまだ納めきれれば良い。

 出来れば大まかにでもジャンル分けしたいけど、それは研究室が空いてからで。

「そこらの学者さんでも追いつかねえんじゃねえか?」

「無理無理。決定的に研究時間が違う。ここは寿命の問題でもあるんだけど」

「うぅむ。そりゃ広い研究室が必要になる訳だぜ。やっぱジャンル分けしてえだろ?」

 解ってくれて嬉しいよ。

 ほんとジャンル分けしたい。

「ちと持っても良いか?」

「あ、うん」

「…重っ。んー。奥行きがこうだと…」

 寸法を測る、とは違う?

 あれ、二冊並べた。

「アイラさん。手前と奥の二段構えにしねぇか?手前は全体の半分で、左右にずらせる形だ」

 あ!

「出来るならお願い!それなら大まかでもジャンル分け出来る!」

 収納力が五割増しになる!

 それは是非とも!

「鍛冶屋に声を掛けてくる。金具使った方が長く使えるしな」

「そう言う事なら魔法も活用しよう。自重緩和魔法で手前の本棚を軽くして、摩擦調整魔法でツルツル滑る様にするんだ」

「良いなそれ!他の事でも使える!」

 かなり使い勝手が良くなりそう。

 耐久性も魔法で上げて摩耗を防ぐと尚良し。

 埃が溜まらない様に除塵魔法も必要かな。

 これは期待しちゃうぞー。


 そろそろアーティファクト工房の態勢が整うんで、冒険者ギルドに顔を出してみる。ちょっとした調査。

「暇な奴来てー」

「「おおお?」」

 まずは冒険者を集める。全員来た。

「何でも良いからアーティファクトを持ってる奴に会った事ある奴居る?持ってる奴も」

「それなら俺会った事あるぜ」

「俺持ってる」

「「おおお」」

 持ってる奴居た!

 取り敢えず持ってる奴に会った事ある奴に。

「その持ってる奴って買ったのかな。買ったなら幾らでとか聞いてない?どんなの持ってた?」

「ライターとか言う火を付ける奴だった。二十万って言ってたな」

 うえ。火を付けるだけで二十万かよ。

 幾らなんでも高すぎる。

 次は持ってる奴に。

「俺はこれ。カンテラって言う灯り」

 カンテラ!彼が持ってたか!

「幾らで手に入れた?」

「五十万。良い装備が欲しくて貯めてたとこだったんで買えたんだが、アーティファクトなんか滅多にお目に掛かれねえから即決だったぜ」

 数十万となると大金だもんなー。

 この近辺の討伐系だと精々一匹五百から千ってとこだし。

 んー、そうなるとだ。

「この鞄見て。物が沢山入るアーティファクトの鞄なんだけど」

「うおおっ!何だこれ!凄えな!」

「こんなの初めて見た!」

「ほんとにアーティファクトの鞄だよ!え、アイラさん!幾らで買ったんだい!?」

 よし、思い切り食いついた。

 鞄なら誰でも使い道が有るからこうなるとは思ってたけど、冒険者だと尚更だよね。

 回復薬とか討伐の証拠とか。これなら予備の武器も入れられるし。

「ボクが作ったんだ。皆の鞄を五万でアーティファクトにするって言ったらどう?」

「「五万!?」」

 これは即決でしょ。

「た、頼む!凄え欲しい!」

「破格でも済まねえよ!」

「作れるヒトなんて初めてだよ!ほんとに五万で良いのかい!?」

「これはまだ秘密にして欲しいんだけど、近い内にイキシアでアーティファクト屋を開くつもりでさ。価格調査の一環でも有るんだ」

「「うおおおおおおおっ!?」」

 相場が知りたかったし、どんな物が冒険者に必要なのかも知りたい。

 全員が希望したんで改良しながら色々と所持品を見せて貰ったよ。中身が有ると改良出来ないからね。

「凄えええっ!アイラさんマジ凄え!魔法の鞄になった!」

「マジだよ!やっぱ五万破格だって!」

 喜んでる彼等を横目に改良しながら所持品を確認。必需品なら大勢が持ってるからわざわざ聞かなくても良い。

 やっぱり火打ち石とか水筒、カンテラは皆持ってるね。これは好都合。

「魔族ってアーティファクトも作れちゃうんだねえ…」

「ああ、いや。ボクが研究したからだ。今はボクが広めて魔族の国でも作られる様になったけど、そもそも魔族は皆魔法が使えるからね。魔法の鞄は別だから馬鹿売れしてるかな」

「「おおお…っ!」」

 よし、改良終わり。

 でも持ち物を入れるのは少し待ちなさい。

 まだ続きが有る。

「他のもアーティファクトにするよ。ライターとか水筒とかカンテラとか有ると便利でしょ」

「「うおおおおおおおっ!」」

 カンテラを見せてくれた奴には悪いけどね。

 こう言ってやれば良い。

「ちょっとカンテラを使ってみてくれる?ボクの改良の方が質が高いなら遠いところで売り捌いちゃえ」

「お、おお!こんな感じなんだが!」

 …これで五十万とかぼったくりだろ。

 明るくなるけど普通のカンテラと大差無いじゃんか。これでも便利ではあるけど。

「ライター二万、水筒とカンテラは三万でどうかな」

「「頼む!!!」」

 精々こんなとこだろー。

 実際の販売価格は普通の物の値段にその額を追加って事にしようか。

 取り敢えずカンテラから。

――パッ。

「「うおおおおおおおっ!」」

「俺のより明るい!俺のは王都に行って売る!」

 本物の色に近づけつつ、本物よりずっと明るく光が灯った。やるならこれくらい欲しい。

 採掘班に持たせたカンテラは全部こう。

 ライターは手頃な刻む物が無いから後回しにして、水筒をやろう。

 まず一つ作り、カンテラを持ってた奴に頼んで使って貰う。

「これも便利だ…っ!」

「魔力消費はどう?カンテラと比べて」

「あまり変わらねえ!十分使える!」

「「…あ」」

 あ、何人か魔力を持ってないっぽい。

 先に言っておこう。

「これもまだ秘密にして。魔力を持ってないヒトに魔力を与える技術も開発した。持ってないヒトも安心してよ」

「「うおおおおおおおっ!?」」

 魔力感知用紙を持ってくれば良かったな。今度から持ち歩こう。今は受付から紙を貰って作れば良い。魔力測定用紙の分も貰ってこよう。

 これに魔法を刻んで、またカンテラを持ってた奴に頼む。

「これに意識を集中して。魔法陣が出てくるから魔力を持ってない奴はそれに触れて。触れてると魔力を感じて得る事が出来る」

「わ、解った!…出た!魔法陣!」

「うおお!俺!俺一番!…マジだ!何か感じるよ!これが魔力か!」

「「うおおおおおおおっ!」」

 少ししたら魔力測定用紙。反応が無かったらもう一度魔力感知用紙と説明。

 一人目が魔力を得たのを確認したら改良に戻ろう。

「ほんっとアイラさん良いヒトだねぇ。アタイにも魔力が生まれるなんて夢にも思わなかったよ」

「「うんうんうん」」

「あはは。魔族にも良い奴悪い奴と色々と居るもんだ。悪い奴って言うか好戦的?ヒトを見下してるとかね」

 まだ少し魔族側の意識改革が足りない。

 少しずつ理解を得てるんだけども。

 ヒトを襲うから恐がられる。これまで悪行を積み重ね過ぎた。

「あ、既に魔力を持ってるヒトも魔力測定用紙を試してみて。それ魔法使いの素質や神官の素質も見極められるんだ。魔力の量が一定以上だと魔法使いや神官になれる」

「「うおおおおおおおっ!」」

 こうなると属性感知用紙も必要か。もう二枚貰ってこよう。

「あ、アイラさん!魔法陣が出た!これが素質有りって事か!?」

 お、カンテラを持ってた奴が素質有り。

 カンテラのおかげかな。

「それは魔法使いの素質だね。カンテラを使ってたからだろう。魔力を消費していくと少しずつ魔力が増えるんだよ」

「買って良かった…っ!五十万でも魔法使いになれるなら損しねえ…っ!」

「「うんうんうん」」

 皆もこれから魔力量を成長させられると気付いて期待顔。ちゃんとなれるぞー。

「魔法を使うには基礎を覚えないと駄目だけど。はい、今度はこれ。魔法使いの属性を感覚的に掴む用紙と、神官の属性を感覚的に掴む用紙。まだ素質が生まれなくても、これでどっちよりになるか解る」

「「うおおおおおおおっ!」」

 それじゃ、今度こそ改良に戻る。

 刻むのは簡単な魔法ばかりだからすぐだ。

「反応した!魔法使いか!」

「俺神官!回復魔法使いてえ!」

「あ、アイラさん!どっちも反応するんだが!」

「魔力量が低いとまだ方向性が定まらない場合ってヒトも居る。属性の方を使い続けてれば定まるから好きな方を選びな」

「なら神官!俺も回復魔法使いてえ!」

 だから、基礎を覚えないと使えないって。

 んー、ギルドの商品として売ってみるか。

 後でファリスやサーディスと相談して、ここの秘密商品にするかな。

 よし、改良終わり。

「鍛冶屋に行こう。ステンレスの棒を作ってもらって、それをライターにする」

「「ああ!」」

 アーティファクトのカンテラを持ってた奴も途中でカンテラを買って改良してやろう。


 いやー、儲かった儲かった。百万くらい稼げたよ。アーティファクト万歳。

 ファリスとハーディスに声を掛け、フィーナも呼んでエアリの家へ。

 まずはフィーナ。

「はい、フィーナ。お小遣い」

「え!?い、良いんですか!?」

「うん。将来の為に半分は貯金しな」

「ありがとうございます!うあ、こんなに!」

 十万のお小遣い。給料って言うと、まだ勉強中なんで遠慮するかもと思ってお小遣いって言う。

 収入が全くないのは困るしね。

 渡したらギルドでの事や基礎の販売なんかを話そう。

「有りじゃな。基礎だけでも違う」

「構築理論は要らないでしょ。魔法の情報をギルドで買うだけで使えるし」

「んじゃ、それぞれ纏めてくれる?それを複写魔法で複写してくから」

「そんな便利な魔法まで有るのね」

 紙一枚分だけどね。

 大変過ぎるから記録の複写には使わない。

「十万くらいなら売れるよね?」

「売れるじゃろ…」

「馬鹿売れよ…」

「ならギルドに一万。複写でボクに一万。残りは二人にそれぞれでどう?」

「十分過ぎる!良いのか!?」

 基礎なら既に二人とも知ってた物だし、問題無いでしょ。

 もう一声有ると定期収入になるかなー。

「各種用紙も秘密メニューに入れちゃうか。魔力感知に十万、魔力測定や属性感知は何度もやる必要が出るから無料」

「基礎と合わせて二十万か。払えるじゃろ」

「払えるわよ。絶対安いわ」

「安いよー。アイラに魔力を貰えなかったら借金してでも払ってたー」

 ギルドと相談かね。

 会議室を使えば機密性を保てる。

 んー、ギルドに確認して魔法の情報も売るか。

 ギルドの役員に複写魔法を教えた方が良いかもしれない。ボクの収入無くなるけど。手間を考えるなら教えるべき。複写した役員に一万なら全員が覚えようとするでしょ。

「でも、良いなー。皆安定収入でー」

「そんなに量が出るものじゃないけどね。常連専用メニューだし。それでも安定収入に変わりないか。エアリも副業に手を出したら?弓を作って武器屋に売るとかさ」

「あああ!売ってみたい!」

「鍛冶屋もステンレス武器で手一杯だから、武器屋と一緒に相談してごらん」

「そうする!」

 ファリスとサーディスが色々と手伝ってる関係でアレスのパーティの出発頻度が落ちてる。

 エアリは魔法薬工房に行くし、アレスとフレキも採掘の護衛に行くから問題無いと言えば問題無いんだけど。

 冒険者家業での経験を別の稼ぎに繋げてみても良いと思う。お金は幾ら有っても良いんだし。

 あ、お金と言えば。

「確かヒトの国のお金って、国によって違うんだったよね?」

「うむ。国境付近の町で両替するのが普通じゃ」

「そのお金の価値って国ごとに違う?例えばこの国のお金より隣国のお金の方が価値が有るとか。両替すると数字的に増えたり減ったり」

「うむ。為替相場と言う奴じゃな」

「この国のお金は他と比べてどうだろう」

「ふむ。流石にそこまでは解らんな」

 やっぱりそう言う事情だった。

 んー、イルルを呼ぶか。

 フィーナにもそろそろ会わせたいし。

【出番かしらぁ?】

「はぅうっ!?」

 まずは紹介。害は無いから安心して。

「サーディス、やっぱ両替は銀行?」

「銀行じゃ」

「よし。イルル、もう少し召喚するから、近隣の国の銀行に忍び込んでくれる?」

 為替相場の事を説明。場合によってはかなりの商機になる。

 両替の瞬間を観察するだけで良い。

「この国のお金がその国のお金で幾らに両替したかで良い。一回でも見付けたらデザートをしこたま食わせてやる」

【本当!?行く行く!プリン食べたい!】

「プリン以外にも美味しいデザートを作ってやるよ」

 それじゃ隣国の数だけ同族を召喚。

 その全員に仕事内容を教えてデザートの事も話してやる。イルル以外に食わせた事は無いけど、イルルの様子を見て乗り気になってくれた。それはもう凄い勢いで飛び出すくらいに。

「どう言う事じゃ?」

「奴隷制度とか酒造法を見て、この国大丈夫かと心配しててさ。でもそれって、もしかしたらこの国のお金は他より安いって事に繋がるかもしれないじゃん?」

「ふむ。確かに」

 ここからが重要。

 良く聞いて欲しい。

「周辺国で一番お金が高い国でさー。アーティファクトを売って、この国のお金に両替したらボロ儲けなんじゃないかってー」

「おおおおおっ!?た、確かにそうじゃ!」

「いけるわ!他所じゃアーティファクトは絶対高いもの!」

「ずーるーいー!あたしも売りたいー!」

「はわわわっ」

 イルル達の報告に期待しよう。

 ここのお金が安かったら、ここの王様に感謝してやろう。無能っぷりに乾杯してやる。


 一週間程して、町長さんの家にアレスのパーティを集めてみた。

「まず、紹介します。ボクが召喚したインビジブルエアのイルルです」

【初めましてぇ♪】

「イルルちゃん!おかえり!」

 アイアンホークと契約した時に召喚魔法の事を話してるんで普通に契約。

 それでも一応って事で、イルルには透明になって貰ってた。

 これがどう言う事か解ってる面々は期待一杯って表情になったし、何気にイルルを気に入ってくれてるエアリは大喜び。

 他の同族も戻ってきてるんで姿を見せさせる。

「イルル達には周辺国の銀行へ偵察に行って貰ってました。為替相場を調べる為です」

「ふむ、為替相場か。しかし何故だ?」

「一番相場が高い国でアーティファクトを売り捌いたら、この国のお金に変えれば儲かります」

「成る程!確かにそうだ!」

 フレキが解らないような感じなんで説明。

「ほんと色々と考えるな…」

「ふと思いついただけだよ。で、この国のお金は結構安いみたいなんですよね。法律とか奴隷とか見れば納得出来るんですけど」

 この国のお金を百出して、他では平均的に八十くらい。これだけでも大きい。

「運が良い事に、ここから一番近い隣国が一番高いようです。ここの百は六十ですね」

 どんだけ貧弱なんだと苦笑いする以上に喜んだよ。暗君に乾杯だ。

「で、アレス。フレキとエアリを連れて隣国まで売りに行ってくれない?売り上げの一割出す」

「行こう。美味しすぎる」

「美味すぎだって。どれくらい売るんだ?」

「数によっては一割を三人で山分けしてもかなりの稼ぎになるよね」

 魔法の鞄なら百万でも売れそうだし、他の簡単な物でも数十万は堅い。んー、そうだな。五千万くらいを目指して用意してみようか。

 その分売る場所を梯子して貰う事になるだろうけど、数十万から百数十万の山分けなら諸経費を引いても十分過ぎる稼ぎになる。

「エアリ。ポーションはどこまで行ってる?」

「青まで作れるようになった!ネクタルも!売れるかな!?」

「売れる売れる」

 ポーションとかも用意しよう。それならエアリも稼げるし。

「くっそ。俺も工房に顔を出せば良かった」

「全くだよ。折角魔力を得られたと言うのに」

 んー、それならば。

「新しい魔法薬にも手を出して作ってみる?緑でも十分な解毒薬系」

「「やる!」」

 そろそろ解毒薬系が欲しいと思ってたし、丁度良いかな。相場は道具屋で確かめよう。

 材料はあれからエアリが見つけてくれてる。

「上手くいってくれれば、家の代金を一括で払うどころか一気に拡張する事も出来る。町長さん、かなり納税出来そうですよ」

「ありがたい…」

 ボクからの納税もそうだし、大工からの納税も増える。是非とも成功させたい。

 早速動くとしようか。


 イキシアのヒトにはあまり隠し事をしたくないんで、アーティファクト化する物を買う時に事情を話す事にした。

 元々ボクから教わった事だし、家のローンを払う為と話したら納得してくれたよ。

 目標金額を売りに行く国のお金で六千万に設定し、冒険者ギルドにも寄って幾らなら買うかの調査も行った。

「カンテラの五十万って安いと思った?」

「思った思った。野営する時とか重宝するんだ。魔物が寄ってこなくなるからよ」

「あー、成る程。ライターとか水筒とか、まともに買うとしたら幾らまで出せる?」

「ライターは三十万かな。水筒なら百万でも飛びついたと思うぜ。アイラさんのおかげで遠出するのが凄え楽になったもん」

 かなりの手応えだー。

 やっぱり水筒の方が大きいよね。水に困らないってほんと大きい。

「魔法の鞄も凄え助かってる。今までより食い物を持てるってだけで御の字だし」

「な。宿代を節約出来るとか最高」

「鞄は幾ら出せる?」

「百五十万って言われても欲しいと思うね。その為に稼げる」

「死にもの狂いで稼ぐって」

 よしよし、百五十万は大きい。

 怪しまれないようにする必要が有るけど、梯子して貰う事を前提にすれば二十個はいける。

 後は交渉次第かな。二百で吹っ掛けて貰おう。

「本格的な販売に向けてか?」

「ううん。実は今家を建てて貰ってるとこでさ。ローン組んだけど出来るだけ一括で払っちゃいたいんだ。研究費なんかも欲しいし、他国で売って荒稼ぎしようかなって」

「んあ。何で他国なんだ?」

 あ、カンテラを持ってた奴にも話してやるか。

 ついでに護衛を頼んでも良いな。

 彼のパーティにも出て貰って二手に分けるのも悪くない。

「マルよりデナの方が高いじゃん?だからデナで売ってマルに両替するんだよ」

「それ頭に無かった!危ねえ、国内で売るとこだったぜ!」

 マルはこの国の貨幣で、デナが売ろうとしてる国の貨幣ね。

 まだ売って無かったのは良かったよ。

「ここの事が他所に知られる前にやりな。マルの価値が上がるのは目に見えてる。アーティファクト屋が有るってだけで上がるよ」

「間違いねえ!売りに行くついでに少し稼いでくるか!」

 それも手だよね。

 んー、彼のパーティを訓練場に呼ぶか。

「分布が解らないから何とも言えないけど、沸きやすい魔物の情報をメモしていきな。良い素材も有るだろうし」

「ありがてえ!」

「もしかして素材を買ってくれたりするか!?」

「物によるけど魔法薬や金属の素材なら買う」

「「うおおおおっ!」」

 これはアレス達にも教えるべきだね。

 んー、念の為サーディスにも出て貰うか。

 三人だけだと危ないし、回復魔法が欲しい。

「うおお!レッドスパイダーが居るじゃん!」

「お、居たか。他国なら乱獲しても良いし、狩れるだけ狩ってきてよ」

 赤蜘蛛弦は美味しいなー。

 あ、そうだそうだ。

「蜘蛛弦は釣り糸にも使えるんだよ。釣り竿次第だけど遠洋の大型にも耐えるから」

「釣り竿を忘れてた!」

「魔法の鞄なら入れられるよな!?」

「いけるいける」

 魔法の鞄は空間魔法を調整してあって、取り出したい物を手元に引き寄せられる様になってる。

 だからかなりの大きさだし、釣り竿だって楽に入るよ。

 近くに川が有るし、雑貨屋に釣り糸を流しても良いな。

「ちとアーティファクトを捌くの手伝ってくれない?売り上げの一割をパーティに出すからさ」

「「やる!!」」

 よしよし、後でアレス達も交えて打ち合わせをしよう。

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