第8話 本当のチーム
よろしくお願いしま〜す
怪物が現れたと同時に、パトラが叫んだ。
「みんな早く逃げよう!ゴブリンは見た目より強いから!早く!」
ただ、そう言うパトラも腰が抜けてて動けていなかった。
そして同じようにスレイヤも誠も、ギルドの人のいない中に現れた魔王軍の魔物(この緑色のやつはゴブリンと言うらしい)に対して、恐怖で動けなかった。そんな時、パトラが叫ぶ。
「ゴブリンが私達に、斧をふりおろそうとしてる!このままだと3人とも死んじゃうよ!」
まずい!まずい!まずい!
俺の頭の中で緊急コールがなっている事は知っている。
どうすれば良い?せめて少しでも敵を止められたら!少しは逃げられる!
でもどうやって?考えろ!時間がない!時間がないから早く!
すると誠はふと思いつく。だがもう既に斧は俺らのすぐ上まで来ている。
「おい!スレイヤ、パトラ!今から5秒時間を作るから、しっかり走れよ!」
「どう言う事!説明し…」
「そんな余裕はねぇ!じゃあ行くぞ!」
俺は異能の存在を昨日知った。
鑑定をしてもらって、使えるようになったとは言われたが、まだ使った事はないし、試したことすらない。
でも……
「やるしかないんだ!時間停止
行動可能人間、伊達誠!スレイヤ!パトラ!」
俺は人生で初めて異能を使った。
と、その次の瞬間世界が紫色に染まり、俺とスレイヤとパトラだけが動ける状況になった。
「急いで逃げるぞ!」
俺はそう言って二人を先導し、できる限り早く逃げた。
よし!このまま逃げ切れる!そう3人とも思った。
だが…5秒経って、誠達以外も動けるようになった途端、ゴブリンが恐ろしい速さで近づいて来た。
「くそ!もうあんな化け物、どうすりゃいんだよ!」
もう誠は若干諦めかけていた。が、
「もう、あのクズ男がやったんだから、私もやるしかないわね、氷結!」
そう言いながら、スレイヤが異能を発動した。
こいつの異能は、氷の発動か。これなら足止めができる!
誠とパトラはそう思った。
だが……
「え、嘘…氷結を使ったのに、ゴブリンが1秒ぐらいしか止まらなかった…
そんな…」
そう言ってスレイヤは呆然と立ち尽くした。
もうダメだ…逃げられない…
パトラは威力増加の異能だから、足止めには向いていない。
もう終わりか!
そう誠達は感じた…その刹那、
「大丈夫か!君達!到着が遅れてすまなかった。
だがもう大丈夫だ。
我々が、この近くに現れた魔王軍をこのゴブリン含め、全て倒してやるから!」
ついに、ギルドの人達が到着した。
すると、その人は拳一撃でゴブリンを倒した。
俺達が逃げられないぐらい、速いスピードと、スレイヤの氷を1秒で抜け出せる、強いパワーを持ったあのゴブリンを、拳一撃で。
あれ?何だろう?
この感覚は、今まで一度も感じたことのない感覚だ。
と、次の瞬間誠は理解した。
「あぁ、これが誰かをかっこいいと思う心なんだな。」
と、誠が思っている間にその人は行ってしまった。
☆☆☆☆☆☆
その後誠達は、とりあえず避難所の1つである学校に戻った。
そして到着した瞬間、スレイヤが唐突に謝って来た。
「すまない2人とも。私が1秒しか止められなかったから、皆を危険にさらしてしまった 」
「ううん。スレイヤはすごいよ!私なんて、何もできなかったから」
「俺も、結局すぐに差を詰められた。
でも、スレイヤ。これからもっと強くなっていけば良いだろ」
「ふっ、クズ男の割には良いことを言うじゃない」
そう強気なことを言っているが、スレイヤの目には涙が溢れていた。
「後、スレイヤ パトラ。二人に聞いてほしい事があるんだ」
「何?」
「どうしたの?」
「俺は学校で、魔王の行いについて、俺はあまり知らないし、だから本気で強くなろうとは、思ってないって言った。
でも、今日ギルドの人達を見て思ったんだ。かっこいいなって。
そして、いつか俺もあの人達みたいになりたいって思った。だから魔王を本気で倒したい、とかは思ってないけど、本気で強くなりたい。
だから二人とも、改めてこれからよろしく!」
誠が、そう決意を表明するとスレイヤは言った。
「やっと、良い目をしたじゃない。
じゃあこれからは、本気で上を目指そう。よろしく、誠」
すると、パトラは笑って言った。
「やっとスレイヤが、誠のことを認めたね。よかった。
じゃあ誠、改めてこれからよろしく!」
そう言った途端、俺たちは泣きあった。
わんわん泣いた。周りが引くほど泣いた。
この瞬間、ようやく俺たちは本当のチームになったような気がした。
☆☆☆☆☆☆
次の朝、学校に行くと、おそらく人生で初めての言葉が聞こえて来た。
「おはよう!誠。昨日は怖かったね〜」
「ふっ、ようやく来たの?遅くないかしら?」
俺はそんな挨拶を聞いて、思わず感動していた。
すると、スレイヤから、言葉の槍が飛んで来た。
「何感動してるの?もしかしてどM?」
「い、いや…初めて挨拶を受けたから、つい嬉しくなって…」
「もう、スレイヤったら、素直に誠と仲良くしたいっていえば良いのに!」
「え?スレイヤ、お前もしかしてツンデレなのか?」
「ツ、ツンデレじゃないわよ!」
「「ハハハ…」」
そんな俺たちを見て、あの柄の悪い奴らがやって来た。
「あれ?クラスで溢れた人同士が、仲良くしてるとか、キモ!」
「仲良く慰め合いですかー。可愛いですね〜」
すると、スレイヤが言い返した。
「貴方達は何か勘違いをしてしているわ。
私達は、確かにクラスで溢れた人たちかもしれない。
でも、本気で強くなりたい人たちでもあるから」
すると、柄の悪い2人はおろか、クラス全体が静かになった…
と、そんな所にまだホームルームの時間ではないのに、十文字先生がやって来た。
「おい!校長に呼ばれた者がいる!
今すぐ校長室に行け!
呼ばれた者は、伊達とスレイヤとパトラだ。
では今すぐ行け!」
それを聞いた誠達は、理由がわからず、ただ呆然としていた。
次もお楽しみに〜